ヒドロキシクロロキンで新型コロナ死亡率低下 他薬と併用で効果増大か=研究結果

新型コロナウイルスで入院中にヒドロキシクロロキンを他の薬剤と併用して投与した人は、そうでない人に比べて、死亡する可能性が低かったことがベルギーの研究により明らかになった。研究は学術誌『New Microbes and New Infections』に掲載された。

ヒドロキシクロロキンは、関節炎などに対する効果で知られる抗マラリア薬だ。研究では、新型コロナウイルスで入院しヒドロキシクロロキンを投与した数百人の患者と、投与しなかった数千人の患者を比較した。

ヒドロキシクロロキンを服用した患者はベルギーのコルトレイクにあるAZ Groeninge病院に入院した成人352人で、新型コロナの治療薬として同薬を単独で、あるいは抗生物質のアジスロマイシンと併用して投与した。

研究チームは、上記の記録分析の結果を、2020年3月14日~5月24日までにベルギー全土で新型コロナに感染し、入院した3533人の対照群と比較した。これらの患者は標準治療は受けたが、ヒドロキシクロロキンは投与されなかった。

新型コロナと診断されてから28日後、ヒドロキシクロロキンによる治療を受けた患者の59人が亡くなった。その死亡率は16.7%で、対照群の25.9%より低かった。また、同薬とアジスロマイシンによる治療を受けた患者のすべての年齢群で死亡率が低下し、45歳未満の死亡例はなかった。

研究者らは、ヒドロキシクロロキンを投与された患者は、年齢や他の因子を考慮しても新型コロナから生存する可能性が高いと指摘している。

AZ Groeninge病院の腎臓専門医であるゲルト・メウス博士を筆頭著者とする研究チームは「我々の研究は、同薬とアジスロマイシンによる(新型コロナ)治療が依然として実行可能な選択肢であることを示唆している」と述べた。

この研究の限界としては、後ろ向き研究であることや、治療群と対照群の差異(前者の方が平均年齢が若いなど)が挙げられる。研究者らは利益相反や資金提供がないことを強調した。

この他にも、新型コロナに対するヒドロキシクロロキンの効果に関して、様々なデータセットが出てきている。

ミシガン州の医療システムの記録を分析した研究など複数の研究で、ヒドロキシクロロキンを投与された患者は新型コロナで死亡する可能性が低いことが判明している。多くの肯定的な結果は、アジスロマイシンとの組み合わせで同薬を使用した場合に見られた。

一方、ヒドロキシクロロキンは新型コロナ治療に全く効果がないとする研究もある。例えば、米政府が資金提供した34の病院を対象とした研究は、ヒドロキシクロロキンを投与してから14日目の臨床状態を有意に改善しなかったとし、新型コロナ治療に同薬は推奨しないとした。

ヒドロキシクロロキンは米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、同局は2020年半ばから新型コロナの治療には使用しないよう警告している。ベルギーの規制当局も2020年6月に新型コロナに対するヒドロキシクロロキンの承認を取り消した。

投与量の問題?

ヒドロキシクロロキンの支持者は、同薬が新型コロナにどのような影響を与えるかを適切に研究するためには、同薬の投与量と投与時期が重要だと述べている。

前出のメウス氏を含む他のベルギーの研究者らは、ヒドロキシクロロキンの有益性を認めなかった臨床試験と観察研究があることは認識している。ただし、同薬の有効性を示す観察研究もある。彼らは次のように述べた。

「観察試験と大規模なランダム化比較試験の結果の相違に対する説明として、異なる用量のヒドロキシクロロキンを使用したことが考えられる」

メウス氏らは患者に対して、初日に400ミリグラムを2回投与し、2〜5日目は200ミリグラムを1日2回投与した。一方で、効果がないとされた臨床試験では、患者にその4倍のヒドロキシクロロキンが投与されていた。

「われわれの治療はより低用量で、抗生物質のアジスロマイシンも使用した。この二重治療が、われわれが肯定的な効果が得られたのに対して、他の研究では認められなかった理由の説明となり得る」とメウス氏はオランダメディア「Doorbraak」に語った。

メウス氏はヒドロキシクロロキンついては更なる研究が必要だが、有益である可能性は大いにあるとしている。

「ヒドロキシクロロキンは万能薬ではないし、我々のような観察研究だけで何かが効くか効かないかを結論づけることはできない。しかし2020年の初めにも、ヒドロキシクロロキンが死亡率の低下につながったことが示された。もし我々の研究結果でこのことが再度確認されれば、今後もヒドロキシクロロキンが多くの患者を救うだろう」

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。