ジョーダン・ピーターソン氏の「肉食ダイエット」の健康効果

私たちは常にバランスの良い食事を心がけるようにと言われています。しかし、動物性の、卵、魚、チーズ、内臓肉のみを食べ、炭水化物や植物性食品を一切摂らないという極端な食事をする人もいます。

近年、肉は脂肪分やカロリーが高く、炎症を引き起こす成分を含むため、健康に良くないとする研究者が増えています。にもかかわらず、カーニヴォアダイエット肉食ダイエット、またはライオンダイエットとも呼ばれ、塩、肉、水のみを摂るもの)の支持者の中には、この食事法を取り入れたことで健康が大きく改善したと考える人もいます。

 

ジョーダン・ピーターソンの肉食ダイエット

肉食ダイエットの最も著名な支持者の一人は、トロント大学とハーバード大学で教壇に立った著名な臨床心理学者のジョーダン・ピーターソンです。率直で鋭いスタイルで知られるピーターソン氏は、多くの熱心な支持者を獲得しています。彼は2018年に肉食ダイエットを取り入れ、大きな健康上のメリットを実感したと報告しています。

ピーターソン氏が肉食ダイエットに関心を持つようになったのは、彼の娘ミハイラ・フラーの影響でした。彼女は幼少期から若年性関節リウマチ、双極性障害(躁うつ病)、不眠症、ライム病、乾癬(かんせん)、湿疹、自己免疫疾患など、様々な健康問題に悩まされていました。しかし、肉食ダイエットを始めてから、これらの症状が顕著に改善しました。

 

あなたの健康が重要だ

娘の劇的な変化に心を動かされたピーターソン氏は、自身も多くの健康上の課題に直面していました。アルコールとベンゾジアゼピン(睡眠薬に使用)依存の過去があり、離脱時には自殺を考えたこともあります。また、重度のうつ病や血糖値の問題とも戦っていました。

肉食ダイエットを2か月続けた後、ピーターソン氏は体重が減って、食欲、血糖値、睡眠も改善しました。また、歯周病、不安、うつ病の症状も大幅に軽減しました。

 

肉食ダイエットの利点

ピーターソン氏が肉食ダイエットからこれほど多くの健康効果を得た理由は次のとおりです。

 

炭水化物の排除 

私は、ピーターソン氏の変化は肉の消費だけでなく、炭水化物の排除によるものだと考えています。1950年代以降、精製炭水化物の消費が増加し、それに伴い歯周病や心臓病患者が大幅に増加しました。精製炭水化物が人間の健康に与える悪影響は否定できません。

 

肉に含まれる必須栄養素 

肉には重要な栄養素が含まれています。肉に含まれるビタミンB12は神経系や赤血球の形成にとって非常に重要です。さらに、肉に含まれるヘム鉄は、植物に含まれる非ヘム鉄よりも体内で効率的に吸収・利用します。

 

肉のタンパク質と必須アミノ酸 

肉はタンパク質が豊富であり、人間の体に必要な必須アミノ酸を含んでいます。

 

肉の亜鉛、ビタミンB6、オメガ-3脂肪酸 

肉は亜鉛、ビタミンB6、オメガ-3脂肪酸が豊富です。亜鉛は免疫システムを強化し、細胞の成長を促進するために重要です。いっぽう、ビタミンB6はアミノ酸代謝において重要な役割を果たします。脂肪の多い魚や動物の肉に含まれるオメガ-3脂肪酸は、全体的な健康に必要不可欠です。

 

植物性食品の毒素や抗栄養素の回避 

肉だけの食事は、特定の潜在的な毒素や抗栄養素、植物に含まれる不溶植物繊維を摂取しないようにするのに役立ちます。しかし、これらの物質を排除するための様々な方法が存在します。ですから、これは植物性食品を避けるべきであることを意味するわけではありません。

 

研究と論争

ハーバード大学のある研究では、平均14か月間肉食ダイエットを続けた2029人を調査し、その結果を実験室データと比較しました。この研究の参加者は副作用を報告せず、多くの健康上の利益を強調しました。肥満、高血圧、糖尿病、消化器症状、精神障害を抱える人々の90%以上が症状の改善を報告しました。

一部の支持者は、人間が肉食動物であり、動物性栄養に依存していると主張しています。反対派は、この食事が健康に必要なビタミン、微量元素、繊維を欠いているため、栄養的に不完全であると反論しています。

さらに、一部の批評家は高タンパク質ダイエットに反対し、腎臓に影響を与えると主張しています。タンパク質の過剰摂取は、タンパク質代謝による老廃物を除去するために腎臓がより多くの働きをしなければならないため、腎臓への負担を増大させ、腎臓病を悪化させる可能性があります。

肉食ダイエットをしたい人は、脂肪分の多い肉を十分に摂取する必要があります。脂肪はエネルギー源であり、体がタンパク質由来のカロリーに頼るのを減らします。研究では、長期間にわたる高タンパク質ダイエットの摂取物により、消化不良や肝臓および腎臓の損傷を引き起こす可能性があるとわかりました。したがって、1日のタンパク質摂取量は総カロリーの35%を超えないようにしてください。

 

ピーターソン氏のケースの分析

なぜ肉食ダイエットがピーターソン氏と彼の娘にとって有益なのでしょうか? その一つであると推定できる説明は、両者に「メチル化不足(有機化合物の水素原子をメチル基で置換)」が存在することです。アンダーメチル化は、解毒機能、免疫システム、そして脳の神経伝達物質の産生に影響を及ぼす遺伝子の上に作用する問題です。アンダーメチル化を改善するためには、メチオニンという肉に多く含まれる栄養素の大量摂取がしばしば必要です。このため、カーニバルダイエットがピーターソン親子にとって有益であり、精神的な症状を和らげる一因であると考えられます。

さらに、2人、特に娘の方が「ピロール尿症」に苦しんでいる可能性もあります。この病気はビタミンB6と亜鉛が尿と共に失われ続けることで、精神的な問題や皮膚、免疫機能の障害を引き起こします。肉食ダイエットを採用することで、大量の亜鉛、ビタミンB6、メチオニンを補給し、砂糖や炭水化物が免疫機能に与える悪影響を避けることができます。したがって、肉食ダイエットは彼らの全体的な健康状態を大幅に改善しました。

低メチル化は幼少期に現れることが多く、特定の性格特性と関連しています。低メチル化の人は、通常、完璧主義、競争心、高い達成感などの特性を示します。しかし、頑固さ、憂うつ、不注意、依存症、さらには自殺願望などの否定的な特性も示す場合があります。ピロール尿症(不適切なヘモグロビン合成により体内でピロールが過剰なレベルになるという仮説の疾患でピロルリアともいう)と組み合わさると、これらの人は目標を達成できないというプレッシャーに対処するのに苦労することがよくあります。勝つことを決意している一方で、目標を達成するための肉体的および精神的なスタミナが不足しており、最終的には挫折や様々な精神的健康問題を引き起こします。

 

(編集翻訳 清川茜)

楊景端