プラスチック汚染を終わらせるための国際条約に関する議論の中で、大量の研究が人間の健康に対するリスクと緊急の解決策の必要性を示唆しています。
人間のDNAと同じくらい微粒子(皮膚から吸収されるほど小さい)に分解されるプラスチックは、毎年8200万トンのペースで放出されています。これらのプラスチックと使用されている化学物質の混合物は、現在、がんからホルモンの問題まで、さまざまな疾患のリスクに影響を与える主要な要因となっています。
プラスチック汚染は海洋生物から人間に至るまであらゆる事を脅かしており、科学者、活動家、企業団体、政治家たちはプラスチック汚染を終わらせるための国際条約を起草する際に、雇用と経済成長、そして地球への壊滅的な破壊の間の複雑な問題を議論しています。
「Our World in Data」によると、プラスチックの急速な増加は1950年代から始まり、年間生産量はほぼ230倍に増加しました。プラスチック廃棄物の20%以上が不適切に管理されており、空気、水、土壌に流れ込んでいます。
避けられない問題
プラスチックは生分解しませんが(少なくとも一定の時間枠内では)、どんどん細かい粒子に分解されます。目に見えなくなっても、プラスチックは環境中に絶えず蓄積されています。マイクロプラスチックやナノプラスチックと呼ばれる微小な粒子は、私たちが食べたり飲んだり呼吸したりすることで体内に入り込む可能性があります。
マイクロプラスチックの大きさは5ミリメートル以下です。ナノプラスチックは見えないほど小さくて、1メートルの10億分の1、つまりDNAのサイズほどです。
プラスチック汚染は、耐久性、弾性、色を変化させ他の化学物質が添加された石油の化学的残留物です。3月に発表された報告書によれば、プラストケム・プロジェクトは、1万6千種類以上の化学物質がカタログ化されており、そのうち4200種類が高度に危険であると考えられています。
世界自然保護基金(WWF)のプラスチック廃棄物および事業部門の副社長であるエリン・スミス氏は、エポックタイムズに対して、驚くべき量と種類のプラスチックの多くは、健康への影響が未知のものであり、全ての人にとっての警鐘となるべきだと語りました。
「プラスチック汚染はどこにでもある。現時点で難しいのは、人体内のプラスチックが人間の健康にとって何を意味するのかが、未知の科学エリアであるということです」
スミス氏は、プラスチックの生物学で全体的な影響は更なる研究が必要になるかもしれませんが、一つ確実に言えるのは、「それが良いものではないことは明らかです」
生殖および神経学的問題
最近の健康研究では、プラスチックが広範囲に影響を及ぼすことを示しています。
小児科医で環境保健専門家であるフィル・ランドリガン博士は、3月のビヨンド・プラスチックスのニュースリリースで、「研究は明確です。プラスチックは疾患、障害、死亡を引き起こします。早産、低体重出生、死産の他、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肝がん、心臓病、脳卒中を引き起こします。乳児、子供、妊婦、そしてプラスチック労働者はリスクが最も高い人です。これらの疾患は、年間1.2兆ドルの経済的損失をもたらします」と述べています。
政策変更を求める支援団体である「ビヨンド・プラスチックス」は、新しい研究でプラスチックが心臓病、脳卒中、死亡リスクの増加につながっていることを警告しています。
一連の研究で、微小なプラスチック粒子は、あらゆる年齢で私たちの体のあらゆる器官に影響を及ぼすことが明らかになっています。
ミンデルー財団によってインデックスされた約3600件の研究では、プラスチック製品やプラスチック添加剤「可塑剤(柔軟性や弾性を与える)、難燃剤(燃えにくくなる)、ビスフェノール、パーフルオロアルキル物質など」の影響が詳細に記載されています。これらの研究のほとんどは、プラスチックが内分泌系や代謝機能、生殖系に影響を与え、精神的、行動的、神経発達上の問題に寄与していることを示しています。
「Environmental Science & Technology」誌に掲載されたある研究では、5つの国のプラスチック食品包装を調査し、ホルモンを乱す化学物質が含まれていることが判明しました。「プラスチックにエストロゲン化合物が多く含まれていると、内分泌システムを混乱させるため、発達障害や生殖の問題、そして乳がんや前立腺がんなどのホルモン関連がんのリスクを高める可能性があり、健康上の懸念を引き起こす」と述べています。
これらの化学物質の全ての影響はまだよくわかっていません。ミンデルー財団によると、1500種類以上のプラスチック化学物質のうち、人間の健康への影響が調査されたのは30%未満です。その中で、問題があると判明し、使用が制限されるため、代替品としての化学物質も含まれます。
「すべての新しいプラスチック化学物質は、消費者向け製品に導入される前に安全性試験を受ける必要があります。導入後も継続的に監視し、一生を通じ世代を超えて健康への影響を評価する必要があります」とミンデルー財団のプラスチックと人間の健康部門責任者であるサラ・ダンロップ教授は述べています。
動脈や皮膚に吸収されます
最近、プラスチック粒子はさまざまな方法で人体に入り込まれる可能性があることを発見しました。マイクロプラスチックとナノプラスチックが人間の動脈壁のプラークに含まれると心臓発作、脳卒中など、死亡リスクが 350% 増加することが判明しました。
3月6日にニューイングランド医学ジャーナルが掲載した研究は、257人の患者を34か月間追跡調査しました。研究に参加した患者のうち、58.4%がカロティス動脈プラークにポリエチレンを検出しており、12.1%がポリ塩化ビニールを検出しました。
ポリエチレンは、シリアルの箱のライナーを含むボトルやバッグに最も多く使われているプラスチックです。ポリ塩化ビニル (PVC) も一般的なプラスチックで、医療資材や建築資材によく使われています。
4月に「Environment International」誌に掲載された別の研究によると、ポリマーは食事以外にも、皮膚から血管に入り込む可能性があります。人間の皮膚に相当するモデルに基づくこの発見は、プラスチックが分解されると、人間は吸収を避けることが不可能かもしれません。マイクロプラスチックは、土壌、水源、大気、そして北極の氷の中にもあり、あらゆる身の回りの場所で見つかっています。
汗をかいた皮膚は特に微粒子を吸収しやすいことが判明しました。
体内に入ると、プラスチックはホルモンを模倣し、動脈に蓄積し、現在、最も一般的な疾患のひとつである活性酸素と抗酸化物質のバランスの不均衡である酸化ストレスに寄与します。
心臓病や脳卒中の予防専門家であり、「Beat The Heart Attack Gene」の共著者でもあるブラッドリー・ベイル博士は、プラスチックが酸化ストレスを引き起こしている証拠がたくさんあるとエポックタイムズに語りました。
ベイル博士は、「プラスチックは地球上の至る所にあります。それをなくすことはほぼ不可能です。しかし、酸化ストレスを引き起こす他の問題に目を向けることはできる」と述べました。
つまり、不健康な食事や他の有毒物質の摂取などは、ライフスタイル、サプリメントによって、回避できる可能性があります。
ベイル博士は、今後のナノプラスチックの研究が、プラスチックの摂取と早期死亡、認知症、がん、糖尿病、および酸化ストレスに影響を受けるすべての疾患と関係を明らかにしていくと考えています。
プラスチックの問題解決法
プラスチックが分解されると治療はほぼ不可能なので、アドボカシーグループは、フードラッパーやボトル、テイクアウト容器、バッグなど多く問題のある使い捨てプラスチック製品を削減する法律を求めています。
国連環境計画(UNEP)は、すべての国連加盟国の代表が参加する世界的な環境政策決定機関で、2022年3月にプラスチック問題に対処して、協調的な対応が必要であると決めました。世界で拡大するプラスチック問題に対処する条約を迅速に進めることを約束しました。
しかし、カナダで4月下旬に5回の会議のうち4回目を開催した後も、問題のあるプラスチックを特定するか、新たなプラスチックの段階的に廃止または縮小を求めるかまだ決定していません。最終会議は11月下旬に開始され、条約は2025年に締結される予定です。
一方、アメリカの議員は、使い捨てプラスチック汚染からの脱却法を検討するために3度目のチャレンジを行っています。この法案は2020年に初めて提出されましたが、委員会で審議は止まっています。この法案は、特定の使い捨てプラスチックの削減と禁止、再利用可能な製品やリフィル製品のための助成金の創設、企業によるプラスチック汚染の責任を負わせることを含んでいます。環境保護条約が確立されるまで新しいプラスチック施設を一時的に禁止することなども含まれています。
(翻訳編集 季千里)
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