赤ちゃんにピーナッツ? 早期の摂取はアレルギーを予防できるかもしれない

ピーナッツアレルギーに関する私たちの考え方は大きく変わりました。研究が進む中で、子供のころにピーナッツを避けたことが原因でアレルギーが増えたかもしれないことがわかってきました。

「私が子供の頃は、誰もピーナッツアレルギーなんてなかった!」と、多くの40歳以上の大人が感じています。なぜ今の子供たちにピーナッツアレルギーが多いのか、不思議に思う人も多いでしょう。しかし、簡単な方法で将来の世代をこのアレルギーから守れるかもしれません。

ピーナッツアレルギーの増加は、あまりなかったこのアレルギーに対する過剰反応が原因かもしれません。1990年代後半から、多くの国で小児科医やアレルギー専門医が妊婦に「子供のピーナッツアレルギーを防ぐためにピーナッツを食べないように」と勧めました。

ロンドン大学キングスカレッジの小児アレルギーの教授、ギデオン・ラック氏は、エポックタイムズに対して、「2000年代初頭に出されたガイドラインでは、赤ちゃんにピーナッツを与えないように勧めていた」と述べています。しかし、2010年代半ば以降の研究で、このアドバイスは誤りであり、逆にピーナッツアレルギーの増加につながることがわかってきました。

2010年に始まり、2015年に発表された「ピーナッツアレルギーについて早期に学ぶ(LEAP)」研究は、ピーナッツアレルギーに関する従来の考え方に挑戦した最初の大規模な研究です。この研究は、免疫寛容ネットワークが主導し、食物アレルギー研究教育団体の支援を受けて行われました。LEAP研究では、640人の子供たちを乳児期から5歳まで追跡調査しました。一つのグループはピーナッツ製品を食べず、もう一つのグループは週に数回ピーナッツを含む食品を食べました。

LEAPの研究者たちは、重度の湿疹やアレルギー、またはその両方を持つ高リスクの乳児に早期からピーナッツを与えることで、ピーナッツアレルギーの発症確率が80%以上減少することを発見しました。翌年発表されたフォローアップ研究(LEAP-On)では、これらの子供たちが12か月間ピーナッツを避けても、ピーナッツアレルギーの発症率は増加しませんでした。

しかも、これはピーナッツに限ったことではありません。2017年に日本の国立成育医療研究センターが発表した研究「PETIT(プチ)スタディ」では、生後6カ月から卵を少量食べていくことで、卵アレルギーの発症リスクは4分の1になることが示されました。

こうした研究調査の成果からアレルギー医療の現場では、離乳食初期から卵や乳、小麦を少しずつ摂取させるようになっています。

アメリカ小児科学会は2015年9月にLEAPの発見を支持する声明を発表し、医師に対し、「ピーナッツアレルギーが多い国では、ピーナッツを導入する時期を遅らせるとピーナッツアレルギーのリスクが高まるため、4~11か月の間にピーナッツを含む製品を高リスクの乳児にも導入するように」と推奨しました。

また、アメリカアレルギー喘息免疫学会も、生後4~6か月の間にアレルギーを引き起こす可能性のある食品を赤ちゃんに導入すべきだと述べています。

しかし、これらの推奨事項にも関わらず、「新しいガイドラインについての認識がまだ十分でなく、ガイドラインを知っている医師や患者でさえも、ピーナッツを早期に導入することに対する不安が残っている」とラック教授はエポックタイムズに語りました。

(Hafiez Razali / Shutterstock)

 

ピーナッツアレルギーを減らす新しい研究

ラック教授は、LEAP研究の結果に基づいたLEAP-Trio研究の共同主導者です。この研究は、ピーナッツアレルギーを防ぐために子供の食事にピーナッツを早期に導入することの重要性をさらに強調しています。NEJM Evidence誌が5月28日に発表したLEAP-Trio研究は、最初のLEAP研究に参加した子供たちを12歳以上になるまで追跡調査しました。

最初のLEAP研究では、幼児期にピーナッツを食べた子供はピーナッツアレルギーから守られていました。ピーナッツ回避グループの被験者の15.4%が12歳以上でピーナッツアレルギーを発症したのに対し、ピーナッツ摂取グループの被験者では4.4%だったことがLEAP-Trio研究で判明しました。

「この発見は、ピーナッツアレルギーを80%以上減らす可能性がありますが、ガイドラインが実際の医療現場に反映されるまでには時間がかかる」とラック教授はエポックタイムズに語りました。

共同主任研究者で、同じくロンドン大学キングスカレッジのジョージ・デュ・トワ教授は、プレスリリースで次のように述べています。「これは安全で非常に効果的な方法であり、生後4か月から実施できます。赤ちゃんが離乳食を始める準備ができたら、ピーナッツを柔らかいペーストやピーナッツパフとして食べさせましょう」

 

ピーナッツに対する考え方が変わった理由

かつては、親が乳児のピーナッツアレルギーを心配することはあまりありませんでした。2013年、作家であるミランダ・R・ワゴナー氏は次のように述べています。「1980年代以前は、ピーナッツアレルギーが医療研究の主要な議題になることはほとんどなく、メディアの見出しに登場することもまれでした。当時、ピーナッツアレルギーは珍しい病気と見なされていました」

社会学と社会政策の博士号を持ち、現在はライス大学の社会学准教授であるワゴナー氏は、医療専門家と一般の人々が、このアレルギーを「流行」と誤ってラベル付けし、子供の食事からピーナッツを排除し過剰反応したと指摘しています。

2011年の著書『The Peanut Allergy Epidemic: What’s Causing It and How to Stop It(ピーナッツアレルギーの流行 原因と対策2017年第三版)』の著者であるヘザー・フレイザー氏によると、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、欧米諸国では子供たちの間でアレルギーの「流行」が始まりました。「アメリカだけで400万人以上がピーナッツアレルギーに苦しんでいますが、インドではピーナッツがベビーフードの主成分であるものが多いにもかかわらず、報告されたケースはありません」

また、2002年にアレルギーと臨床免疫学のジャーナルに掲載されたイギリスの研究でも、1989年と1990年生まれの子供と1994~1996年生まれの子供の間には、ピーナッツに対する感受性の増加が見られました。ピーナッツアレルギーは2倍に増加し、ピーナッツ過敏症は3倍に増加しました。

2011年までに、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、スウェーデンでは、特に男の子がピーナッツアレルギーになる確率が高く、50人に1人とフレイザー氏は述べています。

また、フレイザー氏は子供のワクチン接種の増加も影響していると考えています。彼女は2018年のエポックタイムズの記事で、ワクチンが子供の免疫システムを「歪め」、アレルギーを引き起こすリスクを高めていると考えています。彼女の著書2017年版の序文で、子供の健康保護団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス基金」の創設者であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、フレイザー氏がワクチン、アナフィラキシー、アレルギーの関係を明らかにし、「アナフィラキシーの謎」を解き明かしたと評価しています。彼は、「医療文献によると、ワクチンに免疫反応を高めるために添加された強力な補助剤(特にアルミニウム)は、アレルギー反応も強める」と指摘しています。

ピーナッツアレルギーの発症率が上昇する中、妊娠中、授乳中、乳児期にピーナッツを摂取しないように勧める各国の公式医療ガイドラインは、意図は良かったものの、問題を悪化させたといいます。ラック氏は、免疫寛容ネットワークのために書いた記事で、「早い段階で食べ物に対する体の耐性(免疫)が作られていないと、環境から皮膚を通じてアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に触れることでアレルギーが起こりやすくなる」と述べています。

しかし、LEAP研究は将来的にはピーナッツアレルギーを持つ子供は減少すると示しています。ラック氏はキングス・カレッジ・ロンドンで、「早い時期にピーナッツを食べ始めることで、毎年、世界中で10万件以上のピーナッツアレルギー発症を防ぐことができる」と語りました。

 

(翻訳編集 華山律)

健康と医療、食品、社会問題、文化について執筆。記事はThe Epoch Times、Children's Health Defense の The Defender、Salvo Magazine など、多数の出版物に掲載。