夜中に何度も寝返りを打ち、午前3時に天井を見つめる——更年期を迎えているなら、このような状況は決して珍しくありません。睡眠障害は更年期の女性のおよそ60%に影響を及ぼし、慢性的な疲労感や憂うつ感の原因にもなります。
メラトニンや睡眠薬以外に、もっと自然で健康的に睡眠の質を改善する方法はないのでしょうか? 最新の研究によると、血糖値のバランスを整えることや新陳代謝を促すこと、さらに特定のハーブやミネラルを活用することで、睡眠の質を高めるためのサポートができる可能性があるとされています。
1. 血糖値の変動が睡眠に与える影響
夜中に突然目が覚め、心臓がドキドキする経験があるなら、それは血糖値の変動が原因かもしれません。
2022年に『Cureus』誌で発表された論文では、血糖値の不均衡と睡眠の中断には明確な関連があると指摘されています。更年期における睡眠の質の低下は、インスリンの調節やグルコース代謝を妨げ、2型糖尿病のリスクを高める可能性があります。そのため、更年期の女性にとって睡眠の質を改善することは、糖尿病リスクの低下にもつながります。
毎晩7時間以上の十分な睡眠は、全体的な健康を維持する上で非常に重要です。
血糖値の不均衡は睡眠を妨げる要因の一つであり、これがコルチゾールやアドレナリンの分泌を引き起こします。これらのホルモンは、副交感神経系が深い眠りをサポートする働きを弱め、覚醒状態を促進します。アドレナリンが原因で目が覚めてしまうこともあり、血糖値の急激な上下動がその症状をさらに悪化させます。
女性の健康専門家でOmmani Centerの創設者、ローズ・クマール博士は「更年期以降はホルモンの減少によってインスリン感受性が増すため、血糖の変動が起きやすくなります」と述べています。
では、どうすればこの状況を改善できるのでしょうか。
クマール博士によれば、植物性食品を多く取り入れることでインスリン抵抗性が改善されるといいます。特に、寝る少なくとも2時間前に高タンパク質のおやつ(例:チアシード、ベリー、シナモン入りギリシャヨーグルトなど)を摂ることで、深い眠りを促しつつ血糖値の安定化にもつながります。
また、精製された炭水化物の摂取を控え、深夜の食べすぎを避けることで、夜間の血糖値急上昇による覚醒を防ぐことができます。こうした小さな食事の工夫が、乱れた睡眠パターンの改善に大きな効果をもたらすこともあるのです。
2. 新陳代謝:睡眠と体重との関係
更年期に入ると、新陳代謝は自然と低下し、エネルギーレベルも落ちやすくなります。それに伴い、睡眠周期が乱れることもあります。2022年に『Nutrients』誌で発表された研究では、間欠的断食(インターミッテント・ファスティング)が新陳代謝のリズム調整に役立ち、それによって睡眠時間が改善される可能性があることが示されています。
クマール博士によると、更年期の女性は間欠的断食を取り入れることで、より良い睡眠と脳の健康を促進できるとのことです。たとえば、夕方または早い時間に食事を終え、次の食事まで少なくとも12時間空けることで、肝臓では「ケトーシス」の過程が始まります。
ケトーシスの期間中、肝臓は糖分が不足している状態で代替のエネルギー源を探し、脂肪を分解して「ケトン体」という分子に変換します。ケトン体はグルコースよりも効率的に脳にエネルギーを供給できるため、より安定したクリーンなエネルギー源となり、認知機能の改善に寄与し、結果としてより深く回復力のある睡眠を促進します。
次にこの美味しい植物性料理で断食後の食事として試してみてください:
ココナッツクリームとベリーチアシードプディング
【材料(3食分)】
- 無糖アーモンドミルクまたはココナッツミルク…1カップ
- 無糖ココナッツクリーム…大さじ2
- チアシード…大さじ3
- 新鮮なベリー(ラズベリーやブラックベリーなど)…1/4カップ
- アーモンドバター…大さじ1(健康的な脂肪とクリーミーさを追加)
- バニラエッセンス…小さじ1/2
- シナモン…少々(血糖値管理をサポート)
- オプション:ステビアや羅漢果などの無糖甘味料
- ヘンプシード…大さじ1(タンパク質とオメガ3脂肪酸の補給に)
【作り方】
- ボウルまたは保存瓶にチアシード、アーモンドミルク、バニラエッセンス、シナモンを加えてよく混ぜます。
- 5分ほど置いてから再びよく混ぜて、チアシードが固まらないようにします。
- その後、冷蔵庫で最低1〜2時間、できれば一晩冷やします。
- 食べる直前に、ココナッツクリーム、新鮮なベリー、アーモンドバター、ヘンプシードを加え、お好みでシナモンや甘味料を振りかけて完成です。
多くの女性にとって、代謝をサポートするということは、単なる体重管理以上の意味を持ちます。それはエネルギーの回復、そして質の高い睡眠の回復にも直結します。新陳代謝と良質な睡眠の関係を意識することで、食事のタイミングを少し工夫するだけでも、驚くほどの改善が期待できるかもしれません。
3. マグネシウム:睡眠のスーパーヒーロー
マグネシウムは「鎮静ミネラル」として知られており、神経系をリラックスさせる上で重要な役割を担います。2023年に『Biological Trace Elements』誌に発表された系統的レビューでは、マグネシウムが睡眠の質向上に寄与することが確認されています。具体的には、日中の眠気やいびき、疲労感の軽減、そして睡眠時間の延長などが報告されています。
クマール博士は、「マグネシウムの複合形式(クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウムなど)は、神経系をリラックスさせるだけでなく、更年期におけるホルモンの減少で損なわれるさまざまな生理機能をサポートします」と述べています。
また、『The New Menopause』の著者であるメアリー・クレア・ハヴァー博士は、L-スレオニン酸マグネシウムを推奨しています。このタイプのマグネシウムは血液脳関門を通過し、脳に直接作用するとされています。さらに、彼女は「高いマグネシウムレベルが神経突起(細胞間の通信を担う構造)の形成を促進し、ストレスによる神経損傷を回復させる可能性がある」とする研究レビューにも言及しています。
オンラインの更年期サポートグループに参加しているメアリー・ルー・モラマルコさんは、「私は低糖質ダイエットを実践し、小麦を含む食品を避けています。そして長年にわたりグリシン酸マグネシウムを使用していますが、おかげで毎晩8時間、ぐっすり眠れるようになりました」と話しています。
食品からマグネシウムを摂取したい方には、バナナにアーモンドバターとパンプキンシードを添えた夜食がオススメです。
4. アシュワガンダ:ストレスと睡眠のバランスサポーター
更年期にはストレスが急増し、それが睡眠をさらに妨げる要因となることがあります。アシュワガンダ(Ashwagandha)は、ストレス軽減に効果のある「適応原(アダプトゲン)」として知られており、このような問題の緩和に役立つとされています。このハーブはストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げ、入眠までの時間を短縮する作用があります。
2022年に『Cureus』誌で発表された研究でも、アシュワガンダが睡眠の質を向上させる効果があることが確認されています。
ただし、クマール博士は「アシュワガンダはエストロゲン値を上昇させる可能性があるため、使用時には定期的なホルモンモニタリングが必要です」と注意を促しています。特に乳がんや子宮内膜症など、ホルモン感受性の疾患を持つ女性には注意が必要です。
一方で、2020年に『Journal of Ethnopharmacology』誌で発表されたレビューでは、アシュワガンダに抗がん作用があることも示唆されています。
なお、他の適応原としてはロディオラやエレウテロコックなどがあり、これらはホルモンレベルに大きな影響を与えることなく、ストレス軽減に役立つとされています。
5. ハーブティー:自然界からの睡眠サポーター
古くから、カモミールやバレリアンルート、パッションフラワーなどのハーブティーは、穏やかで安定した睡眠を促す飲み物として親しまれてきました。2023年に『Journal of Nutrition and Food Technology』誌で発表された研究でも、これらハーブの鎮静効果が科学的に認められています。
同研究では、1日1〜2杯の緑茶や烏龍茶も、睡眠の質を改善し、心理的ストレスや不安を和らげる効果があると報告されています。
特にカモミールティーは、神経系をリラックスさせ、自然な入眠を助けることで知られています。以下は、簡単に作れる安眠茶のレシピです。
安眠茶レシピ
- 熱湯…1カップ
- カモミールティーバッグ…1個
- シナモン…少々
- ハチミツ…小さじ1(お好みで)
【作り方】
5〜7分ほどティーバッグを浸した後、ゆっくりと飲みましょう。この「飲む」という行為そのものが、体に「リラックスの時間が始まった」という信号を送り、お休みへの準備を助けます。
6. 光との付き合い方と良好な睡眠習慣
2024年に『Journal of Health Psychology』誌に掲載された研究によると、朝の日光浴は体内時計(サーカディアンリズム)を整え、それが睡眠の質向上につながることがわかっています。
クマール博士は、「電子機器から発せられるブルーライトはサーカディアンリズムを乱し、更年期の女性にとって特に悪影響を及ぼします」と警告しています。
さらに彼女はこう補足します。「就寝の1時間前には、スマートフォンやパソコンなどの使用を控えてください。これらの機器が発するブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げます。なお、メラトニンサプリメントは、体内で自然に生成されるメラトニンと同じ効果は得られません」
専門家たちは、朝に10分以上の日光を浴びることや、夜間にブルーライトカットの眼鏡を使うことも推奨しています。
クマール博士は朝の散歩を推奨しており、「自然光を目に10分以上取り入れることが体内時計のリセットに役立ちます」と述べています。また、夜間にはブルーライトを遮断する眼鏡の着用も、睡眠と覚醒のリズムを整える助けになります。
7. 専門家や女性たちの実体験
クマール博士は、非処方のホルモンクリーム使用に対し警鐘を鳴らしています。「医師の指導なしにプロゲステロンを使用するのは絶対に避けてください。安全性に関わる重大なリスクがあります」と彼女は述べています。
博士は、生物同質ホルモンと他の統合医療アプローチを組み合わせて患者の症状改善を行っています。生物同質ホルモンは、体内のホルモンと同一の分子構造を持ち、身体に自然に受け入れられやすいものです。これらは通常、大豆やヤム芋など植物由来の成分から作られています。
長年睡眠の問題に悩んできたナンシー・ナイトさんは、生物同質ホルモンの使用によって更年期の不眠が大きく改善されたと語ります。「睡眠はずっと大きな問題でした。何年も試してきた中で、唯一効果があったのはプロゲステロンを周期的に正しく使うことでした」と話しています。
ダイアナ・ハンターさんは、ハヴァー博士が提唱する「ガルベストン・ダイエット」の支持者です。この食事法は更年期女性に向けた自然なサポートを目的としています。「私たちはテキサスに住んでいて、広告看板でハヴァー博士の本を知りました。そこには植物性エストロゲンの摂取方法が書かれていましたが、それだけでは足りません。私たちの体は、ホルモン、睡眠、栄養、運動といった基本的な要素を必要としているのです」と述べています。
2002年の『女性健康イニシアティブ(WHI)』は、ホルモン療法と心疾患、脳卒中、血栓、乳がんリスクとの関連を指摘しましたが、これらのリスクは個別には高いものの、全体としては発生率が低いことがわかっています。
この研究の影響により、多くの女性が治療を受けずに更年期や閉経周辺期のつらい症状に苦しむことになりました。しかし、その後に発表された数十の研究により、ホルモン補充療法(HRT)は以前の見解よりも安全である可能性が示されています。
2022年の『Menopause』誌では、ホルモン療法が睡眠の質向上に寄与する可能性があると報告されています。専門医と協力して治療計画を立てることが、安全かつ効果的なケアに繋がります。Winona、Midi、Alloyなどのオンラインサービスプロバイダーも、個別化されたホルモン治療プランの提供を通じてサポートを行っています。
理想的には、専門的なトレーニングを受けた医療従事者に相談することが勧められますが、一部の女性は非処方の植物性エストリオールやプロゲステロンクリームを使用することで、症状の緩和を実感しています。
良好な睡眠状態への回復へ
更年期に伴う不眠は、単に睡眠不足にとどまらず、日中の気分や生活の質にも深刻な影響を与える可能性があります。しかし、近年の科学研究は、自然なアプローチによって良好な睡眠を取り戻せる可能性を示しています。
これらの方法を試して、自分に合った対策を見つけてください。正しい知識と外部からの適切な支援があれば、健やかな眠りはきっと手に届くはずです。
睡眠を優先することは、ただの贅沢ではありません。更年期には欠かせない健康管理の一環です。
ハヴァー博士はこう語っています。「私は睡眠を命のように大切にしています。毎晩のルーティンを守り、L-スレオニン酸マグネシウムを取り入れ、快適な睡眠環境を整えることで、朝は本当にすっきり目覚めることができます」
(翻訳編集 里見雨禾)
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