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現代人の胃腸を弱らせる3つの習慣と手軽な食養生法

中国の伝統医学では昔から「座りっぱなしは胃腸を弱らせる、考えすぎは胃腸を弱らせる、冷たいものは胃腸を弱らせる」と言われています。ところが今の私たちは、まさにこの3つ全て当てはまっています。毎日オフィスで座りっぱなしで体を動かさない、ストレスや悩み事が多い、夏には冷たい飲み物や体を冷やす果物をたくさん食べる。こうしたことが毎日積み重なって、胃腸が元気をなくしてしまうのです。

昔から「人は鉄、ご飯は鋼、胃腸はかまどみたいなもの」とよく言われます。かまどが壊れていたら、どんなにいいお米や野菜があっても料理はできません。同じように、胃腸が弱っていると、いくら栄養のある食べ物を食べてもきちんと消化・吸収できず、いろいろな不調の原因になってしまいます。

日本古来の台所「かまど」(Shutterstock)

夏の暑さを過ぎた今は、特に胃腸がダメージを受けやすい時期です。ここからは、胃腸を傷める3つの原因と、その対策を分かりやすく説明します。
 

1.座りっぱなしで動かない → 胃腸の火力不足に

中医学では「体を動かすと元気(陽気)が生まれる」と言われます。人の体は、動くことでエネルギーが作られるのです。ところが現代人は長時間座りっぱなしでパソコンに向かい、ほとんど体を動かしません。すると元気が生まれず、胃腸はちょうど火が弱くなったかまどのように、力が足りなくなってしまいます。

座りっぱなしが続くと、手足が冷える、下腹が冷たいといった症状が出やすくなります。これは体のエネルギーが巡らず、胃腸が温められていないサインです。その結果、食べたものが消化できず、お腹が張ったり、体がだるくなったりします。

でも対策は難しくありません。食後に少し歩く、仕事の合間に立ち上がって伸びをする、腰をひねったり腕を振ったりする。そんなちょっとした動きでも、体に火をつけるようにエネルギーが生まれ、胃腸の働きが活発になって、消化が良くなります。
 

2、考えすぎ・心配しすぎ → 胃腸の働きが止まる

昔から「学者や文筆家は胃腸を壊しやすい」と言われます。その理由は、座りっぱなしに加えて頭を使いすぎ、考えすぎるからです。中医学では「脾は思を主る」とされ、考えごとが多すぎると最初に弱るのは胃腸です。

図書館で作業をする男性(Shutterstock)

現代人も、勉強や仕事で長時間頭をフル回転させます。すると「忙しくてお腹が空いたことに気づかず、作業が終わった途端にお腹が鳴る」ということがよくあります。これこそ「考えすぎて胃腸を傷める」証拠です。脳を使いすぎると、血やエネルギーが脳にばかり回って、胃腸が後回しになり、食欲がなくなり、消化も悪くなります。

さらに、食事中も資料を見たり考えごとをしながら急いで食べる人がいます。こうすると胃腸に十分な血やエネルギーが行き渡らず、火力不足でますます傷めてしまいます。

特に勉強やデスクワークが多い人は、「お腹は空いてないけど心配事でいっぱい」という状態になりがちです。そしてようやく課題や仕事が終わった時に急に食欲が出る。これは、それまで考えすぎて胃腸が押さえつけられていた証拠です。これを繰り返すうちに、胃腸はどんどん弱ってしまいます。

だからこそ、胃腸を元気にしたいなら、考えすぎないことが大切です。食事のときは考えごとをせず、ゆったりと「食べることだけ」に集中する。仕事や勉強はその時に専念し、食事中にまで頭を働かせないことです。
 

3、冷たい飲食 → かまどに水をかけて火を消すようなもの

夏になると、多くの人が冷えたスイカやビール、アイスクリームを好んで食べます。でも胃腸にとって一番苦手なのが「冷えと湿気」です。胃腸はちょうど「かまど」のようなもので、そこに毎日冷水をかけ続けたら、火が消えてしまいます。

冷めたい水のイメージ写真(Shutterstock)

冷たいものを食べると一時的に涼しくて気持ちがいいですが、その冷えが胃にたまります。時間が経つと胃腸のエネルギー(陽気)が冷えに押さえつけられ、秋になって気温が下がる頃に不調が一気に出てきます。具体的には、食欲不振、下痢、手足の冷え、疲れやすさなど。「秋になると毎年体調が悪い」という人は、夏に冷たいものを食べすぎて胃腸の火を消してしまったせいかもしれません。

つまり、冷たいもので一時的に涼しくなる代わりに、秋にはずっと不調に悩まされることになるのです。
 

食養生のおすすめ:「ネギと鶏もも肉炒め」で胃腸に火をプラス

胃腸を元気にするために特別な食材は必要ありません。身近な材料で作れる温かい料理が一番です。ここでおすすめするのは「ネギと鶏もも肉炒め」です。
なぜ鶏もも肉とネギなのか?

ネギと鶏もも肉炒め 料理イメージ画像
  • 鶏もも肉は温かい性質で甘みがあり、よく動く部位なのでエネルギーが多く、胃腸を温める力が強いと言われています。胸肉よりも消化が良く、元気を補うのに最適です。
     
  • ネギは辛みと温かさを持ち、体の冷えや湿気を追い出し、胃腸を守る効果があります。また、中が空洞なので「気の流れを通す」働きがあり、体のエネルギーを巡らせてくれます。
     
  • 生姜を加えるとさらに体を温め、冷えから胃腸を守ってくれます。
     
  • 料理酒(黄酒や米酒)を加えると香りが良くなり、消化しやすくなります。

これらを合わせると、「火力たっぷり」の料理になり、胃腸を温めながら体の冷えや湿気を追い出してくれます。特おに体が冷えやすい人やエネルギー不足を感じる人におすすめです。
 

レシピ:ネギと鶏もも肉炒め

材料(2人分)

  • 鶏もも肉 300g
  • 長ネギ 2本
  • 生姜 3枚
  • 料理酒 大さじ1
  • 醤油 大さじ1.5
  • 塩 少々
  • コショウ 少々
  • ごま油 小さじ1/2
  • 食用油 適量

作り方

  1. 鶏もも肉を一口大に切り、料理酒・醤油・コショウで10分ほど下味をつける。長ネギはぶつ切り、生姜は細切りにする。
     
  2. フライパンに油を熱し、生姜を炒めて香りを出す。
     
  3. 鶏肉を加え、強火で色が変わるまで炒める。
     
  4. ネギを加え、香りが立つまで炒め合わせる。
     
  5. 塩で味を調え、仕上げにごま油を回しかけて完成。

効能

胃腸を温めて元気を補い、冷えや湿気を取り除き、血やエネルギーを養う働きがあります。特に夏の終わりから秋の初めに、食欲不振、体の冷え、疲れやすさを感じる人におすすめです。
 

まとめ

胃腸は家のかまどのようなもの。いつも火を絶やさないからこそ、おいしいご飯が炊けます。でも現代人は、座りっぱなし、考えすぎ、冷たいものばかり。まるで毎日かまどに冷たい風や水をかけているようなものです。

胃腸を整える第一歩は、まずこれ以上いじめないこと。少し動く、考えすぎない、冷たいものを控える。それだけで胃腸に休む余地ができます。そこに、「ネギと鶏もも肉炒め」のような温かい家庭料理をプラスすれば、体の火力も戻ってきます。

胃腸が強ければ消化が良くなり、血やエネルギーも満ちます。中医学の五行では「土は金を生む」とされ、脾(胃腸)は肺を育てる母です。つまり、胃腸が整えば肺も元気になり、消化力も免疫力も高まり、秋は病気が減り、冬も元気に過ごせます。

胃腸を養うことは、体の土台を固め、自分に「底力」を与えることです。健康の根本はここにあるのです。
 
 (翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。