寒露の頃になると、足もとから冷えを感じ始めます。この節気で最も大切なのは、身体の「根」を守ることです。中医学では、脾は後天の本、腎は先天の根とされます。深まる秋に脾胃が弱り、腎の気が不足すると、だるさや冷えが現れ、冬に病を招きやすくなります。
その養生の智慧は、実は一碗の温かな栗とかぼちゃの煮物の中に凝縮されています。
かぼちゃは脾を補い、栗は腎を養う
かぼちゃは鮮やかな黄金色で、土のような厚みのある質感を持ち、その色と性質はいずれも五行の「土」に相当します。味は甘く、脾胃に入るとされ、脾を健やかに整える力が非常に高い食材です。
栗は温性で、脾と腎の経に入り、その渋みは腎の精を守る働きを持つと伝えられています。脾を補い腎を養い、体の基礎をしっかり固める食材です。かぼちゃと一緒に煮ることで、消化吸収の力が高まり、腎を温めて精を蓄えるはたらきが加わり、体の根本を総合的に養う効果が生まれます。食べればお腹が温まり、心も落ち着き、自然と精力が満ち、目が冴えわたり輝きがましてきます。

現代の栄養学でも、かぼちゃにはβ-カロテン、食物繊維、ビタミンCが豊富で、免疫を支え、消化を助ける作用があることが知られています。栗には豊富な炭水化物とカリウム、マグネシウムといったミネラルが含まれており、エネルギーを補いながら、脾と腎を温かく支え、血糖のバランスも穏やかに整えてくれます。かぼちゃと合わせることで、味わいが増すだけでなく、消化に負担をかけずに、夏の暑さで失われた栄養をしっかり補うことができます。
調理の過程は、まるで秋の詩のようです。かぼちゃを切り、栗の殻をむき、そっと出汁に入れる。みりんと醤油を加えて弱火で静かに煮含める。ふたを開けた瞬間に立ち上る甘い香りは、田畑の息づかいであり、冬を迎えるための確かな力そのものです。
これこそが日本の食文化の妙味です。大げさな滋養ではなく、簡素な料理の中に自然の理が息づく。ありふれた食材で、人々が四季を安心して過ごせるように整えてきたのです。
栗とかぼちゃの煮物(2〜3人分)
材料
- かぼちゃ……300g(大きめの一口大に切る)
- 栗(加熱済み)……8粒(殻と渋皮を除く)
- 昆布だし……400ml
- みりん……大さじ2
- 醤油……大さじ1
- 塩……少々
作り方
- かぼちゃは大きめに切り、栗は殻と渋皮を取り除く。
- 鍋に昆布だしを入れ、かぼちゃと栗を加える。
- みりんと醤油を加え、弱火でかぼちゃがやわらかくなるまで煮る。
- 仕上げに塩を少量加え、少し煮詰めて味をなじませる。
栗の甘みとかぼちゃのほっくりとした食感が溶け合い、だしの旨みとともに体をやさしく温めてくれます。黄金色に実る秋の恵みは、私たちに静かに語りかけます――今こそ体の根を整え、冬を迎える準備をするときだと。
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