悪玉コレステロール(LDL)は、その聞こえの悪い通称が示すように、確かに心臓病のリスク因子になります。
心臓病リスクは減らせる
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、心臓病は米国人の主な死因の一つです。
これは恐ろしい事実に聞こえるかもしれませんが、いくつかの自然な方法を実践することにより、体内の悪玉コレステロール値を下げることは可能です。そうすることで心臓病リスクを軽減し、懸念される現在の状態を改善するだけでなく、発病に向かう過程から状況を逆転させることもできるのです。
心疾患のリスクを決定づける遺伝的要因は数多くありますが、それでも状況を好転させることはできます。これは心臓病の最も一般的な原因であるアテローム性動脈硬化が、私たちがコントロールできる要素によって引き起こされているからです。
いわゆるアテローム性動脈硬化とは、動脈内に粥状の物質であるアテローム性プラークが蓄積することで起きる血管の硬化です。
ただし、それは食事から摂る脂肪だけがリスク因子であることを意味していません。実際「低脂肪食は、心臓病のリスクを低下させない」ということを、多くの研究が示しています。
脂肪だけが「悪」ではない
アテローム性動脈硬化は、脂肪が動脈を詰まらせることでは起こりません。つまり脂肪そのものが悪いわけではないのです。
アテローム性動脈硬化でさえ、それ自体が問題なのではなく、「酸化LDLによって引き起こされる各種の症状」がこの病気の本質であり、解決すべき問題なのです。
LDLは一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれていますが、実は人間が生きるために必要なものでもあるという、意外な側面をもっています。
LDLは、細胞にコレステロールやビタミンなどの栄養素をもたらし、フリーラジカルによる細胞へのダメージを軽減します。ところが困ったことにLDLは、血液中のフリーラジカルと相互作用を発揮するときに酸化されてしまうのです。
酸化されたLDLは「かんしゃく」を起こして暴れ、血管の内皮細胞にダメージを与えます。
血管内皮の損傷はマクロファージ(免疫細胞)を活性化させるのですが、マクロファージは酸化したLDLを「敵」と見なし、これを阻止するため、血管内にさらに多くの損傷を生じさせてしまいます。
スタチン剤は多用しないで
マクロファージは、酸化LDLを血管壁内に置いた上、不活性で無毒の脂肪プラークに変化させます。
つまり人間の体は、酸化LDLがより多くの細胞を傷つけるのを防ぐために、このプラークを生成しています。言い換えれば、アテローム性動脈硬化症とは「悪玉コレステロールの弊害を解消する方法」の一部になっているのです。
LDLと心臓病の間に関連があることを知った今、私たちはコレステロール値を下げるために有効な措置をとることは簡単です。血中コレステロール値を低下させる薬剤として、スタチン系薬剤(Statin)が世界で最も処方される薬の1つになっているのはそのためです。
スタチン系薬剤が普及している理由は、何といっても効果が高いからです。実際、スタチンは血漿中のLDL値を25%~35%低下させ、心臓発作の発症頻度を25%~30%低下できることが明らかになっています。
有効薬には副作用がある
スタチン系薬剤は、HMG-CoAと呼ばれる還元酵素を阻害することによって効果を発揮するものです。この酵素が阻害されると、肝臓はコレステロールの生成を停止し、その結果として血液中のLDLレベルが低下します。
しかし、HMG-CoA還元酵素を阻害すると、コエンザイムQ 10の産生能力も低下してしまいます。コエンザイムQ 10は、細胞の健康とミトコンドリア機能を維持するのに重要な役割をもつ有機化合物です。
コエンザイムQ 10は、ミトコンドリアがエネルギーを効率的に産生するのを助け、細胞が生きて成長できるようにします。
ところがコエンザイムQ 10の値が低くなると、筋肉の機能および回復能力が急激に低下します。このときに筋肉痛や筋肉の炎症が引き起こされるのですが、これはスタチン服用時に最も頻繁に報告される副作用です。
「最良の改善策」を求めて
さらに、それに関連して起きる認知機能低下および肝機能障害があります。これはスタチン系薬剤の使用に関連するコエンザイムQ 10の欠乏が引き金となって起こる、もう一つの副作用でもあります。
また、単純に良いことと思われがちな「低コレステロール」には、独自の副作用があることも指摘しなければなりません。
ホルモンの不均衡(テストステロンの低下)、疲労の増加、病気になる頻度が上がる、脂肪消化能力の低下などは、コレステロール値が低いことが原因である可能性があります。生命維持に必要な性ホルモンやストレスホルモン、胆汁酸の原料をコレステロールが提供するため、コレステロール値が下がると、これらの症状を招くことになるのです。
スタチン系薬剤には確かに多くのリスクがありますが、それでも心臓に遺伝的危険因子を持つ人にとっては役に立つ選択肢とされています。しかし、実際に心臓病の家族歴がある場合でも、LDL受容体の活性を自然に高めることで、必ずしも薬に頼らず、この問題をより効果的に解決することは可能なのです。
(次稿に続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)
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