(前稿より続く)
「肝臓機能を高める」が重要ポイント
悪玉コレステロールを効率よく回収して排出し、心臓病リスクを軽減する良い方法は、肝臓機能を高めることです。
肝臓には多くのLDL受容体が含まれています。これらの受容体が活性化すると、余分なLDLコレステロールが肝臓に吸収されるため、それが酸化して障害を引き起こすリスクが低下するのです。
LDL受容体は、以下の4つの方法で活性化することができます。
1、肝臓におけるコレステロール濃度の低下
肝臓は、体内のコレステロール値の調節器です。肝臓はまた、コレステロールそのものを生成します。
肝臓で作られたコレステロールは血液によって全身に運ばれ、細胞で余分になったコレステロールを回収して、また肝臓に戻ってきます。それを胆汁酸に変換して排泄することで不要なコレステロールを除去できるのです。
エンドウ豆、レンズ豆、アーティチョーク、ブロッコリーなどの繊維質の多い食品を食べると、繊維質が腸内で胆汁の再吸収を妨ぎます。これにより、肝臓はLDL受容体の活性を盛んにし、LDLを肝臓に持ち帰って、より多くの胆汁を合成します。
LDLコレステロール値を制御するこの方法は、机上の空論ではありません。高繊維食を採用した心筋梗塞患者は、同様の食事を採用しない患者と比較して、再発リスクが約40%低下することが示されています。
2、炎症レベルの低下
見方を変えれば、炎症は身体が治癒する上で避けられない過程であるとも言えます。LDLコレステロールはこの過程における重要なプレーヤーなのです。
肝臓は、体内損傷または外傷が生じるたびにLDLを増加させ、タンパク質の一種であるLDL受容体の活性を低下させます。そうすることで、循環する血液中のLDL濃度を一定に保ち、炎症を改善する過程を側面から補助するのです。
そのため、多大な精神的ストレスを受けたり、病気になったり、けがをしたりすると、コレステロール値が高くなる傾向があります。
炎症を軽減するには、環境や食事の内容から毒素を取り除き、睡眠の質を高め、精神的ストレスを減らすとともに、ウォーキングやヨガなどの低強度の運動が薦められます。
また、ターメリック(ウコン)などの抗炎症食品を摂ることや、ビタミンEやCなどを補給して酸化ストレスを減らすことも有効です。
3、甲状腺機能の改善
精神的に沈んだり、抜け毛が増えたり、コレステロール値が高い場合は、弱った甲状腺の機能を改善する必要があるかもしれません。
甲状腺機能が低下すると、コレステロール値は上昇します。また、甲状腺機能亢進症ではLDL受容体活性が亢進してLDLコレステロール値が低下することもあります。したがって、甲状腺機能が低下している場合は、この機能を改善することで心臓病のリスクを軽減できるのです。
甲状腺機能を改善するためには、まず炎症を減らすことが重要です。
炎症は甲状腺ホルモンの産生を閉じてしまいます。したがって、このときに限っては、「満腹感のある栄養価の高い食事」をとることも許されます。
私たちが栄養豊富な食事から満腹感や満足感を覚えると、甲状腺は、体が十分なエネルギーを得ていることを示す信号を脳から受け取ります。次に甲状腺は、甲状腺ホルモンを放出することでその信号に反応し、全身の細胞機能を改善するのです。
何といっても良質な睡眠は、甲状腺機能を改善する重要な因子です。
毎晩同じ時間にベッドにつき、十分な睡眠をとるようにしてください。翌朝は、疲れを残さず、すっきりと目覚められるようにしましょう。
4、インスリン感受性の改善
2型糖尿病は、心臓疾患の主要な危険因子でもあります。
それは、「インスリン分泌」「LDL受容体の活性」「甲状腺機能」の3者が密接に関連しているためです。
例えば、細胞がインスリン抵抗性を示すと(食事をしていなくても)細胞は「身体が食物を摂取している」と思ってしまうため、甲状腺機能およびLDL受容体の活性が低下します。その結果、高コレステロール、高血糖、さらには心臓病のリスクが高くなってしまいます。
一方、細胞のインスリン感受性が高まると、甲状腺機能およびLDL受容体の活性も高まり、血糖値の安定、コレステロール値の低下をもたらすため、心臓疾患のリスクは低下するわけです。
インスリンに対する細胞の感受性を高めるには、十分な運動と、食物中の精製食品の量を減らすことがポイントです。ウエイトリフティング、エアロビクス、インターバルトレーニングなど、無理のない範囲で運動の強度レベルを上げると、インスリン感受性が大幅に向上します。
また精製食品の代わりに野菜や果物を多く摂取してください。ビタミンや食物繊維の摂取量が増加してインスリン感受性が高まり、コレステロール値が低下します。
「自分の心臓を守る」のは自分
いかがでしょう。
以上のような実践が、あなたの心臓病のリスクを減らすのに有効だったでしょうか。
それを評価するには、次回の血液検査で、あなたの「総コレステロール値(LDLとHDLおよび中性脂肪の合計)÷善玉コレステロール値(HDL)」の比率を調べてみてください。
コレステロール値を正常に保ち、心臓発作のリスクを大幅に減らすには、総コレステロール値とHDLコレステロール値の比率を3~4にする必要があります。
心臓を守ることで、あなたのライフスタイル改善プランが大成功することを祈っております。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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