人の老化を最も早めることとは何でしょうか。まず思い浮かぶのは、タバコやアルコールなどの悪習慣です。しかし、その答えは意外なものでした。科学者たちは最近、老化の一番の原因が、実は精神状態の悪化にあることを発見したのです。
ネガティブな心理状態は老化の元凶である
米国と香港の研究者が、中国健康・退職者縦断研究(CHARLS)データベースの成人1万1千914人のデータを用いて共同実験を行い、さまざまな要因が人々の生物学的年齢に及ぼす影響を検証しました。データには、血液検査、生活状況、心理状態、病歴などが含まれています。
その結果、脳卒中、肝臓疾患、肺疾患などの疾病が生物学的老化に及ぼす影響は平均1. 5年未満であることが判明しました。
また、健常者についても調査した結果、健康な人の老化に関連する要因の第一位は、心理状態であることがわかりました。
2番目の要因は、生命を脅かす習慣である喫煙で、1.25年分の老化が進みます。このほか、男性であること、地方に住んでいること、独身であることなども、老化につながる要因として挙げられます。
恐怖、絶望、憂鬱、集中できない、楽しくない、孤独、不眠、物事にとらわれるなどの心理状態の悪さは、幸福感の低下を意味し、人の生物学的年齢を他のどの要素よりも高め、より深く老化させてしまうのです。
「精神的・心理社会的状態は、健康状態や生活の質の最も強い予測因子の一つです」。論文著者の一人であるスタンフォード大学のマニュエル・ファリア氏は、「しかし、この因子は現代のヘルスケアではほとんど無視されてきました」と述べています。
生理的年齢が高いと、老化や病気の進行が早くなる
生物学的年齢と実年齢は同じではありません。
生物学的年齢は算出することができます。この研究で、研究者が使用した統計モデルは、「エイジング・クロック」という比喩的な名前でも知られています。エイジング・クロックは、血液生化学マーカー、血圧、心拍数、配偶者の有無、居住地域、ライフスタイルなど、その人に関するさまざまなデータを入力することで、その人の生理的年齢を求めるものです。
生物学的年齢が実年齢より低ければ老化が遅く、生物学的年齢が実年齢より高ければ老化が早いということです。また、生理的年齢の上昇は、一部の疾患だけでなく、全死亡率や感染率の上昇と関連しています。
ストレス、孤独感、メンタルヘルス、加齢に対する否定的な認識などの心理的要因に加え、加齢を加速させる「ネガティブなライフイベント」や「現代のライフスタイル」など、心理社会的要因も存在します。
(つづく)
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