批判への対応
機能獲得研究に対する批判は以前からあった。4月12日には米国議会の議員数名が、鳥インフルエンザ研究における中国との協力に関して、書簡で以下のように深刻な懸念を表明している。
「我々は、米国農務省(USDA)が中国共産党(CCP)と繋がりのある中国科学院(CAS)と鳥インフルエンザ研究で協力しているという最近の報道を憂慮している」
「米国民が納めた税金から資金提供されているこの研究は、危険な実験室で作られた新しいウイルス株を生み出し、我々の国家安全保障と公衆衛生を脅かす可能性がある」
2月にサイエンス誌の取材を受けた主任研究員は、機能獲得研究は計画していないとして、懸念を否定した。しかし、実験のアプローチには、「自然宿主における進化を予測するために、マガモと中国のガチョウの生体内でウイルスを継代すること」が含まれている。
研究に携わった中国科学院の主任科学者、劉文軍氏は、中国政府は実験室の安全性について厳しい規制を設けていると強調した。しかし、武漢ウイルス研究所と新型コロナウイルス感染症で実証されたように、最高レベルの安全性であるバイオセーフティレベル4(BSL-4)の研究所でさえ、安全性遵守に深刻な問題を抱えている可能性があるのだから、劉氏の主張には全く説得力がない。
エコヘルス・アライアンスのピーター・ダスザック会長への資金援助が最近停止されたことは、中国政府の管理下にある研究所と繋がりのあるウイルス学研究に対する不信感を明確に示している。
病原性の高まり
動物におけるH5N1亜型の病原性は高まっている。
ピッツバーグ大学とNIHワクチン研究センターの研究者らが、2023年にCell誌に発表した研究で、既存のモデルであるカニクイザルを用いてH5N1亜型ワクチンの有効性を検証した。
この研究では、5.1 log10プラーク形成単位(PFU)のエアロゾル吸入投与により、6匹中4匹のカニクイザルが強い発熱と急性呼吸器疾患を引き起こし、死に至った。PFUとはウイルス量の測定方法だ。
これに対し、2001年から2014年にかけて行われたカニクイザルを用いた研究では、これらのサルに高用量のH5N1亜型(6.5-7.8 log10 PFU)を様々な経路(鼻、喉、口、目)から投与した場合、通常軽症で、過去の報告によれば感染によって死亡したサルは49頭中2頭のみだった。
23年前から10年前にかけて行われたこれらの研究と比較して、2023年の研究では使用容量がはるかに少なかったにもかかわらず、サルの死亡率はずっと高かった。このことは、H5N1亜型ウイルスの病原性が劇的に増加したことを示している。
歴史は繰り返されるのか?
2012年と2021年における機能獲得研究と、2013年と2021年の鳥類と哺乳類におけるH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスの発生時期を遡及的に検討したが、両者の間に密接な時間的関係があることは明らかだ。
この鳥インフルエンザウイルスに関する研究と、鳥類や牛における現在の流行から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源に関する激しい議論が思い起こされるはずだ。
SARS-CoV-2の起源に関する証拠に基づき広く議論された見解は、以前はヒトに無害だったコウモリ由来のコロナウイルスが、実験室での操作によってヒトに感染する能力を獲得したことを示唆している。
新型コロナによる前例のない困難な時期を経験した私たちにとって、今後の科学研究が何に焦点を当てるかを考えることは特に重要だ。中国政府の管理下にある研究所には、パンデミック対策という名目でより危険なウイルスを作り出し、大規模に拡散できるようにしているところもある。彼らは本当に人々を助けているのか、それともさらなる病気を生み出しているのかは疑問だ。
こういう憂慮すべき事実と状況があるのだから、中国の研究所とH5N1亜型鳥インフルエンザのアウトブレイクの関係について、直ちに徹底的な調査を促すべきだ。
科学を発展させ、ワクチン開発など人々を守るためのより効果的な方法を研究しようとするとき、多くの場合は技術競争がその根本的な原動力となっている。しかし、科学者たちは人類にとって、解決策よりも多くの問題を生み出しているかもしれない。
エポックタイムズの健康記事では、パンデミックやウイルス感染を防ぐ最善の方法として、健康増進に集中することを強調している。これには、健康的なライフスタイルを維持し、自然免疫力を高め、自然治癒力を維持することが含まれている。
ウイルスを編集して伝染性や病原性を高めたり、パンデミックを引き起こす潜在能力を研究することは、問題を解決するどころか、さらなる恐怖を煽るだけだ。
皮肉なことに、現代のテクノロジーが社会に様々な悪影響を及ぼすことがある。科学者に機能獲得研究を行う能力があるからといって、その必要性が正当化されるわけではない。
今こそ人々が目を覚ます時だ。
鳥インフルエンザウイルスについて
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型、D型と、4つのタイプがある。現有の知識では、世界的なパンデミックを引き起こす可能性があるのはA型のみだ。パンデミックは、インフルエンザウイルスに対する免疫力が限られている集団において、ウイルスが長期にわたってヒトからヒトへの感染を引き起こす能力を持つ場合に起こる。歴史上、ヒトへのパンデミックを引き起こしたA型インフルエンザウイルスは、H1N1亜型(1918年)、H2N2亜型(1957年)、H3N2亜型(1968年)の3種類だ。
A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面の2種類の糖タンパク質によって数十の亜型に分類される。
最初の糖タンパク質であるヘマグルチニン(H)は、ウイルスがシアル酸として知られる細胞表面の受容体に結合し、細胞内に侵入することを可能にする。その名前は、赤血球を塊状に凝集させる能力に由来する。もう一方のノイラミニダーゼ(N)は、受容体を破壊するタンパク質で、ノイラミニン酸のグリコシド結合を切断する酵素であり、感染細胞から新しいウイルス粒子を放出するのを助ける。HとNの機能におけるバランスは、伝染、宿主適応、種間の病原性と潜在的に関係している。
合計19のHタンパク質(H1-H19)と11のNタンパク質(N1-N11)が同定されている。HとNの異なる組み合わせが、インフルエンザウイルスの命名に使用されている。H5N1亜型はタイプ5のHとタイプ1のNを持つ。
「H5N○」という命名法は、異なるノイラミニダーゼのタイプ(N1、N2、N6、N8など)がH5タンパク質と対になっていることを示している。
「クレード」とは家系図の枝のようなものだ。あるウイルス科の中で、クレードとは、共通の祖先から生まれた類似の特徴を持つウイルスのグループを指す。クレード2.3.4.4bには、H5N1、H5N2、H5N5、H5N6、H5N8といった様々なウイルスが含まれている。
ヒトへの感染を引き起こすことが知られているA型鳥インフルエンザウイルスの亜型は、H5、H6、H7、H9、H10の5つ。
鳥インフルエンザウイルスは、引き起こす疾患の重症度によって、低病原性鳥インフルエンザまたは高病原性鳥インフルエンザに分類される。
H5およびH7は高病原性だ。具体的に言うと、A型鳥インフルエンザウイルスの人への感染報告のほとんどは、A(H5N1) およびA(H7N9) ウイルスだ。
高病原性A型鳥インフルエンザ(H5N6)および低病原性A型鳥インフルエンザ(H9N2)ウイルスも近年ヒトへの感染を引き起こしている。
本記事で述べられている見解は筆者の見解であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。
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