現代の都市生活では、忙しい仕事のために夜更かし・朝寝坊が習慣化し、夕食が遅くなったり朝食を抜いたりする人が多く見られます。しかし最近の研究で、朝食を食べるかどうか、そして食べる時間が健康に大きく関わっていることが分かりました。朝食を遅く食べる人は2型糖尿病になりやすく、夕食を遅く食べる人は脳卒中になりやすいというのです。
『国際疫学雑誌(International Journal of Epidemiology)』に2023年に発表された大規模研究では、10万3千人の成人(女性が79%)を対象に、中央値7.3年の追跡調査が行われました。研究チームは食事の時間と2型糖尿病の発症率との関係を調べ、その結果、朝8時前に朝食を食べる人に比べ、朝9時以降に朝食を食べる人は糖尿病リスクが59%上昇することが分かりました。
この結果は、近年流行している「16時間断食(16:8ファスティング)」を実践している人には意外かもしれません。多くの人は断食時間を延ばすために朝食を抜いたり遅らせたりしています。しかしこの研究では、夜の断食時間の長さと糖尿病リスクの間に明確な関係は見られませんでした。ただし、朝8時前に朝食をとり、かつ夜の断食を12時間未満の人と比べて、13時間以上続ける人は、糖尿病リスクがさらに53%低下することも分かりました。
糖尿病は血糖値が高くなる慢性の代謝疾患で、進行すると心臓・血管・目・腎臓・神経に深刻な障害を与えます。2型糖尿病は最も一般的なタイプで、細胞がインスリンに反応しにくくなる、または膵臓が十分なインスリンを分泌できなくなることで起こります。統計によると、2021年だけで世界中で670万人が糖尿病で死亡しており、平均すると5秒ごとに1人が命を落としている計算になります。
では、なぜ朝食の時間が糖尿病に関係するのでしょうか? 研究者によると、朝は糖を処理する能力が最も高く、インスリン感受性も良好だからです。朝食を抜くと悪玉コレステロール(LDL)が増加し、善玉コレステロール(HDL)が減少するなど、糖尿病の危険因子を悪化させる恐れがあります。
過去の大規模調査でも、朝食を抜く人は血糖値や脂質の数値が悪く、肥満になりやすいことが確認されています。一方、昼食や夕食を抜いても代謝への影響はほとんど見られませんでした。
夕食が遅いと脳血管疾患になりやすい
2型糖尿病以外にも、研究チームが昨年12月に発表した研究では、朝食の時間が1時間遅れるごとに、心血管疾患のリスクが6%増加することが分かりました。夜9時以降に夕食をとる人は、夜8時以前にとる人に比べて、心血管疾患のリスクが13%高くなります。
研究はまた、夕食が遅いと脳血管疾患(脳血栓、脳出血など)を発症しやすいことも明らかにしました。夜8時以前に夕食をとる人と比べ、夜9時以降にとる人は脳血管疾患のリスクが28%上昇し、夕食の時間が1時間遅れるごとに、そのリスクは8%増加します。
朝食を抜くと死亡リスクが高まる
複数の研究が、朝食の健康への重要性を裏付けています。2019年に発表された研究では、朝食をとる人と比べて、朝食を抜く人は心血管疾患による発作や死亡リスクが21%増加し、全死因による死亡リスクも32%高まることが報告されました。
また別の研究では、年齢、性別、人種などの要因を除外しても、毎日朝食をとる人と比べ、朝食を抜く人は全死因死亡リスクが75%、心血管疾患による死亡リスクが158%、心臓病による死亡リスクが134%、脳卒中による死亡リスクが253%増加することが分かりました。
研究者は、朝食を抜くことが心血管疾患、さらには死亡を引き起こす理由として、いくつかの可能性を挙げています。
まず、朝食を抜くと食欲や満腹感に影響を及ぼし、その日の後半に食べ過ぎてしまう可能性が高まります。また、インスリン感受性も低下しやすくなります。逆に、朝食を食べることは食欲の調整に役立ち、次の食事の際の血糖代謝を改善します。
次に、朝食を抜くと空腹時間が長くなり、視床下部‐下垂体‐副腎軸が過度に活発化し、朝の血圧が上がります。一方で、朝食をとることは血圧を下げ、血管の詰まりや出血、心血管疾患の発作を防ぐことにつながります。
さらに、朝食を抜くと血中脂質に悪影響を及ぼし、総コレステロールやLDLコレステロール(悪玉)の濃度が上昇します。これらは動脈硬化の独立したリスク因子です。
最後に、朝食を抜くことは不健康な生活習慣の表れである可能性があります。
健康的な朝食の4つの提案
ハーバード大学医学部は公式サイトの記事で、朝からエネルギーをしっかり得られるようにするための4つの朝食の提案を紹介しています。
1.全粒穀物を食べる
食物繊維が豊富な全粒穀物や全粒パンは血糖値の安定に役立ちます。市販のシリアル製品は数百種類ありますが、高繊維のブランフレークやスティールカットオーツが健康的な選択肢です。シリアルを選ぶ際は栄養成分表示を確認し、1食あたり食物繊維 5g 以上、ナトリウム 300mg 未満、糖分 5g 以下を目安にするとよいでしょう。
2.たんぱく質を摂る
ヨーグルトは特に良い選択肢で、なかでもギリシャヨーグルトはたんぱく質が豊富です。卵も良質なたんぱく源で、健康な人であれば1日1個食べてもコレステロールを心配する必要はありません。さらに、ナッツ類やサーモンといった健康的な脂質を含む食品を取り入れるのもおすすめです。
3.家で朝食をとるのがベスト
外食の朝食は健康的な選択肢が少なく、あってもオートミール程度です。ファストフードチェーンの朝食は多くの加工食品と同じく、精製された炭水化物、飽和脂肪、塩分が多く、食物繊維が不足している傾向があります。可能であれば家で朝食を準備する方が安心です。
4.スムージーにして全部飲む
もっとも簡単な朝食レシピのひとつは、果物、ジュース、ヨーグルト、小麦胚芽、豆腐を一緒にミキサーにかけてスムージーにする方法です。氷を加えてシェイク風にすれば、爽やかで栄養満点の朝食が手軽に楽しめます。
(翻訳編集 華山律)
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