考えが止まらず、頭の中で暴走してしまうことはありませんか? あるいは、理由もなく不安になったり、夜に何度も目が覚めて眠れなくなったりすることはありませんか? その背景には、脳の「ブレーキシステム」といえる神経伝達物質――γ-アミノ酪酸(GABA)の働きの低下が関係している可能性があります。幸いなことに、GABAのレベルは固定されたものではなく、日常の工夫によって高めることができます。
GABA:脳にブレーキをかける役割
脳を猛スピードで走る車に例えるなら、GABAはその速度を落とし、心を鎮める「ブレーキ」の役割を担っています。GABAは脳内で最も重要な抑制性神経伝達物質であり、神経の過剰な興奮を抑えて精神を安定させ、ストレスや不安に関係する扁桃体の活動を調節します。機能性栄養学者のムポ・チュクドゥ氏は本紙「エポックタイムズ」の取材に「GABAは休息、リズム、バランスを司る物質です」と紹介しました。
さらにGABAは、脳の活動を穏やかにすることで睡眠の質を高め、レム睡眠からノンレム睡眠への移行をスムーズにし、深く安定した眠りをもたらします。
なぜ脳の「ブレーキ」が効かなくなるのか?
GABAシステムの乱れは一つの原因によるものではなく、現代生活のさまざまな要因に影響されています。
慢性的なストレスやトラウマ:これが最も大きな原因です。統合医療の専門家プリヤル・モディ博士によると、ストレスホルモンが長期間にわたり高い状態で続くと、GABAを生成する酵素の働きが阻害されるだけでなく、GABA受容体の感受性や数も減少してしまうといいます。
彼女は「慢性的なストレス状態では、神経系が常に警戒モードにあります」と警告します。つまり、過去のトラウマが解消されていないと恐怖を感じる扁桃体が過剰に活性化し、冷静な判断を担う前頭前野の働きが弱まり、結果としてGABAの信号伝達が損なわれます。
慢性炎症・栄養不足:体内で炎症が続くとGABAの生成や働きが低下します。また、GABA生成に必要な栄養素が不足すると、そのレベルは自然に低下します。
腸内環境の乱れ:腸は「第二の脳」と呼ばれ、多くの腸内細菌はGABAの生成に直接または間接的に関与しています。腸内環境が乱れるとGABAレベルにも悪影響を及ぼします。
GABAを自然に高める2つの方法
モディ博士は「GABAのバランスは生まれつきで決まるものではなく、後から訓練できるものです」と述べています。これは脳の驚くべき「神経可塑性」の働きによるものです。次に紹介する2つの方法は、科学的にも有効性が確認されています。
方法1:食材を厳選し、「腸」内環境を整えましょう
まずは腸内環境の改善から始めましょう。自然療法医ジョディ・デュヴァル氏は本紙「エポックタイムズ」の取材に「腸内細菌はGABAの生成と受容体の働きに直接影響を与えます」と述べています。
- GABAを生み出す善玉菌を摂る:キムチ、ヨーグルト、味噌、コンブチャなど善玉菌が豊富な発酵食品には、GABAを生成することが科学研究で確認されているビフィズス菌や乳酸菌が多く含まれています。
- 善玉菌にエサを与える:食物繊維、プレバイオティクス、ポリフェノールを多く含む野菜や果物を積極的に摂りましょう。
- 原料を補う:GABAは主にグルタミン酸を原料として作られます。カリフラワー、玄米、ほうれん草、さつまいもなどを食事に取り入れるとよいでしょう。また、マグネシウムはGAD反応における重要な補助酵素となり、GABAの生成に役立ちます。
方法2:瞑想で「脳を鍛える」
規則正しい運動、深い睡眠、太極拳やヨガなどは神経系のバランス回復に役立ちます。特に「瞑想」と「呼吸法」は、GABAシステムを直接強化できる、科学的に実証された方法です。
- 瞑想:研究では、瞑想によって前頭前野のサイズと機能を向上させることができ、この領域の活性化がGABAレベルを高めることに深く関わっていることがわかっています。
- 呼吸法:深くゆっくりとした呼吸は、迷走神経と副交感神経(休息と消化の神経系)を活性化させ、神経伝達物質のバランスを整え、GABAレベルを高めます。まるで神経系に「リセットボタン」を押したかのような働きです。
モディ博士は「このような練習と生活習慣の調整を組み合わせることで、深く持続的な落ち着きと頭脳明晰が得られ、脳内のGABAレベルを効果的に高めることもできます」と、自身の臨床経験を紹介しました。
今日から、科学的に裏づけられたこれらの方法を日常に取り入れてみましょう。GABAを味方につけて不安を和らげ、ぐっすり眠れる毎日を目指しましょう。心も体も、本来の穏やかな状態へと導かれていきます。
(翻訳編集 正道勇)
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