「井底之蛙」(せいていのあ)【1分で読める故事成語】

荘子は『秋水』の中で、河伯(河の神)と北海の会話を生き生きと描きました。
秋になると黄河の水位が上がり、川幅も広がり、向かい側の家畜をはっきりと見分けられないほどです。河伯はこれを大いに自慢し、この世で黄河よりも壮観な景色はないとうぬぼれます。

しかし、河の流れに沿って北の海に辿り着いた河伯が広大な海原を見た瞬間、かつて黄河をあれほど自慢げに話していた自分を恥ずかしく思いました。
北海はこのように言いました。

「井戸の底に住んでいる蛙に大海原の話をしても伝わらない。なぜなら、居住環境に制限されているからである。夏を生きる虫に冬の話をしても伝わらない。なぜなら、季節の制限があるからだ。卑陋(ひろう:見識が浅はかなこと)な人間と真理を語ったところで、教育の制限により通じないだろう。人間は実際の環境に大きく左右されている。今なら、大海原を見たおまえと真理を語ることができる」

「井底之蛙」は、広い世間を知らず、自分だけの狭い見識にとらわれていることを指します。

鄭介文