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腎を温め、心と脳を守る「にらラーメン」

中医学では「腎は脳を司り、心は血脈を司る」と考えられています。冬の寒さは腎を傷つけやすく、同時に心にも影響を及ぼしやすいため、その結果として脳や血脈に関わるさまざまな不調が現れやすくなります。この時期の食養生の要点は、腎を温めて補い、全身を冷えから守り、血脈の巡りを整えることにあります。

食材にはそれぞれ「性味帰経」と呼ばれる薬性、つまり陰陽五行の性質があり、対応する臓腑を調える働きがあるとされています。そのため、腎を温め、血脈の巡りを助ける食材を選ぶことで、冬に心と脳の健康を意識した養生薬膳としての「にらラーメン」を作ることができます。

中医学では「腎は脳を司り、心は血脈を司る」とされています。冬は五行では「水」に属し、腎と深く関わる季節です。そのため寒さが厳しくなると、まず腎陽、つまり腎を温めるエネルギーが弱まりやすくなります。腎は「先天の本」とされ、体内の炉火のような役割を担う存在です。この火力が弱まると、水の巡りが滞り、心脈を温める働きが十分に行われにくくなります。その結果、脳が十分に養われず、めまい、反応の鈍さ、物忘れといった不調が現れやすくなると考えられています。

一方で、心は火に属し、血脈を司ります。本来は腎水によって調和が保たれていますが、腎陽が不足するとそのバランスが崩れやすくなります。さらに外からの寒さが加わることで、胸の圧迫感、動悸、血圧の変動、手足の冷えなどを感じやすくなり、体調管理が難しくなる場合もあります。

そのため、冬に多く見られる心脈や脳に関わる不調の背景には、「腎陽の不足」や「冷えによる巡りの停滞」が関係していると中医学では考えられています。腎を温め、水の巡りを整えることで、心脈や脳の働きを穏やかに支えることが期待されます。

つまり、冬の食養生で重視したいのは、腎を温めて補い、体全体を冷えから守り、血脈の流れを整えながら、心と脳の働きを支えることです。

中医学では、食材には生まれながらに「性味帰経」が備わり、その薬性は五行や臓腑に対応すると考えられています。適切な食材を選ぶことで、食事そのものを養生の一環として取り入れることができます。

今回は、家庭でも手に入りやすく、冬に特に適した温養の食材である、にら、豚肉、玉ねぎを主役に、腎を温め体を冷えから守り、心や脳の健康を意識しながら、血脈の巡りを整える養生ラーメンをご紹介します。
 

三つの食材の養生理論

1.にら:腎を温め、陽を助ける食材

にらは辛味を持ち、性質は温とされ、肝経・腎経に帰すると考えられています。肝と腎の経脈に働きかけ、気血を温め、巡りを助けるとされています。そのため中医学では、「中を温め、気を巡らせ、腎を補い陽を助ける」食材として用いられてきました。

にらは体を温める性質がある(shutterstock)

にらの穏やかな辛味と温性は、体を内側から温め、朝に陽気を立ち上げる助けになるとされています。そのことから「起陽草」とも呼ばれ、冬に感じやすい気分の落ち込みや、寒さによる停滞感の軽減を意識する際にも用いられます。朝食として取り入れるのにも向いています。

冬に「頭が重い」「気分が沈みがち」と感じる場合、冷えによって体が十分に温まっていないことが一因と考えられることがあります。にらは穏やかに体を温める性質があり、高齢の方や体力が低下しやすい体質の方にも取り入れやすい食材です。

ただし、にらは陽気を高める性質があるため、就寝前に多量に摂ることは控えたほうがよいとされています。体が覚醒しやすくなり、寝つきに影響する場合があります。

2.豚肉:気血を補い、潤いを与える

豚肉は甘味と塩味を持ち、性質は平とされます。甘味は脾胃に、塩味は腎に関わり、寒熱に偏りにくいため、幅広い体質に用いやすい食材です。

冬は寒さと乾燥が同時に進みやすい季節ですが、豚肉は気血を補い、同時に体の潤いを保つ助けになるとされています。辛温のにらと組み合わせることで、温めすぎず、重くなりすぎないバランスのよい一品になります。体力が落ちやすい方や、心血管の健康を意識したい方にも向いています。

3.玉ねぎ:巡りを助け、体を温める

玉ねぎは辛甘で、やや温性があるとされ、肺を潤し、胃を温め、寒さを散らしながら気血の巡りを助ける食材です。

玉ねぎは肺を潤し、胃を温め、寒さを散らしながら気血の巡りを助ける食材(Shutterstock)

中医学では「血の巡りを助ける食材」とされており、現代の研究でも、ポリフェノールや硫化物を含み、体調管理に役立つ可能性が示されています。

これら三つの食材を組み合わせることで、体を温めながら、血流や全身の巡りを穏やかに整える食事になります。
 

ラーメン一杯で、内側から温める

日本のラーメンは、温かいスープとほどよい脂のコクを特徴とします。特に骨を使ったスープは、体を温める食事として冬に適しています。そこに、にら、玉ねぎ、豚肉を加えることで、日常食でありながら、冬の養生を意識した一杯になります。

以下は、高齢の方や慢性的に体調を崩しやすい方、胃腸が弱い方でも比較的食べやすい「薬膳ラーメン」の参考レシピです。
 

レシピ:にらラーメン

材料(2人分)

  • 新鮮なにら …… 一つかみ(約50g)
  • 豚バラ薄切り …… 120g
  • 玉ねぎ …… 半分(細切り)
  • 生姜 …… 3~4枚
  • 鶏ガラスープ、または昆布とかつおのだし …… 600ml
  • 日本酒 …… 大さじ1(省略可)
  • 醤油 …… 大さじ1.5
  • 塩 …… 少々
  • ラーメン(中細麺) …… 2玉
  • 白胡椒 …… 少量

作り方

1.玉ねぎと生姜を炒める:鍋に少量の油を入れ、弱火で玉ねぎと生姜を香りが立つまで炒めます。

2.豚肉を加える:豚肉を加え、色が変わるまで炒めます。

3.スープを加える:スープを注ぎ、日本酒と醤油を加え、中火で豚肉がやわらかくなるまで煮ます。

4.にらを加える:仕上げの30秒前ににらを加え、さっと火を通します。

5.麺を盛り付ける:別鍋で麺を茹でて器に盛り、スープと具材を注ぎ、白胡椒を振ります。
 

結び

この一杯は、体を内側から温め、冬の冷えによる不調を意識した食養生の一例です。食後に体がぽかぽかと温まり、気分が軽く感じられることもあります。日々の食事の中で、無理なく体調を整える一助として、冬の食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

(翻訳編集 解問)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。