迷走神経は、重要な臓器と脳をつなぐ高速道路のような役割を果たしています。迷走神経を刺激する方法を習得すれば、頑固な症状を緩和し、より大きな落ち着きと回復力を育むことができるかもしれません。
より良い食事の選択と運動を心がけることが、心臓のケアの唯一の方法というわけではありません。迷走神経を活性化することが、治療計画の最後のピースとなるかもしれません。
迷走神経の機能を改善することで、「心臓の自然回復力をサポートし、心血管疾患の炎症やストレスによる誘因に対する強力なツールを手に入れることができます」と、自然療法医のナシャ・ウィンターズ(Nasha Winters)氏は本紙に語りました。
迷走神経は、心拍数、血圧、炎症など、健康な心臓の柱となる要素に直接影響します。迷走神経を刺激することは、ストレス管理の戦略であるだけでなく、心臓の健康と回復の要でもあります。
心臓の結束を高めたり、マグネシウムのレベルを適切に維持するなどの習慣は、心臓の機能とストレスへの耐性を改善するシンプルで効果的な方法となるかもしれません。
心臓と脳の関係
心臓と脳は双方向でコミュニケーションを行っています。迷走神経は、この2つの器官間のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たし、心臓の機能を制御する手助けをしています。
心臓は、神経および生化学的なシグナルを通じて、心拍数や心臓の圧力など、現在の状態に関するフィードバックを脳に送ります。このフィードバックは、ストレス反応、感情、および全体的な調節に関する脳の意思決定を助けます。 また、脳は迷走神経やその他の経路を通じて心拍数や血圧を調整することで、心臓の機能を左右します。
迷走神経は心臓に影響を与えるため、迷走神経刺激(VNS)は心停止(心臓が停止した状態)、心臓発作、脳卒中などの心臓疾患の治療法として研究されています。
心拍変動
心拍変動(HRV)は、神経系の状態を測定する非侵襲的な方法であり、迷走神経の活動と心臓の健康状態を評価する上で不可欠なツールです。心拍の間隔を測定し、体がどれほどうまく安静状態とストレス状態の間を移行できるかを示します。
「HRVは、臨床的意思決定の指針となり、患者の心血管系と自律神経の健康状態に関するリアルタイムのフィードバックを提供することで、ますます価値が高まっています」とウィンターズ氏は述べています。
自律神経の健康とは、心拍数、消化、ストレス反応などを司る自律神経系の機能の度合いを指します。自律神経系の副交感神経の主要部分である迷走神経は、これらの機能を調整する役割を担っています。
臨床現場では、HRVをモニタリングすることで、高血圧、不整脈、さらには心臓発作など、さまざまな心臓関連の問題のリスクを抱える患者を特定するのに役立つと、ウィンターズ氏は述べています。
一般的にHRVが高い場合は、迷走神経緊張(または迷走神経機能)が良好で、ストレス要因に柔軟に対応し、リラックス状態に素早く戻る心臓の能力を反映しているため、健康で適応力のある心臓です。この適応力は、回復力と強力な心血管機能の兆候です。
一方、HRVが低い場合は、ストレスに対処し効果的に回復する能力の低下を示すため、迷走神経緊張が不十分で心血管リスクが高まることが多いとウィンターズ氏は述べています。
ウェアラブルデバイスやモバイルアプリを使用すれば、誰でも自宅でHRVをモニターできます。これにより、睡眠、運動、栄養がストレス反応にどのように影響するかが分かります。このフィードバックは、ストレスや心血管系への負担の要因を特定し、調整を行う上でも役立ちます。
HRVが低下した場合は、デバイスを使用したVNSが改善策のひとつとなります。しかし、より自然で、より手軽に迷走神経を刺激して心臓機能を向上させる方法もあります。
マグネシウムを十分に摂取する
マグネシウムは迷走神経の機能と心血管の健康の両方に重要な役割を果たしており、神経機能を健康的に保ち、心拍リズム、血圧、筋肉の弛緩を調整する鎮静効果と安定化効果があります。
また、ストレスを感じると、体はマグネシウムを消耗し、迷走神経の緊張が低下する可能性があると言います。
「マグネシウムを十分に摂取することで、迷走神経がストレス反応を効果的に管理する準備ができた状態となり、神経系のバランスを維持し、心筋を含むすべての筋肉の自然な弛緩剤として作用します」と彼女は述べました。
マグネシウムは、ナッツ類、種子類、全粒穀物、ほうれん草やケールなどの葉野菜など、さまざまな食品に含まれています。マグネシウムを豊富に含む軽食や食事には、以下のようなものがあります。
- ほうれん草とアボカドのサラダにヒマワリの種をトッピング
- キヌアボウルにローストアーモンドとケールを添えて
- アーモンドミルク、チアシード、クルミを少々加えたオートミール
- ギリシャヨーグルトにパンプキンシードをトッピング
- ひよこ豆、ほうれん草、アボカドのサラダにオリーブオイルをかけたもの
- アーモンドまたはカシューナッツを少量
- ケール、フムス、ゴマの種を巻いたもの
心臓の結束性を高める
心臓の結束性とは、心臓、脳、呼吸、ホルモンなど、身体の各器官が同調している生理学的状態を指します。
「心臓のリズムがスムーズで安定し、一貫性のある、肉体的、感情的、精神的、霊的に優れた健康状態です」と、統合医療の専門家で呼吸法の専門家であるプリヤル・モディ(Priyal Modi)氏は本紙に語りました。
また、感情のコントロールを助け、共感力を高め、社会的なつながりを強める効果もあります。とモディ氏は言います。
ハートマス・モデル
ハートマス・コヒーレンス・モデルは、心臓に焦点を当てた呼吸法などの特定のテクニックを用いて心臓と脳を同期させ、心臓のリズムをより一貫性のある状態に導くアプローチです。これは、HRVに影響を与え、副交感神経の活動を強化し、ストレスを軽減することで迷走神経に作用する、科学に基づく統合医療アプローチとして認められています。
このモデルで紹介されているテクニックの1つが、ハートマス・クイック・コヒーレンス・テクニックです。いつでもどこでも行うことができ、所要時間はわずか1分です。やり方は次の通りです。
- 意識を胸のあたりに集中し、呼吸が胸の中を流れて出入りする様子を想像します。
- スムーズなリズムを維持しながら、5秒間息を吸い、5秒間息を吐きます。
- 呼吸をしながら、誰か、何か、あるいは場所に対する愛情や感謝の気持ちを思い浮かべます。
- 数分間続けてください。
ウィンターズ氏によると、究極的には、心臓を大切にすることは、数値を監視する以上の意味を持ちます。それは、身体の自然なバランスと回復力を育むことなのです。
「深呼吸や食事の選択、意識的に立ち止まることで迷走神経の緊張を高め、HRVを改善し、最終的には現代生活の課題に立ち向かうためのより優れた回復力と適応力を備えた心臓を育むことができるのです」と彼女は言います。
(翻訳編集 呉安誠)
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