林保華:中国国有銀行のブラックホールはどれだけ深いのか?

2005/05/16 更新: 2005/05/16

【大紀元日本5月16日】4月下旬、新華社は次のように報道した:“国務院は、150億ドルの外貨準備を中国工商銀行に注入して改革を行うことを決定した。”いわゆる改革とは、不良債権を処分して自己資本比率を引き上げ、もって上場の資格を獲得し、上場を通じて新たな資金を囲い込んで経営を支えることである。これ以前の2003年末、中国銀行と中国建設銀行は、それぞれ225億ドルの資本注入を受け、資産・負債を処分して積極的に上場の準備を進めている。

中国の四大国有銀行は、それぞれ役割が異なっている。このうち工商銀行は、国有企業への融資を担当しており、不良債権が最も多い。2002年末時点における不良債権の残高は7920億元近くあり、四大国有銀行の全体の不良債権の45%を占めており、100元の融資のうち30元近くが“不良”となっている。中国銀行と建設銀行には225億元が必要とされたことから、この150億は第一回目の注入にすぎないと言ってよい。スタンダード&プアーズの金融サービス評価担当部長 曽怡景の推計によると、中央政府は、工商銀行に対する今回の150億ドルの資本注入のほか、工商銀行及び農業銀行の資本調整に少なくとも1100億ドルが必要となる。また、貸倒引当金や自己資本比率を保守的に計算した場合、必要な資本注入額は1900億ドルとなる。

スタンダード&プアーズが2004年の7月に推計したところによると、こうした銀行の困難を除去しようとする場合、6500億ドルもの資金が必要となるが、これは中国のGDPの約4割を占める。中国の外貨準備は6000億ドル余りで、国内債務以外に2000億ドル余りの外債を抱える中で、政府が銀行を救うための資金はどこにあるというのだろうか?

中国メディアの最新の報道によると、工商銀行内部の人の話として、行内で固定資産と融資以外のリスク資産の精査・切離し作業が行われており、今回切離される不良債権の総額は、7000億元(845億ドル)近くで、作業は2ヶ月の内に完了する。また、2460億元(約300億ドル)もの損失債権の精査・引渡しの作業が5月15日前に完成し、切離しが可能となる。ある報道によると、“五一”長期休暇の間、工商銀行の職員は休日を返上して救命措置受け入れのための準備をしていたという。

いわゆる切離しとは、不良債権を割引いて4つの資産管理会社に売却することである。資産管理会社はゆっくりとこうした債権の回収にあたり、一部は回収できるが、恐らく大部分は回収できない。また、一部は外国の投資銀行に売却される。これら資産管理会社もまた国有企業であって内情は複雑であり、損失や破産が起これば、国家がその全てを引き受けることになる。

1998年、政府は30年ものの長期国債を発行して四大国有銀行に2700億元の資本注入を行った。このプランが策定された当時は、97年時点でのリスク資産の規模に基づいて自己資本比率を8%とすることが目標とされていた。2002年11月までに、四大資産管理会社もまた銀行の不良債権1600億ドルを処分した。しかし、昨年末になって再び資本注入による“改革”が実施されたことは、いくら資金を追加投入しても何の役にも立たず、古い不良債権を処分すれば今度は新たな不良債権が発生し、そのブラックホールが底なしの穴となっていることを証明している。

工商銀行の一歩先を行く建設銀行は、2004年末に資本注入を受けた後に改革の気勢を上げている。建設銀行会長の張恩照は、昨年の2月に開かれた2004年工作会議において、建設銀行を3年以内に国内トップの利益、効率を実現できる株式制銀行とし、10年以内に中国銀行業の中で最高の株式市場価値を実現できる株式制商業銀行にするとともに、アジア市場のトップに立つことを謳った。また、建設銀行は、中国国際金融(中金)を上場のための財務顧問に任命した。中金は、主として建設銀行とモルガンスタンレーとの合資で成立したもので、もともと建設銀行を2005年に米国に上場して60億ドルを調達する予定であったが、モルガンスタンレーが参画しても米国では上場できなかった。現在は、監督が緩やかなロンドンに転じたところであるが、これが成功するかどうかはまだ分からない。

しかし、今年3月、張恩照が汚職の容疑で捜索を受け、長期にわたって金融業務に従事してきた朱鎔基の愛将・郭樹清が建設銀行の会長となった。報道によると、新たな改革の嵐が起こっているとのことであるが、その結果がどうなるのかは分からない。

建設銀行がこのありさまで、工商銀行の方がどうなっているのかは誰にも分からない。不良債権以外にも腐敗官僚が銀行の不良資産を持ち逃げするニュースはよく聞かれる話であり、その規模はともすれば数億元となっている。こうした銀行は既に債務超過の状態になっており、民衆の預金に依存して運営を維持している。今回、外貨準備が再度動員されたが、問題は政府がこの底なしの穴を埋めることができるかということはないだろうか?また、民衆はこうした状態が続くことを容認できるのだろうか?

工商銀行に対する資本注入が発表された後の中国ネットユーザの反応は強烈であった。ある者は、“典型的な内外の結託であり、彼らは国有資産をぶん取ろうとしている”と述べ、また、ある者は、“すでに旨みがない程度まで奪い取られている”と皮肉っている。民衆が、一旦これらの国有銀行に対する信頼を失って取り付け騒ぎが起これば、その日が、これら銀行の末日のみならず、中共の末日となる。

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