国際関係専門家:日露中の極東石油輸送ルート争奪戦を分析

2005/11/15 更新: 2005/11/15

【大紀元日本11月15日】新しいエネルギー供給源および代替エネルギー源の開拓は、世界各国におけるエネルギー戦略であるとされる中、国際関係およびアジア環太平洋軍事問題専門家リチャード・ジラゴシアン氏は特別に、日露中がロシアにおける極東石油輸送ルート争奪戦でそれぞれが展開した企てを深く分析し、アジア時報で発表した。

ジラゴシアン氏は、ロシアにおける極東石油輸送ルート問題の争奪戦は単なる商業的競争ではなく、日中両国の政治闘争であるとし、モスクワ側は最終的に利益を収める勝ち組として、他人の争いを傍観しているだけだと述べた。

日本側:アンガースク・ナホトカ・ルート(以下、アンナク・ルート)

ジラゴシアン氏は、ロシアにおける極東石油輸送管の長さ及び輸送能力でルートを決めるのは重要な要素ではないとした。ロシアのアンガースクから太平洋側のナホトカまで、全長3700キロの油送管を建設する提案は、日本にとって戦略的意義を持っていると分析した。

このルートが確保できれば、日本の中東石油に対する依存度を10~15%までに減少でき、多元化市場の開拓に有利である。また、日露におけるアンナク・ルートの協定締結ができれば、日本およびロシアに新たな協力関係ができるとし、これまで両国間の低迷関係を回復できると分析した。さらに、アンナク・ルートの完成はロシアおよび中央アジア地区に於ける中国側からの圧力を軽減することができると指摘した。

しかし、アンナク・ルートの完成および日露間の関係を発展させる前に、領土問題が大きい障害であることを言及した。

 中国側:アンガースク・大慶ルート(以下、アン慶ルート)

日本側の提案に対して、中国はアンガースクから大慶(中国国内石油、天然ガス埋蔵量豊富な地域)までのルートを提案している。全長2400キロのアン慶ルートの建設コストは、アンナク・ルートより経済的である。また、アン慶ルートはロシア極東地区の生態環境を考慮に入れたものと主張している。

しかし、モスクワにとって、アン慶ルートの開通は、中国による当地区への浸透が必然であることを懸念し、ルートの決定に躊躇している。米国による中央アジア地区への参入が成功していることに鑑み、エネルギー供給問題を含む露中における協力関係がより密接になると分析した。

 中国のエネルギー策略

ジラゴシアン氏は、中共がこのまま共産主義政権を維持するためには継続的な経済成長に頼らざるを得ず、そのためのエネルギー供給は必要不可欠な要素であると分析した。

また、中国国内の資源やエネルギー需要は地域により不均衡であること、石油輸入に過度に依存していることなどを指摘し、中国が国内のエネルギー源を安定化させるために、石油輸入量の増加および長距離石油輸送設備を求めることに重点を置いたと分析した。ジラゴシアン氏は、中国におけるエネルギー消費量が世界の平均消費速度の4~4.5倍で加速していることを懸念している。

ジラゴシアン氏は、中国が海外の石油供給市場として狙っている先として、米国が比較的重要視していないカナダ、南アメリカ諸国、そして西側の石油会社の投資を受けず、中国からの投資を拒まない危険諸国と称されるイラン、スーダンおよびアンゴラ、ベネズエラを挙げた。ベネズエラでは中国の投資家が非常に歓迎されているという。

また、中国は米国との衝突を避けることを大前提としながら、積極的にエネルギー源の確保を行っていることに言及した。

 日本の改革

ジラゴシアン氏は、日本が長期に亘る経済停滞および政治的困難な時期を経過し、現在は改革時期に入ったとし、この過程の中で、日本が表した三つの変化が対中国および対ロシア政策に影響を及ぼすだろうと分析した。

一つ目の変化は、日本が自国の国際的地位および影響力を改めて測ったこと、二つ目の変化は、日本が米国との関係をより強化したこと、三つ目は、日本が地域的強国になることおよび国力に相応しい国際的影響力をもつことが必要であると自覚したことである。この点については、大部分の日本国民が持つ危機感と大きく関わっているとジラゴシアン氏は指摘した。調査によれば、大半の日本の国民は中国および北朝鮮に脅かされていると感じている。

ジラゴシアン氏は、この3つの変化に基づいて、ロシアの石油および天然ガスを獲得するために、日本は中国と競い合っていると示した。

 ロシア:最大の勝ち組

ジラゴシアン氏は、プーチン大統領が就任してから、ロシアのエネルギーは政治道具および戦略武器になったとし、ロシアはアジアと接近しつつ他方、ヨーロッパ陣営と徐々に離れて行くと分析した。また、日本との間には千島列島の主権問題があるが、ロシアは日本をアジアの大国、脅威とみなしてはいないと主張した。

更に、モスクワ側は、中国の拡大および極東地区への浸透を憂慮しており、中国がロシアにとっての潜在的競争相手であることに言及した。ジラゴシアン氏は、極東地区における石油輸送ルート計画は、いずれの方に軍配が上がっても、もっとも利益を受けるのはロシアであると述べた。

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