株価は業績反映し上昇へ、ヘッジファンドの影響力低下

2006/07/05 更新: 2006/07/05

米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀短観の結果を受けて、一時高まった日米の金融政策の不透明感が後退したとの受け止め方が広がり、株価は落ち着きを取り戻している。市場では、米国景気が軟着陸し、日本の利上げも緩やかなものにとどまるなら、日米の株式は、年末にかけて企業業績を反映する形で緩やかに上昇するとみる声が広がっている。

春までの相場を主導してきたヘッジファンドに関しては、世界的な金利上昇でPERを押し上げるまでの影響力はなくなっている、との指摘が出ている。

<FOMCと日銀短観でイベント通過、日米株価は落ち着き取り戻す>

6月のFOMC声明文がインフレだけでなく経済成長にも目配りをみせたことで、市場では「早ければ今回の利上げで打ち止め。遅くとも8月FOMCでの利上げが最後」(準大手証券)との見方が広がった。

日銀短観では設備投資をはじめ足元景気の堅調さが確認され7月利上げの可能性が高まったが「株価はこれを織り込み済み」(投信)として動揺はみられなかった。

「今後の利上げピッチはそう速くない。7月の後は来年1─3月になる」(りそな銀行総合資金部投資運用室チーフストラテジスト、下出衛氏)との声が聞かれるなど、当面の金利上昇は限定的とみられており、景気や株価の大きな阻害要因にはならないという。

FOMCや日銀短観の結果から、ドル/円は114円台とややドル安/円高に振れたが短観で示された2006年度の大企業・製造業の想定為替レートである111.09円までには余裕があり、収益懸念にはつながっていない。

このため日経平均は終値ベースで4月8日の年初来高値から6月13日のボトムまでの半値戻しにあたる1万5890円を視野に入れる水準まで回復。米ダウ工業株30種も終値ベースで直近ボトムにあたる6月13日の1万0706.14ドルから3日には1万1228.02ドルまで回復している。

「足元で円のショートポジションがたまり出しており、キャリートレード再開の兆しがある。マネーの収縮はいったん終了した。日本での資金調達コストは海外に比べて大幅に安い構図に変化はないため、日本の利上げを織り込んで再びポジションを構築し出しているようだ。ただ、スケールはこれまでよりは小さいものにとどまるだろう」(りそな銀行下出氏)との声も聞かれる。

「今後は、もみあいながらも基調としては株価の回復局面に入る。第1四半期決算発表での上方修正は限定的なものにとどまりそうで、夏場は材料難から上値が重くなりそうだが、中間決算の発表に向けて上方修正を視野にいれた展開になり、年末に向けて緩やかに上昇しそうだ」(準大手証券)との声が上がっている。

<ヘッジファンドの影響力低下、業績拡大に沿った株価上昇へ>

ただ、株価上昇の形は変わりそうだ。春までは、キャリートレードなどによる潤沢な資金を背景にヘッジファンドなどの資金が市場に流入しPERを押し上げたが、今後は業績見合いの上昇にとどまりそうだとの声が増えている。

「海外株もそうだが、とりわけ昨年末からの日本株の上昇については、先物専門のヘッジファンドが株先買い/債先売りのポジションを積み上げた影響が大きい」(草野グローバルフロンティア代表取締役、草野豊己氏)という。この結果、「日本株はファンダメンタルズで説明しきれないほどPERが上昇し、海外株式に比べても割高感が強まった」(準大手証券)。

しかし、世界的な金利上昇でヘッジファンドの運用環境は悪化しており、今後ヘッジファンドのリスクテイク余力は弱まるとみられている。市場では「春からの商品や新興国株式を含めた世界的な相場の変調で、ヘッジファンドの年初からの収益がほぼ消えた。世界的に金利が上昇傾向にあるなかで、ヘッジファンド・バブルの崩壊が起きつつある」(草野グローバルフロンティア、草野氏)との声も聞かれる。

ヘッジファンドの動きを含めたトータルの海外投資家動向にも変化がみられる。財務省が発表した5月の対内株式投資は5039億円の流出超で、「統計の取り方の変化を無視すれば、2年ぶりの流出超」(財務省関係者)になった。「まず、動きの早い米国勢が日本株への売り姿勢を強め、これに欧州勢が追随している。年初から日本株買いを手控えている年金勢も、7月から下半期入りしたことをきっかけに日本株のパフォーマンスの悪さからウエートを落とす動きが出てきそうだ」(草野氏)という。

さらに「FRBなど世界の中銀が、向こう見ずなマネーの動きを放置しない姿勢をみせている」(りそな銀行、下出氏)との指摘も聞かれる。世界的な金融緩和局面に急拡大した投機資金は原油など商品市場にも流入して価格を急騰させ、ファンダメンタルズに見合わないインフレ懸念をあおって世界の中央銀行を翻弄してきた。「これに対して、米金融当局はタカ派発言を強めて派手な株高や商品高を押さえ込む手法をとるようになった。これまで何度か市場を混乱させたタカ派発言のターゲットは、インフレではなく過大なリスクを取りたがるマーケットだ。市場との対話を通じて巧みにマーケットをコントロールしてきたグリーンスパン時代とは、対応の仕方が変化している」(りそな銀行、下出氏)という。

また、需給相場の一方の主役だった個人投資家についても、「信用の整理などがついてくれば再び買いが活発になるだろうが、個人投資家はトレンドを決めるというよりは下支え。個人投資家主導で全体相場を需給で押し上げる形にはなりにくい」(三菱UFJ投信運用戦略部長、宮崎高志氏)という。

このため、「今後は、PER拡大による急上昇ではなく、企業業績見合いでじっくり戻す相場になる。今期の増益率は2ケタは難しいとみているが、日経平均は4月高値の1万7500円程度まで戻してもおかしくない」(りそな銀行、下出氏)との声が聞かれる。
[東京 4日 ロイター]

関連特集: