ビッグイッシュー・ジャパン代表・佐野章二氏が警告、「日本社会は未来を失いつつある」

2006/09/29 更新: 2006/09/29

【大紀元日本9月29日】ホームレスを社会復帰させる目的で、英国ロンドンで1991年に立ち上がり、現在では世界28カ国に展開する世界的組織「(有)ビッグイッシュー」の日本支社代表・佐野章二氏(64)が9月25日、東京高田馬場の同社事務所で大紀元日本のインタビューに応じ、英国ロンドンでの起源、日本におけるホームレスの情況、NPO法人設立の将来展望、日本社会の問題点などについて語った。佐野氏は独立採算制の有限会社組織の利益により、将来はホームレスを社会復帰させるプログラムを施すNPO法人組織を設立したい意向だ。佐野氏は、都市問題や貧困問題に冷徹な観察眼を持ちながら、貧困層に対する慈悲の念は深く、「阪神タイガース」と上方落語の桂枝雀をこよなく愛する大阪人であった。

「ビッグイッシュー」は、英国人のジョン・バード氏がホームレス支援を目的にロンドンで始めた雑誌で、現在では世界28カ国、年間2600万部を販売。日本の「(有)ビッグイッシュー」組織は、NPO法人「シチズンワークス」の水越洋子氏、佐野章二氏などが協力して2003年5月23日にアジア地域では初めて設立され、同年9月11日に日本版の第一号が創刊された。販売員はホームレスのみで日本全国で約120人、大阪・東京を始めとした10都道府県の大都市で年間約60万部を売り上げている。販売員を志願するホームレスは、ビッグイッシュー・ジャパンに登録し、一冊90円で仕入れ、200円で販売するので、ホームレスには110円の収入となる。現在では、各種NPO組織、地方行政体、市民篤志家などがこの活動に注目・賛同し、支持している。

-佐野代表がホームレス支援に取り組み始めたきっかけは何か?

「まず、これを貧困問題ではなく、地域問題もしくは都市問題として捉えれば生産的ではないかと思い、一例として放置自転車をホームレスに貸し与えるよう地方行政当局に迫ってみたが、ホームレスの誘致であると断られ、企業に頼めば、他者の解雇者をなぜ当社が?というようにうまくいかなかった。そこで勉強会を開いたところ、この雑誌(販売)が面白いと思った」。

-「ストリート・ペーパー」には、いろいろあるが、なぜ英国のビッグイッシューを選択したのか?

「英国では現在、スコットランド、ノース、ウェールズ、ロンドンの四地域で行われているが、まず有限会社でやっているその手法に衝撃を受けた。また、現地に行ってみると、実にビューティフルに週刊で20万部も発行している。これは是非日本でもやってみる価値があると思った」。

-創始者は英国人のジョン・バード氏ということだが、創立の理念はやはりキリスト教に基づくものか?

「ジョン・バード氏は確かにカトリック教徒として育ったが、若い頃は詩とマルクス主義を愛する変わった人だった(笑)。親友のゴードン・ロディック氏からこの話を持ちかけられた時にもチャリティー嫌いで、市場調査をしてビジネスとして成立すると確信したからこそ出発した。彼の理念は、税金による救済ではなく、セルフ・ヘルプ(自助努力)だ」。

-ビッグイッシュー日本版23号を見ると、アジア先進国のホームレス実数として、ソウル3,320人、香港約1,600人、台北約800人、大阪約8,600人とあるが、なぜ日本はGDPが一番高いのにこんなにも多いのか?

「まずイギリスのホームレスが30歳前後と若いのに対し、日本は55歳前後と団塊の世代が中心、だからといって就労意欲が低いわけではなく、アルミ缶拾いなどして働いている。だから、日本は仕事さえ与えることができれば、ホームレスの八割は解消できる。要は、その雇用創出は、税金を使ってできるのか?難しいだろうという問題だ。日本では、ホームレス問題を自分たちの社会問題として捉える社会意識そのものが、政府、企業、そして市民にも低い」。

-大阪のホームレスは約8,600人ということだが、この中に外国人はどれぐらい含まれているか?また、女性・子供はどうか?

「まず、外国人は極めて少なく、大半は日本人だ。大阪は在日の人が多く居住する地域であるが、在日のコミュニティーは、よく機能しており、ホームレスになりにくい事情がある。女性のホームレスは全体の約5%ぐらい、一般的に女性の方が男性より生命力が強い(笑)・・・DVなどで家を追われても、最近では相談窓口などが整備されてきた。大半は中高年の男性労働者だ。子供は見かけないが、最近は20代のホームレスが出現し始めている」。

-ビッグイッシューは大阪で立ち上がり東京に出てきたが、活動の上で関西と関東では民情、風俗で違いはあるのか?

「大いに有る。端的に言って、東京の通行人は冷たく、またオウムショックが尾を引いているので、販売員は新興宗教の勧誘員と見間違えられやすく、また我々の活動趣旨になかなか理解を示そうとはしない難しさがある」。

-ビッグイッシューに国会議員、地方議員の支援はあるのか?人権系の弁護士とは連携しているのか?

「特定の議員、政党、宗教団体等からの協力は、われわれから敢えて求めることはしないが、マスコミの前には積極的に出てアピールしている。特定の顧問弁護士はいないが、ケースワーカーと共に弁護士らからも活動は注目されており、販売員の相談に乗ってもらってはいる」。

-有限会社の収益金でNPO法人を立ち上げたいということだが、実際の活動内容としては何を想定しているのか?

「まず、有限会社の自立支援として三段階ある。雑誌を一日25~35冊売るのが第一段階で、これだと手元に3000円入る。大阪・釜ヶ崎のドヤ街では、二畳の部屋が一泊600円、三畳だと1000円だが、3000円あれば、三畳の部屋に泊まって、500円の弁当が三回食べられ、その上こずかいも残る。第二段階では、一日に35~45冊売り上げてもらい、一日1000円ずつ月に2万円、最終的に20万円貯めてもらい、アパートを借りる。第三段階で、待望の就職となるが、これ以降はNPO法人でなければ駄目で…第一段階で、家族崩壊、離婚などの社会的問題、アルコール依存、ギャンブル依存などの問題を解決し、第二段階では、就業支援として、履歴書の書き方、就職の斡旋、個別フォローをし、第三段階では、文化支援活動プログラムとして、スポーツ活動、音楽活動などを通して活きる意欲、喜びを取り戻す」。

-ビッグイッシュー・ジャパンの代表として日本社会に発したいメッセージは?

「まず、日本を競争原理が持続する社会にしたければ、それから敗れた人たちが復活しやすい社会にしないといけない。日本でも最近になって格差社会が議論の対象になってきたが、こういった敗者に国、社会、市民が応援する姿勢がないと格差は広がる一方だ。それ以上に深刻なのは、若者に仕事がないことで、大学新卒の就職率が56%とは…若者は就職して社会に参画する機会が得られるのに、これを与えられない日本社会、問題を先送りにして排除しようとする社会は実は弱体化する一方なのだ。以上の二点が解消されない限り、日本の将来には未来がない、未来を失いつつあると痛感している」。

関連特集: