【大紀元日本10月12日】現在、中国共産党は「豊かになれる者から先に豊かになれ。」という「先富論」に基づき経済分野で市場経済を推進している。その結果、沿岸部では経済発展が著しい光景が見られる一方、内陸部では極貧世帯がいるという、巨大な貧富の差が生じている。これは実は「共産党による労働者搾取問題」である。
共産主義を作ったマルクスは著書「資本論」で「資本家が得る利益は、労働力に対して支払う価値(賃金)とその労働力が生み出す労働から得られる価値との差から生まれる」と考えたが、この思想を持つ共産党が政治面で独裁政治を続けながら市場経済を推進するとどうなるか考えてみれば、この問題は避けられないものであることは明白である。例えば自国の製品を他国の製品よりも価格競争力あるものにするにはどうすればよいかを考える。原料代、加工機械、物流など生産と販売に必要な資源が他国と同レベルであるとすれば、あとは労働者への賃金が鍵となる。実はここがポイントで、共産党独裁政権は、政治によって労働者の賃金を不当に低く抑え、現在の「経済発展の虚像」を作り上げている。そしてその見せかけの発展を根拠に自らの政権の正当性を主張している。労働者を資本家の搾取から解放すると唱えていたはずの共産主義政権が、皮肉なことに労働者を搾取して、しかもそれが正当なものであると主張しているのである。中国共産党の労働者搾取の卑劣な手口を具体的に記す。
「農村戸籍者への差別政策」
中国に住む人々の戸籍には、大別すると「都市戸籍」と「農村戸籍」の二つがある。農村戸籍者は農業への従事が基本的に義務づけられ、居住地を選択する自由がない。この政策によって農村戸籍者を貧しい状態に置き、期間を限定して彼らを出稼ぎ労働者として都市部で働かせれば、都市部に低賃金で働く労働者が大量に集まる。そしてそのあおりを受けて都市部の住民も低賃金に甘んじざるを得なくなり、その結果、低賃金の労働者市場が形成される。これが中国の「低廉な労働力」を生み出す主な仕組みである。
「さらに経済発展が進めば貧富の格差はいずれ改善される」と考える者も多いが、その考え方は居住地選択の自由、職業選択の自由など、基本的人権である自由を享受できる人々にのみ当てはまることに注意を要する。農村戸籍を持つ人々が都市部に自由に出ていって豊かになり、農村戸籍者の地元の生活水準や経済水準が上昇すると都市部の労働者の賃金相場の上昇を招き、その結果、低廉な労働力をあてにして中国に進出した外資系企業の撤退や国内企業の業績不振を招き、国内に溢れた大量の失業者が非難の矛先を中国共産党の政治に向けるようになるので、中国共産党は決して現在の農村戸籍者への差別政策を廃止することはない。もし仮に廃止されたとしても、その時にはまた別の差別政策を制定し、他の人々を不当に貧しい環境に置いて低廉な労働力を確保しようとするので、いずれにせよ、現在のような巨大な貧富の格差が縮小することは決してない。
「安全対策不備の黙認」
安全対策に費用を投じると、それだけコスト高につながる。中国の企業は膨大な労働者数を背景に、安全対策に費用をかけず、いわば労働者を使い捨てにする傾向がある。このような現状に対して本来ならば政府が安全規定を定め、各企業を指導、是正すべきところであるが、中国では共産党幹部と企業との癒着など汚職が絶えず、制定されている安全規定が守られていない。その結果、中国では炭坑の爆発や崩落、工場でも爆発、火災、事故などが多発し、毎年多数の犠牲者が出ている。
「医療制度改悪」
中国共産党は患者の医療費負担を増やすことによって、低賃金で働く多くの労働者が必要とする医療を受けられないようにしている。医療費患者負担額の増加の名目上の理由は国庫の医療費負担の抑制であるが、実はこれは膨大な人口と低賃金の労働者市場、それに加えて人口抑制を背景とした「人材使い捨て政策」の一環である。
医療費負担が増えても富裕者層は自ら医療費を負担できるし、共産党幹部は自らの権力で必要な医療を受けることができるので、医療制度の改悪の影響は貧しい者たちのみに襲いかかる。
「公害問題の放置」
中国の企業は公害が発生しないようにするために必要な設備投資などを行わない。その結果工場から毒物や環境汚染物質などが垂れ流しとなるが、共産党幹部の汚職によって公害問題が黙認されている。その結果従業員はもちろん、周辺住民も被害を受ける。共産党員は人々を共産主義に隷属する単なる物品と見なしている。共産党の目的達成のためにどれだけ多くの人々が命を落としても、共産党員にはそれらの犠牲者は単に使い古して壊れた物品としか映らないので、汚染物質の垂れ流しを何のためらいもなく放置する。そして公害の事実を知っている共産党員は、自らの身を安全な場所へ移すのである。
安全対策と公害を踏まえて、最後に重要な点を二つ指摘しておきたい。
まず一つは、共産党独裁政権下の中国に対して諸外国が安全対策や公害汚染防止対策への支援を実施しても、現金を渡せば横流しによって共産党幹部の懐を潤わせるだけに終わり、機材を現物支給しても支援を受けた企業が保守作業をしないのでこれらの問題はいずれ再発するということである。民衆に対して自らの非を認め、政策の是正を決してしない共産党独裁体制が続く限り、いかなる名目であれ金銭や物品の援助は共産党幹部の汚職をはびこらせるだけであり、無駄であることはもちろん、中国共産党はそうして得られた援助を利用して軍備の増強や、自らと同様に国民の人権を蹂躙している国家や、自らにとって都合がよい犯罪組織を支援していることを、各国の政治家や政府関係者をはじめとする世界中の人々は理解しなければならない。
そしてもう一つは、このような不当な人権侵害を続ける中国共産党独裁政権下で作られる中国製品によって、世界各国は現在も実際に直接的、あるいは間接的被害を受けているということである。労働賃金を不当に低く抑えて生産される製品との価格競争は不利であることは明らかであり、それによって衰退の危機に瀕している産業もある。公害で汚染された農作物が中国から輸入されて消費者に届けられ、健康被害が発生したりする。河川水や海水が汚染され、周辺諸国に漁業被害をもたらす。これらの被害がすでに発生している、あるいは発生しつつあることに気づいていただきたい。労働者の基本的人権を保障せず、まさに「人材使い捨て政策」を推進する中国共産党独裁政権が支配する限り、これらの問題は解決できないことを、世界中の人々は理解しなければならない。