【大紀元日本10月29日】中国の著名な民主活動家・魏京生氏が26日、国会で超党派の議員らと懇談した。席上、魏京生氏は監禁中の体験を語り、他の囚人や刑務官の証言を引用、当時から中国の監獄施設で、生きている囚人の臓器強制摘出が行われていたことを明らかにした。また、中国共産党員を含め中国人はすでに中国共産党を信用しておらず、中国共産党(中共)政権は今にも崩壊する可能性があると述べた。また、魏京生氏は、北朝鮮の核実験は中国当局が企て、演出した問題であると指摘し、中国当局と北朝鮮の核ゲームを阻止ためには、アジア民主主導国家である日本が尽力する以外にないと訴えた。
魏京生氏は「中国民主の父」「中国のマンデラ」などと称される中国の著名な民主活動家。1978年、中国の民主化を願う人々がメッセージを書き記した「民主の壁」(北京市西単地区)に、後に世界的に知られることになる「第五の現代化」と題する文章を書き記したために、同氏は2度も中国当局に逮捕され、延べ18年半にわたり監禁された。国際社会による長年の救援活動が功を奏し、1997年11月に魏京生氏は中国当局に釈放され、米国に渡った。翌年の1998年に訪日する予定だったが、旅立つ直前にパスポートが盗まれ実現せず、今回が初来日。
懇談会は、「アジアと中国の民主主義を考える会」(牧野聖修会長=元法務副大臣)が呼びかけ、約30人あまりの国会議員とその代表などが参加した。冒頭、牧野会長や民主党憲法調査会の枝野幸男氏、民主党の鳩山由紀夫幹事長などが魏京生氏の訪日を歓迎する祝辞を述べ、中国の真の自由と民主の発展に期待を寄せた。
スピーチでは、魏京生氏は多くの中国人は日本の民主制度に学びたいと願っていると述べ、民主と経済が健全に発展し続ける日本は国際社会におけるイメージを重要視し、世界特に東アジアにおいて、民主推進と人権問題でさらなる責任を担うべきであると求めた。
魏氏は、強い経済力と民主的な政治制度を有する日本は世界で常に重要視されていないのは不公平であるとし、「北朝鮮の核実験以降に、アジアの政治環境は緊張しているが、中国当局と北朝鮮の核ゲームを阻止するために、日本政府は尽力しなくてはならない」と助言した。また、アジアの平和問題について、魏京生氏は、「日本は重要かつ主役的役割を担っている。これらの危険な国が戦争を引き起こすことを阻止しなくてはならない。同時に、すべての国の人権と民主を支持することは、戦争を阻止する長期的な重責を果たせる」と指摘した。
歓迎の祝辞を述べる民主党幹事長の鳩山由紀夫氏(右から2番目)、牧野会長(右)、民主党憲法調査会会長の枝野幸男氏(中)、魏氏(左から2番目)
講演後の意見交換では、民主党の松原仁・議員が、中国当局による生きている法輪功学習者の臓器強制摘出について調査したカナダ独立調査団報告書を読み、非常に説得力があると述べ、これは非常に残忍な人権侵害事件であると指摘した。それについて、魏京生氏は、1981年に中国で死刑囚を監禁する牢獄に収監されていた際に、囚人や刑務官も生きている人の臓器を強制摘出する事実を漏らしていたと明らかにし、1998年米国議会で証人喚問を行う際に、自分はそれを証言したと述べた。中国衛生部はすでに死刑囚からの臓器摘出を認めているが、現時点において、外部が関連の告発に関する証拠を収集するのは、依然極めて困難であると魏氏は指摘した。また、魏氏は監禁中に、臓器摘出に参加した刑務官からその詳細の一部始終を聞かされ、刑務官自身も残酷で耐え難い、数日間も眠れないなどと漏らしていたという。
また、議員らから中国情勢などに関する見解を求められた魏京生氏は、最近の胡錦涛・総書記が上海市の陳良宇を権力の座から下ろした直前に、中央警備に係わる軍の幹部を変え、上海市武装警察部隊の指揮者も異動した事実をあげ、これはクーデータを防ぐための措置であり、中国共産党政権内部において権力闘争が非常に深刻で、今にも崩壊する可能性があると分析した。現在の中国人は100年前と異なり、大半は民主を熱望している。そのため、中国では必ず民主が実現する、今はもっとも重要な時期であるとの見解を示した。
台湾安保経済研究会の中津川博郷会長(元衆議院議員)は、「日本と台湾は共通な価値観を共有しているが、中国共産党とはまったく異なる」と述べたことについて、魏京生氏は、「中国の独裁者が権力交代する際に、戦争の脅威をちらつかせて自己の地位を樹立しようとしてきた。そのため、台湾と中国当局が平和共存する条件は存在しない」と分析、台湾攻撃のタイミングを計らっている中国当局が出した三つの条件を紹介した。①ロシアの支持②NATO同盟国が米国と袂を分かつ③対台湾戦争は対米国戦争であることから米国と同盟関係にある日本を抑え込むのは重要不可欠―と説明、中国当局は長い間、ミサイルや最新兵器の開発などに取り組み、戦争準備を整えているが、その三つの条件はまだ満たされていないと指摘、「日本は米国を支持する姿勢を強く堅持すれば、台湾が安全になる」との認識を示した。
また、中国共産党政権の現指導者の胡錦涛・総書記について、魏京生氏は、「胡錦涛は前任の江沢民と比べても、少数民族を弾圧、虐殺する問題においてまったく変わっていない。敢えて変化を挙げるとなれば、その手段がさらに残忍かつ狡猾になったことだ」と示した。
「私の命は(救援してくださった)皆さんが与えたものである」と、魏京生氏は日本と欧米国家の多くの政治家と民衆による十数年にわたる救援活動に感謝の意を述べ、これからも皆さんと協力して、世界平和とアジアの民主の推進に引き続き奮闘していく構えを明かした。
最後に、魏氏は、今回の訪日は、感謝の意を表する旅であると同時に、日本社会による中国の人権問題への認識や、中国の民主推進に更なる関心を喚起したいと述べた。
(記者・張本真)