統計数字を覆う霧―群衆事件がなぜ大幅に減少したのか

2006/11/28 更新: 2006/11/28

【大紀元日本11月28日】11月6日、中国公安部副部長・劉金国は、社会治安総合治理会において、次のことを明らかにした:今年1月から9月にかけて、全国公安機関が処理した各種群衆事件は合計で1・79万件、前年比で22・1%の減少であった。この数字が公表された後、海外においては、和諧(調和)社会の建設に迎合するために嘘の報告をした結果ではないかとの疑念が起こった。

中国国家の信用は高くなく、統計数字は習慣的に粉飾をされており、これが、疑念の主要な根源であるのは当然のことである。しかし、減少幅がこれだけ大きかった理由を明らかにしようとするならば、やはり、霧を払い、その原因を仔細に探るべきである。

この数年間、中国の群集事件は大幅に増加している。とくに、最近三年間の数字は、海外メディアに幅広く引用されており、その数字は、2003年に58000件、2004年に74000件、2005年は87000件であった。分析によると、これら群衆事件のうち、大部分が政府による耕地の収用、住宅の立ち退きによって引き起こされた反抗であった。

以上の事実に基づけば、中国当局が公表している数字は疑わしいが、その理由は二つある。第一に、2005年の87000件と比べると、今年公表された数字は第三四半期までの数字であるものの、下げ幅は、“対前年比22・1%”を大きく上回ることになる。第二に、これも最も重要な原因であるが、群衆事件の発生原因は、いまだに全く消滅していない。先に述べたように、農村の耕地であれ、市民の住宅であれ、いずれも民衆の生存権の剥奪が特徴となっている。こうした、生存資源の剥奪は既に、剥奪される者にとっていかなる譲歩の余地もなくなっており、このために、権利抗争が特に激しくなっているのである。2006年がまさに過ぎようとしているが、各地政府による土地収用、立ち退きを抑制するための強力な措置を中央政府が取ったことを示す事実は全くない。

しかし、こうした、中国当局が誠実さと信用に欠けることによって生まれる懐疑を裏付けるためには、更なる証拠の支持が必要であり、それによって初めて、統計数字が大幅に減少した真の原因を明らかにすることができる。

百度(検索サイト)において、「群体性事件(群衆事件の意)応急預案」の9字を入力すると、ただちに58400件余りの資料が現れる。これらの資料が明らかにする情報から見ると、中央政府は、《国家大規模群体性事件預案》を発したほか、各地方政府に対し、警察力の投入を強化することを厳命し、具体的な責任を人に帰するとともに、これを官員の政治実績を考査するための重要な指標と位置づけている。このため、各地方政府は、気配を察して直ちに行動し、各部門に対し融通のきかない任務―群衆事件の発生を防止すること―を下達した。そして、各地の政治事情にしたがい、群衆事件を容易に引き起こすような任務を分類し、政府各部門に課した。全国に普遍的に適用される応急預案が制定されたほかに、各地においても、自己の“特殊事情”に基づいた対応が行われている。例えば、黒竜江省においては、近年、多くの食物中毒事件が発生したが、省政府及び所管市・県は、この種の事件に対し、《牡丹江市薬品突発性群体不良事件応急預案》”といった応急預案を策定している。他の地方においても、《厦門市出租汽車(タクシーの意)行業群体生事件応急預案》、《深せん市教育系統預防和処置群体性事件応急預案》などがあり、一つに留まるものではない。

中国中部地区を代表する省である湖南省においては、省委、省政府が、「『三甲事件』『道林事件』『洪江事件』『汝城延寿、小垣事件』など重大群衆事件の教訓を真摯に汲み取り、群衆事件に対応するための、規範的で秩序ある制度を作った」と宣言し、《湖南重大群体性事件応急処置預案》《湖南省恐怖(テロの意)事件応急預案》《湖南省厳重(深刻の意)暴力犯罪応急預案》など十余りの応急預案を打ち出した。また、2004年の1年だけでも省委、省政府は、省公安庁の特別警察、武装警察特勤大隊に対し、1500万元分の反テロ装備を配置した。

これらの応急預案を解読すると、いくつかの共通する特徴、①防止を主とし、手段を尽くして突発的公共事件の発生を防ぎ、防止できないもの、既に発生したものについては、可能な限り悪影響、災難的な結果を避けるようにする②ランクに応じて責任を負い、責任を個人に帰することで、職責が明確な管理体系を構築している③専門の者が責任を持って末端部門の情報収集にあたる―を見出すことができる。

以上から、次のように結論付けることができよう。中国において群衆事件が急減したのは、地方政府が政治実績を考慮して過少、虚偽の報告をしたことのほかに、根本的な要因がある。それは、政府が、社会の統制能力を強化するため、全力で投入を強化し、鎮圧のための武装を完全なものとしたことである。いわゆる“和諧社会”とは、政治的暴力によって反抗者を脅迫し、口を噤ませることを基礎として構築されるものなのである。

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