【大紀元日本11月29日】北朝鮮へ拉致された日本人の調査を目的とする特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は11月24日、サンケイビル3Fにて「拉致問題について考える」という演題で講演を行い、日本人拉致被害者の調査・認定に関する諸問題について言及した。
北朝鮮による拉致問題に関し、平成14年9月17日、金正日総書記が日本人拉致を認めた。日本政府は現時点で11件16名の日本人拉致を認定している。しかし、北朝鮮による拉致被害者の数は100名とも200名とも指摘されている。以来「救う会全国協議会」には「自分の家族も拉致されたのではないか」という申し出が全国から殺到。事態を重く見た「救う会」は平成15年1月、独立した調査機関として「特定失踪者問題調査会」を設立(代表・荒木和博、元「救う会」全国協議会事務局長)、失踪者の拉致の可能性の調査に乗り出した。
現在、調査会には多くの調査依頼が来ている。昭和20年代に遡る事例もあり、捜査機関により家出や自殺と断定され、捜査を打ち切られたものもある。拉致の観点から捜査をされたものは少なく、決定的に情報が不足しているのが現状である。
基調講演で荒木氏は、地村夫妻、松本享子氏の事件に関し、失踪当時の警察当局は本腰を挙げておらず、1987年の大韓航空機爆破事件の主犯であった金賢姫が「当時、李ウネと呼ばれる日本女性から教育を受けた」と発言してから、警視庁当局の本格的な捜査活動が動き出し、平成12年8月に米子警察OBが、「拉致と疑わしい事件」三件を挙げてから松本享子さんの事件が浮上したと指摘した。
荒木氏は、昭和52年の久米さん以来、表面化し認定された拉致事件17件について、始めから日本政府当局が認定したものは一件もなく、マスコミの報道、北朝鮮からの通信書簡、工作員の自白などにより、政府が「追い詰められて」認定したと指摘、「政府は現状認定されている事件より、はるかに多い事件を掌握しているだろう」と推測した。
現在の日本政府の拉致に対するプロセスは、「捜査」「認定」「外交交渉」であるが、まず捜査の段階で「失踪なのか?事故なのか?拉致なのか?」家族でも判断がつきにくく証拠固めが難しく、これを政府当局に提出した時点で「件数を絞られ」、外交交渉では「さらに難航する」と指摘、国際紛争として安全保障上の「拉致問題」を避けてきたのではないかと指摘した。
韓国の東海岸で、北の小型潜水艦が拿捕されたが、前後に兵器は装備されてなく、工作員を運搬するだけの目的で建造されていた。しかしながら、現在の陸上自衛隊の兵力では、日本海側の長い海岸線全てを工作員上陸から守ることは困難で、「青森県」一つ分の海岸線を防衛するのがせいぜいで、政府当局が提唱している「水際防衛は不可能」との認識を示した。
日本には日米安全保障条約があるが、これまでの防衛政策では、米国が脅威であると認定していないとわが国も「脅威でない」としてきたふしがあり、処理が困難な拉致案件を日本政府は隠蔽してきたのではないかと揶揄した。この隠蔽工作について、根はさらに深く、政権中枢の与党政治家多数がこれに関係しているとみられ、したがって安倍政権になっても急には事態の好転はあり得ないだろうと予測した。
また2005年10月から開始した北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」について、日本語放送では日本人拉致被害者に希望を抱かせ、朝鮮語放送では金正日体制 の末路を訴えていると説明、将来的にはNHKでも採り上げてもらえることを視野に入れているが、資金的には運営上で苦しい事情もあり、日本人一般市民による募金に期待すると呼びかけた。「朝鮮総連などからの報復は怖くないのか」との聴衆からの質問に荒木氏は、「しおかぜ立ち上げ時には懸念もしたが、現在ではブルーリボンの件でも、国会では逆風が転じて順風に変化している」との認識を示した。