【大紀元日本12月9日】台湾中山大学海洋地質および化学研究所の陳鎮東教授はこのほど、長江三峡ダムから放出した水が中国大陸沿岸に沿って南下し、有機質と農薬汚染をもたらすだけではなく、海水中の窒素やリン酸塩を含む栄養成分濃度も夏季の10倍以上に上り、濃厚な栄養成分が生成したため、藻類の繁殖過剰をもたらし、海水中の酸素不足によって魚類および甲殻類の生存が脅かされるとした上、有毒性の赤潮までもたらす恐れがあると警告した。中央社が伝えた。
陳教授は、東南アジア区域変遷グローバル研究委員会(SARCS)を主宰しており、ここ3年間で行った共同研究課題「東南アジア陸地および海洋の炭素循環研究」の研究結果から、湖・ダム・河川から放出された温室効果ガスが深刻な状況にあると発表した。また、陳教授のもう1つの研究「三峡ダムが海洋環境にもたらす影響」では、東海の生態状況を重視するよう呼びかけたという。
陳教授は、夏季の場合南西の風が吹き、高温・高塩であるが栄養成分塩類含量の低い南海および一部の黒潮は台湾海峡を通過することから、三峡ダムから放出された水は北東へ流れるため、台湾に対する影響はないとした。しかし、冬季の場合は北東の風に変わり、台湾海峡の水温は夏季に比べて15℃まで下がることと高濃度栄養成分塩類、長江から流れてきた有機質、農薬などで、台湾北部海域が汚染にさらされる可能性を示した。
また、陳教授は繁殖過剰した藻類は死んでから、海に沈み分解する過程で海水中の酸素を沢山消耗するため、酸素不足で魚類や甲殻類の漁獲に影響をもたらすとした。さらに、高濃度栄養成分で過剰繁殖した藻類が毒性を持つ渦鞭毛藻(※うずべんもうそう)である場合、有毒性の赤潮が形成され、食物連鎖を通じて人にも害を及ぼすかもしれないと警告した。
陳教授は、三峡ダムから放水された水は冬季では、台湾海峡に向かい江蘇省、浙江省沿海の赤潮藻類を南へ流すことによって台湾海域に影響をもたらし、夏季の場合は北上する暖流は赤潮を逆に北へ流すことから、緯度の高い地域が影響されることに対しても懸念した。
※渦鞭毛藻は2本の鞭毛を持つ単細胞藻類の一群である。海洋プランクトンが多く、水圏における一次生産者であることから食物連鎖中の重要な位置を占める。渦鞭毛藻は赤潮の代表的な構成生物であり、毒性を持つため、渦鞭毛藻を捕食した貝類に蓄積されて貝毒の原因となる。強毒性の渦鞭毛藻として、アメリカのノースカロライナ州で発見したフィエステリア(Pfiesteria piscicida)が産生する毒素は、極微量で人の神経系に影響を与える。
例えば、フィエステリアの生息する海水の浮遊粉塵を吸引しただけでも、倦怠感や頭痛、呼吸困難や記憶障害などの諸症状に至るという。(Wikipediaより)