シンポジウム「台湾政治と二二八事件60周年」=米国ブルッキングス研究所

2007/02/24 更新: 2007/02/24

【大紀元日本2月24日】2007年2月28日は、台湾二二八事件」の60周年記念日に当たる。米ワシントンDCのシンクタンク「ブルッキングス研究所」は2月22日、シンポジウム「二二八事件の政治的意味」を開き、パネリストの識者らは、二二八事件が(台湾社会に残した)傷跡を修復することができず、(本省人、外省人、原住民らが)和解ができなければ、台湾の民主発展に悪影響を及ぼすとの認識を示した。米VOAが伝えた。

*二二八事件

1947年2月28日の前日、台北市の女性タバコ売りが台北公安に取り締まられたことが発端となり、全面的な官民衝突となった(注;当時の国民党政府は、塩・タバコなど専売業の利権を独占していた)。民衆の一部は射殺され、事態は収集不能の状態となった。

2月28日から、市民たちによる蜂起は、動乱となって台北から台湾全土へと拡大した。国民党政府の蒋介石・当時主席は、知らせを聞くと台湾に軍隊を派遣して鎮圧、数ヶ月間の死傷者・失踪者は数万人に達し、被害者家族たちに消し難いトラウマを残した。

*李登輝・前台湾総統、二二八事件・被害者家族らの名誉を回復

台湾国民はそれから、半世紀近い国民党の情報統制下で、二二八事件を口にしなくなった。李登輝・前総統が台湾民主化運動を提唱してから、タブーであった二二八事件がようやく台湾政府によって見直され始めた。

李・前総統は1995年、台湾総統として政府を代表して、二二八事件の被害者家族に対して公開謝罪した。同年10月、行政院は二二八事件記念基金会を設立し、各項補償措置の処理を行い、補償金を支給する専門機関を設けた。

*陳水扁・総統、二二八事件の記念日を制定

陳水扁氏は1996年、台北市長として二二八事件の記念日を制定した。台湾行政院は同年、2月28日を国民の祝日とする法案を可決した。国民党の馬英九・党首は2006年、二二八事件を「官逼民反:役人の制圧に対して、民衆が反発する意」であると定義した。

*台湾人関係委員会執行委員長:傷跡をいたわり慰める

台湾民進党を支援する台湾人関係委員会の陳文彦・執行委員長はシンポジウム会場で、二二八事件の60周年記念は、台湾人民に残した傷跡をいたわり慰めるものであると説明した。

陳委員長は「勿論、一代一代と時間の経過につれて傷の痛みも薄れてゆくが、やはり影響は残る。例えば、現在台湾島内の種族は互いに和解していないが、その原因は二二八事件へ遡る。1945年に国民党政府が台湾入りした際、島民は国旗を造って国家を歌い、祖国の軍隊を歓迎したが、二二八事件があってからは、台湾国民の態度は180度転換、その影響は大だ。台湾の政治を理解しようとするなら、同事件が台湾人民の心に残した傷を先に理解しなくてはならない」と述べた。

*台湾総統府国策顧問「まだまだ誠意が足りない」

台湾総統府・国策顧問の彭明敏氏はシンポジウム後の記者会見で、「二二八事件で残された傷跡をいたわり慰める作業には一定の困難がある。李・前総統は被害者の家族に正式に詫びたが、誠意が足りない・・・事実真相のすべてが公表される前に、種族和解の問題へ進むことはできない」と主張した。

彭氏は、「責任の所在をハッキリさせなければならない。主犯格の責任者がいるはずだ。こうしたことをハッキリさせないで、どう和解しようというのか。総ての案件を一般公開し、歴史有識者に事件の経過を追跡させることが唯一の方法だ。こうでもしなかったあら、被害者家族たちには政府の誠意が通じないだろう。現時点では、そういったムードさえないが・・・」と痛烈批判した。

*台湾人の意識覚醒

前出の陳文彦・委員長はシンポジウム後の記者会見で、「台湾人の意識覚醒は二二八事件から始まり、それは現在までずっと続いている・・・国民党制圧下の一時期において、覚醒した意識が消失しかけたが、台湾の民主化後に徐々に再興した。台湾国民の最新意識調査でも、自分が台湾人だと回答した割合は相当高かった」と述べた。

*台湾は民主国家

陳・委員長は、「台湾は民主国家だ。台湾の一切、未来、発展は、その国民2300万人によって自ら決定されるべきだ。そのため、台湾人の主体意識(アイデンティティー)の発展は、台湾政治の将来的な発展にとって軽視できないものだ」との見解を示した。

*大陸出身の台湾問題専門家:台湾独立に含む複雑な要素

大陸出身の台湾問題専門家・徐博東氏は中文記者のインタビューに応じ、二二八事件と当時の大陸共産党が国民党の独裁専制統治に反対した派閥門争とは、実際には同一のものであり、不可分だとの認識を示した。中共当局は、二二八事件から派生した台湾独立運動には批判的な態度を採ったが、二二八事件の被害者には同情を示したという。「台湾独立には複雑な素因があり、単純に一側面のみを観ていては駄目だ。台湾独立の思想に決着を見るのは、一朝一夕にしては成らず、倦まず弛まず台湾人のアイデンティティーを追求しなくてはいけない。別の言い方をすると、国内をしっかりと整え、国際環境の変化を視野に入れて、忍耐強く温和な方法を採るべきで、強行的な弾圧の方法は宜しくない」と揶揄した。

*中国の台湾問題に対する許容範囲

徐氏は、中共当局側には台湾問題に対して許容範囲があり、それは台湾の憲法改正であると指摘した。

徐氏は、「法理上の台湾独立とは、法律上で大陸との関係を切断することだ。実際、現行の法律制度では、一つの中国という構造だ。もし、陳総統が憲法改正の旗を掲げ、台湾が中華民国の一部であるとの領土範囲を改正したならば、それが法理的な台湾独立だ。胡錦濤・中共総書記の四不(四つの否定)に該当するもので、中共当局にとって絶対に容認できないものだ」と分析した。

*ブレイツァ研究員:台湾国民の賢明な選択に期待感

「ブルックスキング研究所」ブレイツァ・上級研究員の指摘によると、台湾の一部国民が法理的な台湾独立を進めているが、意識調査では、法理的な台湾独立を主張する国民はわずか13%で、反対に現状維持を主張する国民は63%に達していた。

ブレイツァ氏は「台湾国民の大部分は、法理的な台湾独立を推進すると台湾に危害が及ぶのではないかと危惧しており、少数派が法理的な台湾独立を最優先事項に掲げている。私は、台湾国民が賢明な選択をすると強く信じている」と述べた。

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