【大紀元日本4月16日】安徽省合肥市の地方紙「江淮晨報」の報道によると、安徽省巣湖市の商業ビル建設予定地で4月10日、市当局の強制撤去に遭った呂二祥さん(42)が、約束の補償が支払われていないとして、当局に抗議し焼身自殺した。呂さんは、病院へ搬送されたが間もなく死亡、現場で呂さんの自殺を止めようとした公安局副局長も火傷を負った。しかし、有識者らによると、「警察および公安局副局長が現場で住民に対して暴力を使って撤去行動に出て、圧力を掛けたため住民が焼身自殺に追いやられた。副局長らは(実質的には)間接的犯人だ。社会的弱者らは、往々にして極端な抗議行動に出やすく、強制的に私有財産が奪われると取り返しのつかなくなることがある」との認識を示した。
*強制撤去に遭った住民が焼身自殺
事件当日、呂さんは灯油一缶を自分に注ぎ、ライターで点火、呂さんの行動を止めようとして、飛びかかった朱曉明・公安局副局長もまた背中と首に火傷を負った。また、今回の商業ビル建設計画は大多数の住民の理解と支持を得ており、すべての住民は立ち退き補償協議に同意し署名し、呂さんも昨年の10月に署名したが、その後、呂さんは当局に対してさらなる条件を要求、当局から明確な回答がなかったことが事件の発端だ。呂さんは失業中で、息子2人と認知症の老母を抱えていた。
*公安当局による暴力的な強制撤去
ラジオ自由アジア放送局(RFA)によると、本記事の出所は、安徽省巣湖市のメディアではなく、同省合肥市の「江淮晨報」がスクープしていた。実際、RFAは事件が発生した巣湖市メディアの「巣湖日報」へ問い合わせたが、「弊社は報道していないのでコメントは差し控える」との回答を得たという。
「江淮晨報」の報道について、大紀元コラムニストの王一峰氏は、「大陸メディアは、公安局副局長・朱曉明の行動を正当化して報じたが、全くの笑止千万だ。公安当局の関係者が撤去の現場にいること自体が圧力なのであり、呂さんを死に追いやった要因といえる。呂さんは自殺する前、朱副局長の強制撤去を指揮するのを止めさせようとしたのかもしれない…」とみている。
*人権活動家:強制撤去の末路は無念の自殺
山西省太原「中国人権論壇」の_deng_太清会長によると、政府の強制撤去の対象になっている弱い立場の一般大衆は、切羽詰まった状態に陥り易く、選択肢も多くはない。同会長は、「もし住民を強制的に撤去させたいなら、補償金を支払わなくてはならない。住む所もなく、行く当てもなくなったら、どうやって暮らしていけというのか。高騰する生活費に困り、路頭に迷うだけだ。焼身自殺をしても不思議ではない」と述べた。
さらに同会長は、日本の首都・東京では強制撤去の問題が約7年かかって解決された事例を挙げ、「先進国では、法的な規制があって、人権が民衆の利益として保障されており、どのような政府当局も、どのような集団も、どのようなグループもこれを侵害してはならないとされている。しかしながら、現在の中国ではこれらの法整備がまだ不備で、こういった悲劇が際限なく繰り返される。2-3ヶ月で解決されると言っても、結局、個人は平手打ちを喰らわされるのが落ちで、殴られるか、逮捕されるか、それでも訴える方法がなく、挙句の果てには自殺してしまう」と嘆いた。
中共中央・国務院の「都市部における不動産家屋に関する立ち退き条例」によると、こういった「立ち退き」には、市場価格に照らし合わせて補償を行わなくてはならないが、多くの情況下で、建築開発業者は規定に沿って補償を行っていない。3月16日に採択された「物権法」は、個人財産の保護を謳っているが、同会長は「この法律は、誰が執行して、誰が監督するのか。物権法を制定するのは良いが、執行が問題だ。一体誰のための法律なのか」と人民の利益と人権を尊重しない政府当局を暗に揶揄した。