【大紀元日本7月6日】今年3月に世界銀行(World Bank、WB/世銀)および北京当局は、中国汚染問題研究報告成果についての共同発表が行われたが、英紙フィナンシャル・タイムズによると、当時は中国当局の圧力によって、同報告における3分の2以上の内容は公開されなかったという。
「中国汚染の代償」と題された同報告は、世銀および中国当局が数年にわたり研究し作成したもので、公開されなかった内容の中には、世界保健機関(WHO)が流行病学模型試算にて、経済発展を促進するために大気および水汚染によって、中国において、毎年75万人が非正常に死亡していると推定した。その内、大気汚染による死者は年間約39万4千人で、農村地区における水汚染によって、年間約6万6千人が下痢、胃がん、肝臓がんおよび膀胱がんで死亡する。また、石炭および食用油による室内大気汚染による死亡者数は、毎年約30万人であるというものが含まれている。
また、中国地域別における汚染による死者数を地図で示された資料によると、もっとも深刻な汚染地区は北西部に集中していると示した。これに対して、中国国家環保総局および衛生部門は世銀に対して、同情報が非常に敏感なものであることから、「社会不安」を引き起こす可能性があるとし、報告の公開を阻止した。
報告では「水、衛生および環境情報の開示は極めて重要である」と示しており、それに対して、中国当局上層部より、さらに厳しい環境法規を制定する文章発表が相次いだことから、北京側が報告書の中でもっとも重要な部分の削除を求めたときに、世銀関係者らが驚愕したという。
結局、正式発表された報告の中に重要な部分は削除されたが、衛生部門スポークスマンは口頭で関連情報を明らかにしたという。
同報告によると、ここ数年間、中国の大気汚染は改善されたが、世界における20箇所のもっとも深刻な汚染地区の内、16箇所が依然として中国にあるという。また、2003年において、58%の中国都市住民は、懸濁微粒子濃度が1平方メートルに百万分の100g以上の大気に晒されており、米国の年平均値の2倍であると指摘した。一方、WHOの基準は1平方メートルに対して、百万分の20g以下である。
ニュージーランドの大気汚染専門家ゲイビン・フィッシャー(Gavin Fisher)氏は「大部分の先進国は数年内にWHOが定められた基準に沿って実行するが、中国がその基準に追いつく場合は、数十年かかる」と指摘した。世銀の報告によると、中国の多くの都市における大気および水源の汚染代償は、中国国民総生産値(GDP)の5・8%に達するという。
米国ABCの報道によると、中国の大気汚染状況は国際オリンピック委員会(The International Olympic Committee)も来年の五輪開催が、選手たちに影響を与えると懸念し始めた。北京政府はそのために、今年8月よりトラック、自家用自動車、公用自動車などの使用制限を図り、大気汚染の改善を図ることにしたという。
一方、中国国家環保総局の退職管理職で、中国側研究チームに所属していた過孝民さんは、報告書の内容について、研究方法の信憑性が低いため、一部の内容は削除されたと示した。過さんは、「これらの情報は公開していない。報告書の量は多すぎることは好まないのだ」とコメントした。しかし、報告書作成に関与した顧問によると、これらの情報は「強制的に」削除されたと指摘した。一方、これらの報道に対して、中国国家環保総局および衛生部はコメントを控えた。
世銀側は、研究に関する最終報告は現在も審議が続いており、近いうちに公開する予定でいると明らかにした。
(記者・郭秋怡)