【大紀元日本7月7日】香港返還10周年を祝う式典は中国共産党(中共)にとって十七大(第17回全国代表大会)の開催前の大イベントであるため、政府関係者たちは様々な方面において周到な準備を行い、特に人事の配置や来賓を迎えるにあたり、これまでよりも高い格式が設けられた。このような極めて重要なイベントに中国共産党上層指導者として香港及びマカオ情勢を直接担当する曾慶紅が香港に現れなかったこと、また同時に、胡錦涛・主席の訪港中に、歴史上規模の最も大きいな集団強制送還事件が発生し、国際社会の注目を浴びたことに、中国の政局動向に詳しい専門家や研究者らは注目している。
直前に香港訪問を取りやめた曾・副主席
中南海(北京政府)上層からの情報によれば、政治局の香港情勢を担当する常任委員として曾慶紅・副主席は、香港返還10周年の重要性を示すために、当初は胡錦涛・主席と同行し香港を訪問する予定だったが、その後、直前に突然香港への訪問を取り消した。
新華通信社の曾副主席に関する最新報道によれば、6月27日曾慶紅は北京首都博物館で開催される「香港特別行政区成立10周年の成果展示会」の開幕式に出席したという。しかし、副主席はその翌日から7月1日の返還10周年式典開催までマスコミに姿を見せず、香港の式典にも出席しなかった。情報筋によると、副主席は香港での集団強制送還を企み、同時に対外的には自身が「(党中央に)退任を求める」とのうわさを広めようとしたという。
強制送還において、当事者たちの暴いた多くの事実から見れば、これは一般的な送還範囲をはるかに超えたものである。職務対応がまじめで丁寧だと評判の高いとされた香港入管職員及び警察関係者たちは一変し、言葉使いや対応が乱暴だけでなく、法輪功学習者に暴力を振るい、強制的に拘束具や担架に縛りつけ、不法拘禁をした。これにより、一部の学習者は負傷した。
現場にいた「希望の声」ラジオ放送の廖淑慧・記者は「入国管理事務所に連行された法輪功学習者は声を出して助けを求めても無駄だった。なぜなら、その裏には黒幕がいるため、職員は何もできないのだ。拘留室に入れられた法輪功学習者はトイレに行くことも許されず、一部の人は体調が悪くなって嘔吐した」と当時の様子を述べた。また、廖記者の話によると、当時香港入国管理事務所の上級警官らしき二人が強制送還の現場を指揮したという。
党内では法輪功問題に関して意見が大きく分岐、首謀者の江派閥は恐慌状態
集団強制送還事件発生後の6月30日、香港法輪大法佛学会スポークスマン簡鴻章氏は、入手した証拠を元に、香港高等裁判所に緊急の違憲審査を申し出て、入国管理局による強制送還の撤回を求めた。しかし、状況は変わっていなかった。裏にいる黒幕の目的ははっきりしており、それは法輪功を挑発することだった。現在までに、法輪功学習者は香港高等裁判所をはじめとする世界18カ国及び地域において、法輪功を弾圧する首謀犯である江沢民・前中共主席、羅幹・中央政法委員会書記及び周永康・北京市公安局長ら三人に対して訴訟を起こした。
法輪功を弾圧する元凶である江沢民、羅幹、李嵐清などへを裁くのを求める法輪功学習者(中央通信社)
曾慶紅は香港集団強制送還事件を謀り、同時に対外には自身が「(党中央に)退任を求めている」とのうわさを広めようとした
胡温(胡錦涛と温家宝)派と江曾(江沢民と曾慶紅)派との権力闘争において、江氏の引退につれ、江派閥勢力が徐々に弱まり、法輪功学習者への迫害が続けられなくなった。胡錦涛・主席も「調和社会」との方針に変更した。また、法輪功を迫害するには国家の4分の1の莫大な財力を費やしてきた。これは、胡温両氏にとって経済を発展し国を治めるにはあまりにも大きすぎる出費となり、法輪功問題は中共にとって財政上悩みの種をなった。一方、法輪功への迫害を担当する、いわゆる「610オフィス」の国家秘密警察組織は国内でも悪名高く、各方面から非難されている。さらに、海外法輪功学習者の人数が急速に増加し、国内の学習者が絶えず真相を伝え続け、『九評共産党』(中国共産党についての九つの評論)が発表された後、各地で中国共産党及び関連組織を脱退する運動が広く展開されてきた。このような背景の下、8年間にもわたる法輪功への弾圧を停止する意見が中共上層部において取り上げられる動きがあるようだ。政権を維持していくために、一日も早く法輪功問題を解決したいとの声に、迫害の首謀者である江派閥勢力は極度に恐れ慌てるように
暴力を振るわれ、強制送還された「希望の声」ラジオ放送の廖淑慧記者(大紀元)
香港入国管理処の警官は法輪功学習者を拘束具と共に担架に縛りつけ、強制送還しようとしている(大紀元)
強制送還された台湾法輪功学習者は、「有効なビザを持っていたにもかかわらず、入国を拒否された」と話した(大紀元)
なったという。
政敵を打撃する江派閥
この8年間において、中南海で起きている権力闘争はすべて法輪功問題を基軸に展開されてきた。江沢民が退任後、江派閥は常に政敵を観察し、打撃した。たとえば、江沢民が引退する際、法輪功への迫害に反対だった李瑞環・前全国政治協商会議主席を共に引退させた。また、近年江派閥のメンバーらは意図的に中国株式市場の混乱を引き起こし、様々な面において経済発展に努める温家宝・首相の足を引っ張った。曾慶紅はかつて、温家宝・首相を失脚させたいと話したことがあるという。今年4月、温首相が訪日する際、中国政府と密接な関連を持つ在日報道機関が温首相の到着する3日前に、在日の中国反体制団体に温首相の訪日の詳しいスケジュールを渡すなど情報を故意にリークした。また、同時に国内において、江派閥は高智晟・弁護士に対する秘密逮捕と迫害を企み、海外民衆に日本にいる温首相に抗議するようと刺激した。
江派閥が温家宝・首相を敵視する理由は、温氏が江派閥が犯した罪に責任を負うつもりはなく、江派閥を見限ったためであるといわれている。これは、江曾両氏に極度な不安を与えた。また、うわさによれば、温氏はこのような「圧力」の下で、引退すると考えていたという。
8年間にわたって法輪功を迫害し多くの命を奪い、償おうとしても償えない罪を犯した江派閥は胡錦涛・主席と温家宝・首相に濡れ衣を着せようとする。(Getty Images)
江派閥の次の目標は胡錦涛・主席だ。曾慶紅はかつて胡錦涛に代わって国家主席の地位を手に入れようと幾たび陰謀を企んだが、すべて失敗に終わった。法輪功学習者が処罰を求めている弾圧及び迫害の主犯リストに胡錦涛、温家宝の名はない。胡が口頭あるいは文書で承諾したにもかかわらず、江派閥は将来ある日、胡が約束を反故し、江派閥と共に法輪功迫害に関する責任を取らなくなることを恐れている。そのため、曾副主席は法輪功問題で犯した罪を、政敵と見なす胡氏にも責任を負わせるよう、胡に対して直接に無実の罪を着せようという戦略に変更した。
胡錦涛氏が口頭あるいは文書で承諾したにもかかわらず、江、曾両氏とはじめとする江派閥は将来ある日胡錦涛氏が反故し、法輪功迫害に関する責任を取らなくなることを恐れている(大紀元)
まず、江派閥は胡錦涛が党内外において思想を統一し、順調に十七大を通り抜けたいとの心理につけいり、胡が江派閥に従うように強要したようだ。6月25日、中国国営新華社は、胡氏が中共中央党校省レベル幹部研修勉強会において述べた「重要演説」を重点に報道した。報道によれば、同研修勉強会にはすべての政治局常任委員が参加し、曾慶紅が司会した。また、胡錦涛は演説の中で、「調和社会」に全く触れず、数回にわたってすでに引退した江沢民氏の「三つの代表」を引用し、また毛沢東氏と_deng_小平氏と並んで、江沢民に言及した。
胡錦涛の「重要演説」は党中央に今回十七大の基本思想とされ、党は全国において「重要演説」の勉強ブームを引き起こし、軍、武装警察、中央各部署及び全国人民に「重要演説」の内容に従うよう要求した。十七大が開催される前に、全党、全軍、全国人民の思想と認識が統一されたように見えた。
しかし、曾慶紅副主席にとって、重要なのは7月1日の香港返還10周年の式典や祝いイベント。香港情勢を直接担当する政治局常任委員の曾副主席が胡主席に同行する予定だった香港訪問を突如取りやめたことによって、胡は人々の注目の的となった。この後に起きた香港歴史上最も大規模な強制送還事件を通じて、一変して胡氏は非難の的となり、国際社会における胡の評価も低下し、責任を負わなければならない唯一の対象となった。これは、胡に罪を着せ、また、胡と法輪功学習者との対立を生じさせるために、曾が国家秘密警察を利用して企てた陰謀だった。
中共上層権力闘争に巻き込まれた香港
曾慶紅は香港の国際的なイメージを損ない、中共が総力で作り上げた「一国二制度」の大成果が打ち砕かれることも惜しまず、また、来年の北京五輪で約束された(報道と人権に関する)「自由保障」に反してまでも、香港で大規模強制送還事件を起こした。この目的は、法輪功を挑発することだった。また、これは胡錦涛に罪を着せ、共に処罰されることを果たすためだった。
これまで中国で発生した多くの大事件は、中共上層指導者の特殊な、異常な心理状態によるものだった。6・4天安門事件に関しては、「_deng_小平を打倒せよ」とのスローガンを耳にした_deng_小平が激怒し、その後武装鎮圧を命令した。法輪功への弾圧も江沢民が人望のあつい法輪功に対し極めて強い嫉妬心を抱いたことから始まった。現在、中共上層で起きている権力闘争も、将来処罰されるのを恐れる江派閥が法輪功問題で犯した罪を逃れるために行われたものだ。
香港人民の利益はこのような権力闘争の渦中にある人々の政治目的と比べて、取るに足らないほどささやかなこととなる。しかし、多くの香港人はそれに気づかず、依然として中共をたたえて、報道機関は中共の顔色を伺い、中共が喜ぶように報道を行い、香港特別行政区政府は中共からの保護を得て世話をしてもらうとの妄想の中で、常に中共の方針に従ってきた。
中共の謀略が暴かれれば、多くの人々は驚き、そして中共の本質を認識できる。政治評論家たちは、これらの専制集権者にとって、香港は一つの駒に過ぎず、中共政権を維持していくために、時機さえ成熟すれば随時に投げ捨てられるという。多くの人の命を奪い、極めて大きな罪を犯した人にとっては、将来どのように処罰を逃れるのかを解決することが第一重要なことになる。
香港集団強制送還事件は、大きな反響を呼んだ。曾慶紅の陰謀が一旦暴露されると、曾が胡錦涛にかけた圧力と辱めが直ちに曾自身に移されるに違いない。その時、中共政治局では徹夜で会議が開かれ、再び論争が始まるだろう。
客観的に見れば、曾慶紅が企んだ今回の香港集団強制送還事件は法輪功問題を再びクローズアップしたが、偶然なことではない。もしかすると、これは世界が法輪功問題について再認識する重要な時期がまもなく到来するのを意味するのではないだろうか。