山東省炭鉱事故:自然災害とする当局に非難高まる

2007/08/25 更新: 2007/08/25

【大紀元日本8月25日】山東省の炭鉱で8月17日に発生した、大雨による洪水が大量に地下採掘場に流れ込み、181人の作業員が行方不明になった事故について、当局が天気予報と洪水警報を無視し、事前の予防措置を講じなかったことが事故原因の一つとの批判が強まる一方、中国当局の政府関係者は8月22日、これまでの見解を貫き、今回の炭鉱事故は自然災害であるとしている。地下採掘場に閉じ込められている181人の作業員の生還は絶望的とみられ、家族らは炭鉱の警備員と衝突を起こした。

中国民政部部長・李学挙氏は8月22日午前中、国務院で記者会見を開き、「今回の炭鉱事故について、専門家チームが分析した結果、自然災害事故であると断定」と公表した。

外国のアナリストは、地方当局の政府関係者と炭鉱側が管理責任から逃れるために、今回の事故が自然災害事故と判定されたのではないかとの見方を示している。さらに、中国当局が自然災害とされる事故の死亡者について、補償あるいはその他の援助規定がないことも問題であると指摘している。

李学挙部長はAP通信の記者の質問に対し、「自然災害で死亡した人について、現在、わが国は補償あるいはその他の資金援助を行わない」と説明すると同時に、「今回の事故は作業中に発生したため、死亡者はその他の自然災害の死亡者と異なる点もある。中国政府と企業は、遺族に扶助金を支給すると思う」と話した。中国メディアの報道によると、中国当局は181人の作業員の家族に一世帯あたり2000元(約3万3千円)の扶助金を支給したという。

「中国労働者観察」(本部・ニューヨーク)の執行主任・李強は、中国当局が山東省の炭鉱事故を自然災害と定めるのは間違っていると指摘。

李強氏は、「李部長の発言は非常に無責任である。周知の通り、炭鉱側は利益を追求するあまり、事前に危険を予測したにも関わらず、採掘作業を中止しなかった。事前に安全予防措置が講じられ、作業員への職業訓練が整っていれば、多くの事故は防げたはず。中国の炭鉱業者は利益に目をくらみ、安全操業を怠り、従業員の安全を無視し、危険な労働環境で操業させるため、炭鉱事故の多発を招いた」と指摘した。

また、中国国内のメディアも、地方政府の関係者が今回の事故を自然災害と結論付けることに、疑問を呈している。中国当局の機関誌「人民日報」の公式サイト「人民ネット」で、「洪水が炭鉱地下採掘場を大量浸入したことの背後に、人為的な要素が潜み、現地政府は、反省しなくてはならない」と指摘する文章が掲載され、以下の疑問を呈した。

「まず、当局の洪水の危険性に対する認識が薄すぎるのではないか。地方政府は、当日現地で発生した暴雨の強さは70年ぶりと強調しているが、いわば、70年前にも、この地区で強い暴雨に見舞われたことがある。事前に洪水被害を防ぐための予防措置を講じ、堤防の強度が十分であれば、洪水が堤防を破堤させ、炭鉱に流れ込む今回の事件は発生しなかったはず」

「人民ネット」が呈したもう一つの疑問は、「中国の気象予報、水利観測などの予報体制は相当整っている。警報を発動するなどの事前予防措置を取らなかったことから、今回の事故の直接原因である暴雨に対する予報は、現地政府が重視しなかったのではなかろうか」ということである。

最後に、「人民ネット」は、「一部の地方政府はいつも自然災害と称して、責任逃れを企み、天災の裏に潜む人為的な要因を探ろうとしない。行政責任の追及や、関連の対応体制の修正・完備は、なおさら論外で不可能だ。このような体制により、多くの地区で、天災が年々増加し、住民が被害を受け続けている」と非難した。

中国当局が公表した資料によると、中国で年間6千人以上の炭鉱労働者は炭鉱事故で死亡したという。米国VOAは、「その数字は、世界のほかの国家での炭鉱事故死亡者数の合計の4倍に達する。採掘量百トン当たりの死亡率について、中国は米国の100倍、インドの13倍。多くの中国専門家は、中国で炭鉱事故が多発する原因は、天災ではなく、人災であると指摘している。中国の炭鉱業は、世界で最も危険な職業である」と報じた。

前出の「中国労働者観察」の執行主任・李強氏は、NGO団体の働きをもっと拡大させるべきであると中国当局に呼びかけた。

李強氏は、「このような危険の炭鉱を閉鎖すべき。NGO団体が中国の炭鉱の安全操業に関わることを許すべき。多くの炭鉱業者は、政府幹部と結託している。政府に頼って、炭鉱の安全操業を監督・管理しているようでは、炭鉱事故の発生を根底から防ぐことができない」と提言した。

報道によると、山東省の炭鉱事件の現場で、水の汲み取り作業が続けられているが、8月17日から、地下に閉じ込められた181人の作業員の生存は絶望的とみられ、地上で消息を待ち続けている家族は、炭鉱の管理者と衝突を起こしたという。AP通信の報道によると、武装警察は8月22日から、炭鉱に配備されたという。

(記者・叶子総合報道)

 

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