【大紀元日本10月19日】シドニーAPEC首脳会議の期間中に、カナダの国際人権派弁護士デービット・マタス(David Matas)氏は豪州を訪れ、非政府組織「自由中国」が主催する公開フォーラムに参加した。カナダ政府元閣僚のデービッド・キルガー氏とともに、中国で起きている法輪功学習者を狙った臓器狩り事件の告発を検証し、「紛れもない事実」と断定、この前代未聞の組織的な臓器狩り事件を中国政府にやめさせるために、世界各地で訴えている。そのマタス氏の横顔に迫ってみた。
小柄で控えめなマタス氏は、今年64歳のユダヤ人。社会の弱者層を熱心に支援する活動家でもある。
「幼少のときから、私はジェノサイドに強い衝撃を受けた。そのため、なにか出来ることはないかと考え始めた。人権問題に触れることは、そのルートを提供してくれた」と本人は語る。
オックスフォード大学の出身であるマタス氏は、過去40年間、コロンビア人、トルコ在住のクルド人、ナイジェリア人などの人権のために尽力してきた。昨年からは、中国当局による法輪功修煉者への弾圧を阻止するために、各国政府関係者に遊説してきた。彼は、「私がずっと成し遂げようとしているのは、ジェノサイドから教訓を見い出し、その被害者に当てはめること」と述べた。
この小柄なユダヤ人は、なぜ、数百万人の中国人の人権を守る任務を遂行しているのかと質問してみた。同氏の答えはとても簡単だ、「我々は同じ人類であるからだ」。
同氏は、「もし、このこと(法輪功への弾圧)がもっと伝統的な被害者集団、例えば、ユダヤ人あるいは黒人に対するものであれば、恐らく、人々はすぐ反対の意向を示すはず」と指摘、「しかし、自分たちがよく知らない集団が差別を受けていることに対し、人々が示した無関心に、私は非常に驚いた」と語った。
スウェーデンのマルメ市でのグローバル人権聖火リレーの式典で、法輪功への弾圧中止を訴えるマタス氏(大紀元)
マタス氏は2006年、カナダの団体から、宗教、民族を越えた活動が評価され、「2007年偉大な人物」と選らばれた。
去年、同氏は40数カ国を周遊し、多くの政治家と会談してきた。欧州や、南米、豪州のメディアとも、頻繁に交流を行った。
彼の目標は、中国当局による生きた法輪功修煉者からの臓器強制摘出を制止すること。カナダ政府の元閣僚で、長年来の友人であるデービット・キルガー(ーDavid Kilgour)と共同で、上記の臓器摘出問題に関する独立調査報告書を作成し、中国当局によるこの犯罪は、「新しい形態の邪悪」と評した。
新たな証拠を盛り込んだ「血まみれの臓器摘出ー-中国の法輪功修煉者が生きたままで臓器を強制摘出されるとの告発に関する報告書」(ネット版:http://organharvestinvestigation.net)が今年1月に公表された。
報告書の初版は、数ヶ月の調査を経て完成された。調査員が臓器移植患者に扮して、中国の病院に電話調査を行ったり、多くの情報提供者と面談を繰り返したりし、両者は以下の結論を出した。「大勢の法輪功修煉者は殺害され、あるいは殺害されようとしている。目的は彼らの臓器を摘出し、移植用に売買する」。報告書には30数件の証拠が詳細に記載されている。中国当局はこれらの証拠に反駁できないでいる。
マタス氏は、自分は法輪功修煉者ではないし、ユダヤ人であることに強い誇りを持っていると述べ、中国で最低限の信教の自由がないことに強い怒りを感じたと語り、「私にとって、迫害されているのはだれであるかは重要ではない。彼らは思想・信条の自由を有し、自由にやれるはずだ。自分の思想を信じる自由を有するべき」と説明した。
9月8日、シドニーでのAPEC首脳会議の期間中に、アムネスティ・インターナショナルは市内で大規模な抗議集会を開いた。多くの団体が招かれ、臓器強制摘出の調査報告書の作者、マタス氏とキルガ氏は集会でスピーチした。
マタス氏は、「いかなるその他の目的も持たずに、気功の動作を行い、座禅をしげいるだけの罪のない人々を、なぜ、中国当局は弾圧しているのか」と問題を提起し、以下のように自ら答えを出した。「被害者に原因があるではなく、加害者が諸悪の根源だ」
反ユダヤ主義を理解するには、反ユダヤ勢力に着眼すべきで、ユダヤ人に問題を探るべきではないと、同氏は指摘する。「法輪功への弾圧を理解するには、法輪功を知る必要はあまりない、実行する中国共産党を正確に評価しなくてはならない」。
マタス氏は、中国人はこの弾圧の残酷性を認識していないことに強く驚いていると話し、「今年7月までに、中国の病院は自分のサイトで、臓器移植の待機時間は非常に短いと宣伝していた。ある中国国際臓器移植センターのサイトでは、1週間以内に適合する移植用腎臓を見つかる、最長の待機時間は1ヶ月、と記載していた。欧米国家では、同様の臓器を見つかるのに、通常では数年間待たなくてはならない」と指摘した。
マタス氏などが作成した調査報告書では、調査員が国外の移植患者に扮した電話調査の内容を盛り込んだ。広州市の軍の病院の朱(音読)博士は2006年4月の電話調査で、「数人の法輪功修煉者の腎臓は、運送の最中」「我々は若くて、健康な腎臓を選んでいる」などと調査員にアピールした。
マタス氏は、「法輪功修煉者からの臓器強制摘出、その問題が存在しているため、中国当局には2008年オリンピックを開催する資格はないと、力強く言える」と述べ、法輪功のための戦いは、臓器強制摘出問題に留まることがないと指摘、「私は法輪功への弾圧の中止を待っている。そのほかにも、中国共産党による中国での統治の終結、世界におけるすべての人権侵害行為の終焉を待ち望んでいる・・・」と語った。