【大紀元日本12月14日】米情報委員会が12月3日に公布した報告は世界を驚かせ、各界の注目を集めた。18ヶ月にわたり作成された140ページの報告は、中央情報局を含む16の米情報機構の見解を綜合し、「イランは早くも2003年に核兵器のプロジェクトを停止していた」の結論を出した。
報告が公布されてから、米国内外では議論が沸き返った。「ニューヨーク・タイムズ」紙は、この報告はブッシュ大統領の外交政策に対して、大きい衝撃になるのだろうとし、少なくとも、予測可能の未来において、米の対イランへの武力行使の可能性は減少したと報道した。「ワシントン・ポスト」紙は、この報告はブッシュ大統領の対テヘラン政策に重大な打撃を与えたと評した。一方、イランは即座に米に対して賠償を求めた。中国側のメディアも大げさに伝えながら腹の中で笑っているような感じだ。中国石油化工集団(シノペック)および中国石油集団(ペトロチャイナ)はイランと新たに大型の石油・天然ガスの売買契約を結んだ。
表面上は、今回の結論はこれまでにブッシュ大統領が頻繁に出してきたイランの核兵器所有という警告と矛盾している。10月、ブッシュ大統領はイランの核兵器所有が第3次世界大戦を引き起こす可能性があると発表したばかりである。これに対して、米国家安全顧問・ハドリー氏は報告書を発表した3日夜、ホワイトハウスは11月末にこの報告を初めて知ったことを明らかにし、ブッシュ大統領も4日に、報告書はイランの核兵器プロジェクトの存在を証明しており、ただプロジェクトが停止しているに過ぎず、将来は再開する可能性があると強調した。
イランは核兵器を有する脅威が存在するのか。実際、報告では、イランは濃縮ウランの抽出は依然として行っており、核兵器計画を再開するのであれば、2010年から2015年の間に研究開発が完成するのだろうと指摘している。こうした意味から、ブッシュ大統領の解釈は間違ってはいないが、米の対イラン武力行使の必要性は疑問視される。
報告の一部内容は2006年に提示されたが、最新情報は2007年2月にトルコへ逃亡した前イラン国防省副長官によるものだ。これによると、米情報委員会は今年12月までの10ヶ月間に、いつでもこの報告を発表することができた。従って、この時期を選択し、報告を発表したことは深い原因があると考えられる。
先ず、①米情報部門はイラク戦争時に発生した誤報からの教訓によって、すべてにおいて、事実に基づいて行動する姿勢を持つようになっているからである。②中東和平交渉は11月末に初めて成果が出てきた、それはブッシュ大統領にとって引退する前にもっとも可能性の高い外交成果とみられており、イラン戦争によって台無しになるのをブッシュ大統領が嫌がっている。③外交手段によってイランの核兵器問題を解決する声が高いことから、この時期にイラン戦争を行うと、共和党の選挙にとって不利だからである。
しかし、根本的な原因とは、米戦略の関心目標は東へ移ったからである。米は中国が東アジアで重大危機を引き起こしたときに、イラン戦争のことでけん制されたくないからだ。2001年、米国は「同時に2つの主要戦争を勝ち取る」戦略を「1つ半の戦争を勝ち取る」に調整した。すなわち、主要地区の戦争で「決定的勝利を獲得する」と同時に、十分な能力を保って米領土の保護およびその他の地区における小規模の軍事行動という3つの任務である。
イランで長期にわたる戦争を起こすことは新しい戦略原則に反することになる。ブッシュ政府は東アジアの状況を考慮した可能性がある。すなわち、①中共軍の台湾侵攻による台湾海峡危機の発生。この可能性はこのほど発生したキティホーク空母事件で再び重視された。②中国共産党政権の崩壊で発生する連鎖の危機。米シンクタンクおよび情報部門は、中国内部の大規模の脱党や、上層部における内争、民間の人権擁護の動き、「公開状」の相次ぐ発表などの状況を観察・分析している。ブッシュ政府は中国で激変が起きるときの対応方法を考慮せざるを得ないのである。
従って、今回の情報評価はブッシュ大統領をイメージ・ダウンさせたというよりは、大統領に米国の重視すべき点を明示し、イラン政策の調整によって保てなかった体面の挽回にも助けとなったのである。