フランス紙:「温総理の懺悔録」

2010/05/27 更新: 2010/05/27

【大紀元日本5月27日】歴史を借りて現在のことを隠喩する。本音が言えない中国の政治家らはよくこの「借古諷今」(昔のことを現代に投影して風刺する)の手法で現実を語る。先月、話題となった温家宝総理が中国共産党機関誌『人民日報』で発表した胡耀邦・前総書記を追悼する長文は、多くの中国政治状況ウォッチャーを驚かせた。2012年の政権交代のために中国共産党指導部の内部闘争が炎上するこの時期に、中国のトップ指導者が89年の学生民主運動のきっかけとなったこの改革派人物を追憶する心情を公に語ることは極めて異例だ。背後に隠れたメッセージをどのように読み取ればいいのか。フランス紙『フィガロ』は最近、「中国の権力開放」と題した記事を載せ、温総理の文章についての所見を述べた。

「中国の現役の総理が執筆した文章は、どの国の総理の文章よりも読むに値するものである」。グランジ(A.de La Grange)記者は、温家宝の長文を「まるで一通の懺悔録のようなもので、ところどころに感情がほとばしっている」と書き綴る。

同記事によると、共産党の指導者たちが、口頭または文章を通して自分の観点や自分の精神性などを公開することはめったにない。温家宝首相は、深刻な災害に遭った南方を視察したことにより、過去のことを思い出し、元総書記・胡耀邦を追悼する文章を執筆した。この自然災害により、1986年、貴州で災害視察をした胡氏のことに思いを馳せることとなったのである。

昔日、改革派といわれる胡耀邦・元総書記は、経済開放と同時に「政治開放」も主張した。そのため、彼は1987年に職を解任された。1989年4月15日に、胡耀邦氏が逝去したことで、学生運動が大規模なものとなり、軍隊を出動しての共産党政権にほる残酷な弾圧に至った。これが1989年の「天安門事件」である。

温家宝総理は文中、胡氏を「師匠」として思い出し、彼のことを非常に懐かしく思っているという。本文ではまた、胡耀邦が失脚した後でも、温家宝は続けて彼を見舞いに行き、今でも毎年の旧正月にきまって胡耀邦の遺族たちを見舞いに行くと語っている。

グランジ記者によると、温総理がこの文で暗示しているのは、今の共産党の幹部には、必ずしもこのような素質があるわけではない言えない、ということである。

この文は、大きな反響を呼んでいる。中共政権および中国の現状を厳しく批判する人々まで、温家宝の文章を絶賛している。胡耀邦の前秘書・鮑彤氏も、温家宝のこの文章の発表は通常ではないと捉え、温家宝は「ある重要な態度表明をし、ある素晴らしいメッセージを打ち出した」と指摘している。

胡錦涛総書記の了承を得ずに、温家宝が党の機関紙でこのような文章を掲載することができるのかと、人々は固唾を飲んで見守っている。

グランジ記者は、温家宝の文を中共の政治改革に立ち返る信号と見ることは妥当ではないとしている。2012年に、中共政権は人事交代するが、このようなデリケートな時期に「政治開放を行う可能性は極めて低いかほぼ不可能。政治開放は中共にとって、潜在的リスクが巨大だからだ」と見解する。温家宝の文章は、せいぜい、党内とインテリ層の不満を減らすためのものにすぎないとし、亡くなった胡耀邦氏と現職総書記の胡錦涛はともに団派(中国共産主義青年団)の出身であることを強調し、次期中共の権力争いを示唆している可能性もあると指摘している。

「温家宝の個人的な打算が潜んでいるかもしれない。今の時代における中共内部の最も開放的な指導者であるというイメージ作りとも受け止められる」と同記者は結んでいる。

(翻訳編集・小林)
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