【大紀元日本6月4日】5月28日、中国政府ファンド・中国投資(CIC)の高西慶社長は中国国内メディアに対して、「中国投資はユーロの不安定による市場短期変動に関心を払っている。しかし、ヨーロッパで発生した主権債務危機で中国投資のヨーロッパへの投資政策を変えることはしない」とやや矛盾した発言をした。CICの所有するユーロ建て資産の損失を最小限に抑えるために取らざるを得ない対策と見られている。
5月28日ロイター通信の報道によると、ユーロの大幅な下落と共に、帳簿上の中国外貨準備高の評価損は過去三ヶ月で500億ドルに達した。約2兆4500億ドルの外貨準備高を保有する中国にとって、この全体の2%を占める評価損は受け入れられる範囲内にあるという。
同時期、スタンダードチャータード銀行が研究報告で、中国が保有するユーロ建て資産は総資産の25%を占め、近日の為替レートの変動だけで350億ドルの損失を蒙ったと発表した。
ユーロの先行きについて、モルガン・スタンレーの為替ストラテジストであるスティーブン・ハル(Stephen Hull)氏は「現在のユーロ/ドル為替レートはすでに1ユーロ=1・25ドル台を割った。今年の下半期、ユーロが更に下落する傾向があり、底値の1ユーロ=1・12ドルを打ってから上昇基調に戻るだろう」と予測した。
ユーロの下落による損失を最小限にするため、中国政府は所有するユーロ圏国債を含むユーロ建て資産を見直すのではないかと、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙が5月26日に報道した。この影響を受け、市場ではユーロの下落が加速するではとの思惑が広がり、当日のニューヨーク市場でユーロの投売りが殺到した。
その後、28日、中国国家外貨管理局(SAFE)はウェブサイトにおいて、SAFEが保有するユーロ建て資産を見直すとの報道はまったく事実無根であると声明を出した。SAFEが保有するユーロ建て資産の更なる損失を避けるための措置と見られる。
また、中国社会科学院世界経済政治研究所の研究員である張斌氏は「中国政府は今まで外貨投資において、リスクを回避するため分散化を堅持してきた。最近の市場の短期変動で投資分散化という長期戦略を放棄するわけにはいかないだろう」とコメントした。
SAFEの声明を受けて国際金融市場の不安は緩和され、5月27日、ユーロ/ドルは、1ユーロ=1・21ドル半ばから1・23ドル後半まで回復した。
UBS銀行の為替ストラテジストであるマンスール・モヒーウディン(Mansoor Mohi-uddin)氏は「SAFEの発言は外貨市場の不安を一時的に沈静化させたが、これからアジア諸国が保有するユーロを売却しなくてもユーロが下がるだろう。なぜなら、もしアジア諸国が米ドル建て資産の保有比率を上げようとするならば、ユーロの保有比率を必然的に減らさなければならず、これはユーロの下落を加速させるに違いない」とコメント。