【大紀元日本6月17日】ギリシャの債務危機の拡大を懸念して、ギリシャ離れを急ぐ投資者らとは逆に、中国マネーはギリシャに目を向けた。15日、ギリシャ訪問中の中国の張徳江副首相は、パパンドレウ首相とアテネで会談し、同国の海運、造船、空港、不動産や通信など計14事業に、中国から数十億ユーロ相当の投資を行うとの合意を締結した。
債務の返済と経済の立て直しに取り組むギリシャ政府は、投資優遇策を提示し、海外からの投資を積極的に呼び掛けていた。「中国はヨーロッパに進入するトンネルを狙っている。きっと実質的にギリシャの経済の助けとなる」と、パンガロス副首相は中国からの投資を望む。
一方、中国にとっては、ギリシャの資産価格の下落に加え、ヨーロッパから北アフリカにまたがる地域の消費者と直結する玄関口として、ギリシャと関係強化を図るチャンスだとみられる。
中国資本の一連のプロジェクトの先駆けとして位置づけられるのは、地中海に位置するギリシャのピレウス港の整備建設プロジェクト。9日のワシントン・ポストによると、中国海運大手の遠洋運輸集団(COSCO)はピレウス港のコンテナ埠頭の使用権を34億ユーロで獲得し、その見返りとして、新たな岸壁の建設や埠頭の改良に7億ドルを投資することを約束したという。
さらに、同社は今年後半、アテネ近郊に1億5千万~2億ユーロをかけて、ギリシャ国営の港湾運営会社と共同で物流施設を建設する予定。これは中国向け貨物を取り扱うバルカン地域での物流基地となる。
「鷹の巣を作れば鷹が自ら飛んでくる。私たちはすでにここに鳥の巣を作ったので、多くの中国の投資家を惹きつけるだろう」とギリシャ投資の合意に関わった中国のある高官が話す。
かつて中国と地中海世界を結ぶ歴史的な交易路「シルクロード」。アナリストによると、中国からギリシャへの多額投資は現代版シルクロードの一部。アフリカのアンゴラから南米のペルーまで、中国はすでに海外の多くの国に数十億ドルを投資している。港湾施設のほか、道路網、パイプライン、鉄道網などを築き、中国の輸出製品が制約されないように、世界の貿易を制覇する現代版「シルクロード」を計画している。
一方、中国マネーの進入に不安を感じる人々もいる。ピレウス港に大量の中国人労働者が到来することに対し、港の従業員らは数カ月もストライキを行っている。中国側は、工事請負会社を従業員20人以下の会社にすることで労組の設立を避けようとしていると、労働組合側は不満を持っている。
ギリシャ埠頭労働者組合のリーダー、ウラフィスさんは、「ギリシャ政府は国家の主権を売り出しただけでなく、労働者さえも売ってしまった」と不満を洩らし、廉価な中国人労働者の到来によって失業の危機に晒される500人の埠頭従業員の将来を憂慮している。