【大紀元日本6月19日】中国紙「環球時報」の英語版「グローバル・タイムズ」は16日と17日の2回にわたって、60年前の朝鮮戦争勃発の原因と一部始終を分析するインタビュー記事を掲載した。同戦争はスターリンの謀略のもとで、金日成が起こし、毛沢東を巻き込んだという見解を示した。
これまで、朝鮮戦争は「帝国主義」の米国とそれに結びついた韓国が北朝鮮に侵略して引き起こした、と中国は宣伝してきた。朝鮮戦争の原因はソ連と北朝鮮にあるとの報道は、中国メディアでは極めて異例の論調である。
インタビューに答えたのは、中国ソ連問題専門家で、華東師範大学の沈志華(シェン・ジホア)教授。沈教授は、旧ソ連崩壊後に公開された機密文書を基に朝鮮戦争が起きた原因を研究してきた学者として知られ、著書に『毛沢東、スターリンと朝鮮戦争』がある。
沈教授によると、金日成はかつてから武力で南北統一を狙っていたが、同じ共産主義陣営のスターリンと毛沢東の許可と支援が不可欠だった。
一方、アメリカとの更なる関係の悪化を避けたかったスターリンは、金日成の南侵案を最初は認めなかった。しかし、1949年の中国共産党政権の成立により、旧満州の鉄道所有権、大連・旅順港の30年租借権を放棄しなければならない状況に立たされたスターリンは、金日成の南侵計画を再考しはじめたと沈教授は分析した。
朝鮮戦争に勝てば、太平洋に通じる不凍港を持つ朝鮮半島に親ソ政権を打ち立てられるだけでなく、極東アジアに足がかりを確保することもできると気付いたスターリンは、翌1950年1月に突然南侵支持へと態度を変えたという。
スターリンは同年4月に金日成をモスクワに呼び、秘密会談を行い、北朝鮮の南侵計画を認めた。この会談で金日成は「戦争が起きてもアメリカは介入しない、或いは介入できないはずだ」とスターリンを説得し、スターリンもそれに納得したという。
スターリンはこの会談で金日成に、毛沢東の同意も求めるように要求し、万が一アメリカが参戦した場合、ソ連は参戦せず、中国にその軍事介入の責任を押し付けようとしたと沈教授は指摘する。
こうして、翌月5月13日に金日成は北京を訪れ、スターリンが南侵に同意したと中国側に伝えた。不審に思った毛沢東は中国駐在のソ連大使を通じ、スターリンの真意を確かめた。さらに、アメリカ軍が参戦した場合は、中国への脅威にもなりかねないと考えた毛沢東は、北朝鮮を支援する中国軍を送ることにも同意した。
そして、6月25日に朝鮮戦争が勃発。その2日後に、米軍は金日成とスターリンの予想に反し、素早く参戦した。アメリカはそれまでは静観の姿勢を取っていたが、ソ連・中国連盟の確立に刺激され、共産主義陣営の拡大を食い止める姿勢へと転じたと、沈教授は分析した。