【大紀元日本6月28日】地方政府の負債、特に地方政府系融資プラットホームの負債急増問題を解決するために、5月26日、国務院常務会議(日本の閣議に相当)が開かれ、地方政府融資プラットホーム企業への監督管理の強化について調整措置を発表した。6月7日付中国経済週刊誌「新世紀」が報じた。
EU圏発の公的債務問題で世界金融不安が拡大する中、地方債務問題の解決は中国にとっても重要な課題となっている。中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は4月20日に開催した「2010年第2四半期経済金融情勢分析報告会」において、09年末時点の地方政府系融資プラットホームの負債総額が7.38兆元(約99兆6300億円)に達し、前年同期比で70.4%と急増したと示した。また、米金融大手のゴールドマン・サックスの最新研究レポートによると、09年末時点の中国地方政府の負債と融資プラットホームの負債合計は約7.8兆元で国内総生産(GDP)の23%を占めているという。
5月26日に発表された調整措置は、4つの規制を規定した。▼地方政府系融資プラットホーム企業の債務を明白に把握・整理・確認し、適切に処理する。▼地方政府が設立した融資プラットホーム企業を分類し、規範化しなければならなく、その機能を明白に区分し、運営を規範に適合させる。▼融資プラットホーム企業の融資及び銀行などの金融機関の貸出しに対して管理を強化する。▼地方政府の担保・承諾に関する違反行為を厳しく禁じる。
地方政府の負債総額、未だ不明
一方、地方政府融資プラットホームへの分類整理に関しては、大きな難題に直面している。中央政府は地方政府の総負債規模を正確には把握しておらず、地方政府の融資プラットホームについての定義及び統計方法も一致していないという。
銀監会が発表した地方政府の負債総額が7.38兆元との結果は、各金融機関が地方政府融資プラットホームについて定義、または融資の審査基準が一致していないという状況の下で得たもので、地方政府の正確な負債総額について未だに不明である。
「新世紀」によると、過去から保有する外国政府及び国際金融機関などの融資や借入を含む負債以外に、2009年以来地方政府の新たに増えた負債には、主に財政部が代行して発行した地方債、融資プラットホームの銀行からの借入及び城投債(※)、ミディアムタームノート、短期債がある。しかし、その中の多くは、地方政府が担保あるいは承諾の形で保有されている隠れた負債だという。
地方政府融資プラットホームと地方政府との関係
地方政府系融資プラットホーム企業が発行する城投債の格付けに関して、その企業の財務指標をチェックすることは大事ではなく、その企業が当の地方政府との関係が如何に良いのかが最も重要なポイントとなってくると、国内格付会社鵬元資信評估公司の周沅帆氏が「新世紀」誌に対して述べた。
それらの融資返済及び満期となった城投債の元本償還に充てる資金の第一出所は地方政府から提供されている補助金である「財政補貼」だ。また、一部の融資プラットホーム企業が債務の信用リスクを減らすため、連帯責任保証人を他の地方政府が出資する企業に委託している。
周沅帆氏は、一般的な企業債と同様に、城投債を格付するときに償還能力及び償還意欲を考慮しなければならないが、現在は償還意欲の有無が多少は償還能力よりも重要であると指摘する。地方政府と融資プラットホーム企業との関係が良くて、または近ければ、万が一問題が発生した場合、地方政府がそれらの企業の融資返済及び城投債の元本償還に対する対応がより丁寧になるという。
地方政府の債務はブラックホールである
中国国内地方政府の負債総額がどのくらいあるのか、または、地方政府がこれらの債務に対して返済意欲があるのかないのかについて、はっきり見えてこないとの状況に対して、国内の金融市場関係者らは非常に懸念しており、地方政府の債務はブラックホールのようだと警戒している。
銀監会の関係者によると、現在融資プラットホーム企業の平均負債率は97.8%で、すでに90%~120%の国際警戒範囲に入っている。一部の都市の政府系融資ブラットホーム企業の負債率はすでに200%を超えたという。「新世紀」によると、2009年7月末時点、天津市の負債率は300%を超えたという。
地方政府が債務返済に充当する資金は可処分財政収入からどのくらいを拠出しているのかが分からないのも問題だ。地方政府の可処分財政収入から社会保険、医療及び教育などの必要な支出を除くと、残りの資金の多くは地方経済の発展に当てているが、債務返済に充当する資金の具体的な数字は毎年発布される地方政府の予算報告では見つけることができないのが現状だ。
また、新任地方政府のトップが前任が残した債務を履行しないというリスクを防ぐために、銀監会は銀行業関係者に、地方政府の関連責任者が任期内に債務返済するように促すよう命じた。
資金不足に悩まされる地方政府
地方政府の財政収入の多く、または地方政府の融資プラットホーム企業の債務に対する担保あるいは抵当は、土地譲渡収入に頼っている。負債急増と財政収入激減の状況の中、土地価値の上昇を願っている地方政府は、4月から始動した不動産価格抑制政策に不意を突かれた。
中国の地方政府は長い間、経済発展の資金不足に悩まされている。地方政府が主要な資金調達手段とする融資プラットホーム企業への厳しい監督管理措置は、地方政府からの反発を招くのではないかとの声があがっている。ある省政府関係者は「新世紀」に対して、リスク管理を強調し、融資プラットホーム企業への監督管理、規範化を強化すればするほど、地方政府はかえってそれらの負債を隠す傾向にある、と述べた。
地方政府の債務急増問題を解決するには、融資プラットホーム企業への監督管理を強化するほかに、地方政府の長期的な資金調達問題を解決すると同時に、負債総額を明確にし、年間の地方政府予算案に、融資プラットホーム企業が実際に地方政府が行う公的サービスへの投資を明記し、城投債などの地方政府関連債券に関して情報公開するなど、地方政府の債務返済意欲を向上すべきとあげられている。
※城投債:「準市政債」とも呼ばれる。地方債券の一種で、地方都市のインフラ建設及び公的施設建設のために、都市投資関連企業が公開発行する企業債及びミディアムタームノート(MTN)である。