ワシントン・ポスト社説:中国人権弁護士・高智晟氏の失踪に行動を

2010/07/11 更新: 2010/07/11

【大紀元日本7月11日】一人の人間が失踪している。耐え難い拷問に曝され、肉体は壊され容貌も変形した。自分の信念を放棄し、党(中国共産党)への忠誠を示さない限り、死の危険に脅かされる。

上の記述は、ジョージ・オーウェルの著書からの引用ではなく、7月6日の米紙「ワシントン・ポスト」の社説の冒頭で書かれたもの。中国人権弁護士・高智晟氏の失踪に、オバマ政権は即座に行動を起こすよう促している。同社説では、「人権の議題は米中関係を邪魔してはならない」というヒラリー・クリントンの昨年の言葉を「悲惨な発言」と批判。近く実現する中国胡錦涛国家主席の米国訪問に際して、人権団体と高弁護士案件が、両国関係を「邪魔」する機会が与えられるよう、オバマ大統領に訴える。

昨年、中国政府に強制連行されて以来、1年余り行方不明になっていた人権弁護士高智晟氏(44)が、今年3月に釈放されて間もなく、再び行方不明になっている。親族の問い合わせに対し、中国警察当局はその身柄を預かっていないとし、状況は知らないと回答している。

高弁護士のストーリーはまさに奇跡である。中学の教育を受けただけで、独学で法律を勉強し、中国でトップ10の弁護士になった。これまで、社会的に弱い立場にいる人々の無料弁護を引き受け正義を追求したことで、中国全土にその名を知られていた。更に、中国当局から最もタブー視されている法輪功学習者への弁護も引き受けた。

2005年から、中国政府に集団弾圧されている法輪功について、3度にわたり最高指導部に公開嘆願書を提出し、弾圧の違法性と残虐性を訴え、弾圧停止を呼びかけた。それに対し中国政府は、同弁護士の法律事務所を強制的に閉鎖し、2006年には、「国家政権転覆扇動罪」で、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。同氏は仮釈放後、獄中で受けた様々な拷問を公開し、米国政府に中国人権問題への関心を呼びかける請願書を送った。

その直後の昨年2月、同弁護士は故郷・陝北省の親族の家で警察当局に強制連行され、それ以降行方不明になった。家族が警察当局に再三問いただした結果、「迷子になって戻ってこられなくなった」との説明が返ってきた。このため、同氏はすでに死亡したのではないかとも懸念されていた。その後、中国外交部の報道官は、定例記者会見で同氏の所在を聞かれた際に、「彼は然るべきところにいる」と回答した。

今年3月末、同氏は初めて外部に電話連絡し、4月6日には北京の自宅に戻った。そして、同氏が行方不明の1年余りの間、北京や新疆、山西省で転々と監禁されていたことが明らかになった。釈放後、同氏は人権活動から身を引くことを表明し、外部との踏み込んだ交流を避けるようになった。

最近、同氏が再び行方不明になったことが明らかになった。親族の証言によると、4月15日、同氏は北京から新疆ウルムチ市在住の義父を訪ねて、1週間の滞在後、4月20日に北京に戻った。しかし、それ以降、再び行方不明になった。

警察当局は親族の問い合わせについて、同氏の身柄は預かっていない、この一件については、何も知らないと説明している。

高智晟氏の友人・李和平弁護士は4月末、頻繁に同氏の北京の自宅を訪れたが、その姿がどこにも見当たらなかったという。「大勢の人々が注目している高智晟氏が突然行方不明になった。天下の笑い話だ。これは一般的な犯罪行為ではなく、政府による組織的な犯罪だ」と李和平弁護士は義憤を隠せなかった。

中国の人権弁護士を支援する香港の民間団体の代表・何俊仁氏によると、1年余り行方不明だった高智晟氏が3月に釈放されたのは、当時、中国を訪問していた英国の外務大臣が中国政府に対して同氏の関心を示したためである。当時、高智晟氏の死亡説が飛び交っていた。何俊仁氏は、「そのような状況において、同氏がまだ生きていることを示すため、中国政府は彼を一時的に釈放したのではないか」と分析している。

しかし、高弁護士は著名人であるがゆえに失踪が明るみに出たが、中国の「闇の刑務所」や労働キャンプに閉じ込められた40万人の囚人たちのストーリーは大衆に知られていない。一人一人の中国人権弁護士が法律を守ろうとする努力は、民主社会を築く過程であり、米政府はそれを応援すべきだと、ワシントン・ポストは呼びかける。

「法律は尊重され、中国共産党リーダーらの気まぐれに振り回されることなく、市民は政府に対して発言権を持ち、その権利は自政府に守られていると信じること。こうなれば、中国の個人や企業は、一大飛躍」を可能にするとワシントン・ポストは、社説の結論として締めくくっている。

(翻訳編集・叶子)
関連特集: