「中国は日米独より高い」 中国基準の国家信用格付け、初公表 国内紙は弱気「自己満足か」

2010/07/15 更新: 2010/07/15

【大紀元日本7月15日】中格付け会社「大公国際資信評価」が11日、世界50カ国の信用格付けを公表した。欧米の格付けシステムと異なる視点と基準を採用して、中国の信用度を米国や日本、ドイツなどより上位にランク付けた。12日、中国の各メディアがこれを「(中国は)国際信用評価の舞台に上がった」と大きく報道し、非欧米国家の格付け会社が初めて、世界向けに国家信用度の格付けを公表したことで、国内外から注目を集めている。

中国スタンダードの評価システム

今回の公表について、大公国際は、ムーディーズなど欧米の格付け大手3社による「独占」を打破したい、「世界金融市場で中国の発言権を確立したい」と説明、「欧米を中心とする現行の評価体系は、世界的な金融危機と欧州の債務危機に関する悲観論を誘発した」と批判している。

大公国際のこの報告書は世界50カ国を対象としている。内訳は、欧州20カ国、アジア17カ国、北米2カ国、南米6カ国、アフリカ3カ国、大洋州2カ国となっており、合計のGDPは世界経済の9割を占める。インドネシアやブラジルのような新興経済国への評価は欧米の格付け機関より高いが、米、英、仏などの先進国への評価は欧米の格付け機関より低くなっている。

同公表では、中国の外貨建て信用格付けに最高ランクの「AAA」、自国通貨建て格付けに上から2番目の「AAプラス」を付与し、10位とした。一方、欧米の格付け大手が最上級に位置付ける米国の外貨建てと自国通貨をいずれも3番目の「AA」とし、13位とした。日本に対する評価は、外貨を3番目の「AA」、国内通貨をその一段下の「AA-」とし、15位と位置付けた。

大公国際の理事長兼総裁の関建中氏はメディアに対して、不合理な国際評価体系に挑戦し、現実的かつ公正な評価体系を築こうとしていると話した。

国内紙:自己満足にならないように

一方、「日米独より中国の信用度が高い」とするこの公表結果に、中国国内のネット利用者は「信用できない」と疑問を呈しているほか、中国国内紙の解説記事でも、「自己満足と疑われがちだが、発展途上国家としての初のトライアルなので大目に見てほしい」と弱気の論調である。

経済紙「国際金融報」は12日、「中国機関の初の国家信用格付け報告、自己満足と疑われる」と題する記事で、上海復旦大学経済学院副院長の孫立堅氏の話を引用して、「大公国際の国際社会での信用度はともかく、この一歩を踏み出したこと自体は意義のあるトライアルだ」と報道した。

「もちろん、その第一歩は間違いではない。しかし、自己満足にならないように気をつけるべきだ」と孫氏は指摘する。

また、報告書を出した背景について、「ムーディーズ、スタンダード&プアーズ(S&P)などによる事実上の独占は、我が国やほかの国に害をもたらしている。さらに重要なのは、中国経済の勃興につれて、中国は世界金融マーケットでも独自の発言権を持ちたいからだ」とコメントした上で、「自国を含めて関連国家の金融システムの成熟度や構造的な問題などを総合的に考えると、この報告が現実的な意義を示しているかどうか、考え直す必要がある」と報告書の現実性についてやや否定的。

孫氏の不明確な観点と対照的に、北京理工大学の崔新生教授はこの報告書を「意味がない」ときっぱり断ずる。「非理性的な要素がかなり多く、外部に与える参考の価値は少ない」としている。

専門家らのコメントと比べて、中国のネット利用者はこの報告書をさらに厳しい目線で見ている。「米国や日本の国家信用度が中国より低いのであれば、彼らの国債を大量に購入することをどう理解すればよいのか」「わが王朝の国際社会での信用度がどうかは、我々にはわからないが、国内では絶対に信用できる社会ではないのは明らかだ」「北朝鮮の格付け会社に発表してもらったほうがましかも」など、ウェブ上で同報告書を批判している。

ネット利用者らの批判を受け、地方紙「成都商報」は、「なぜ信用報告書は自己満足だと読まれるのか」と題する評論記事を出した。「国家の信用リスクは、経済指数であり、道徳指数ではない。個人の信用でもない。社会に不信を感じる大衆は、この二者を混同しているため、今回の報告書を間違って読んでいるのではないか」と述べ、報告書の権威性について弁護した。

海外経済学者:政治の動機

国内大衆の厳しい批判態度と比べ、海外の経済学者は、大公国際が報告書を公表した動機そのものを疑問視している。米国のシンクタンク組織・ヘリテージ財団の中国経済問題専門家、デレク・シザーズ(Derek Scissors)研究員は、同報告書を中国の西側への復讐だとしている。

多くの評価機関は米国や英国にありながら、それらの国が巨額の債務を抱えていることに不満、中国は政治目的から、今回の報復行為を起こしたと、同氏は米VOAに対してコメントした。

欧米の格付け大手が所在する国に債務問題があることは、中国がほかの国の透明性について批判する理由にはならない、中国の金融システム自体が最悪に陥った局面を隠そうとしているからだと、シザーズ研究員は指摘する。

「経済と金融の面においても、この報告書をまじめにとることができない。中国の全体の金融体系は欺瞞に基づくもので、銀行から真実の不良債権データの発表はあり得ないからだ」と同氏は報告書の信用度に否定的。

中国国内の報道によると、大公国際は1994年に設立、政府から独立していると称しており、中国の国内企業の債務リスクを格付けている。

今回の報告書が出した評価が市場で重視されるかどうかについて、ムーディーズ経済サイトの中国人アナリスト・成旭氏は、判断を下すのは時期尚早だとする。

「格付け会社の長期信用は、そのリスク予測の正確性にある。1、2年後にはじめて(大公の信用度が)分かる」と同氏は話す。また、中国は企業の評価に対して、資源と経験を十分に持っており、評価をつける能力はあると同氏はしているが、大公国際が出したこの国家信用格付けに対するコメントは控えている。

(大紀元日本語ウェブ翻訳編集チーム)
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