【大紀元日本7月17日】「ファデンに脱帽!」「カナダの最も才能ある公務員を失わないように」……この一週間、カナダメディアの報道で「リチャード・ファデン」の名前がいたる所で目に入る。カナダ安全情報局(CSIS)の長官を務める同氏が、中国胡錦濤国家主席のカナダ訪問の前夜に、一部のカナダの政治家や政府高官が外国政府の影響を受けているとの発言は、カナダ社会で大きな波紋をよんでいる。
ファデン長官が発言の中で名指しした華人団体や政治家からの強い反応に鑑み、一部の議員が同長官の辞職を求めているが、カナダの世論からは大きな反発が見られる。
「中国がカナダに浸透」発言
6月22日夜、ファデン長官がカナダのテレビ局CBCのインタービューの中、カナダの2人の政府高官と、ブリティッシュコロンビア州の複数の市議会議員が外国政府の影響を受けていると発言した。同長官は名前こそ明らかにしなかったが、カナダ社会に浸透する外国勢力のうち、中国政府がもっとも積極的に暗躍していると指摘した。
一部のカナダ政治家は、当事者の名前を伏せていることに強く反発。カナダの政治家全員が名誉毀損を受ける恐れがあると非難している。
それを受け、7月5日、カナダ議会は公共安全委員会の公聴会を召集し、ファデン長官に証言陳述を求めた。ケベック州のある議員は会議で、ファデン長官の辞職を求める動議を提出した。
ファデン長官はこの公聴会で、今年3月に開かれた警視長官と国家安全専門家との会議で、初めて本件の詳細を明らかにしたと説明。当該情報がメディアによって公表されたことに、長官は遺憾の意を表明した。自分の発言内容はすべて事実であり、辞職する考えがないことも強調した。
また、中国政府によるカナダの政府や社会への浸透の手法を語った際、同長官は、カナダの3つの中国人団体の名を挙げ、関わりを示唆した。これらの団体は同長官に発言の撤回と謝罪を求めている。
今回の議会公聴会で、同長官は謝罪はしない意向を表明。「これらの中国人団体も実質上の被害者であり、その外国勢力こそ問題の核心だ」と述べた。
また、ファデン長官は当該の政治家の名前は公表しないとも明言した。近いうちにカナダ政府に関連報告書を提出し、その中で該当者の名前を挙げると表明した。
民意:名前を公開しよう
アンケート調査会社アンガス・リードが7月8日に公表した民意調査の結果によると、一部の政治家が中国政府の影響を受けていることについて、「可能性はある」または「可能性は非常に高い」と答えたカナダ人は73%。「可能性は非常に低い」または「ありえない」と答えたカナダ人は14%、「どちらともいえない」と答えた人は13%だった。
また、59%のカナダ人は、ファデン長官は本件の発言のために辞職する必要はないと回答。「辞職すべき」は9%にとどまり、「どちらとも言えない」は31%だった。
さらに、67%のカナダ人は、関与した政治家と政府高官の名前を公表すべきとしている。
中国政府に皇帝扱いされた市長
カナダの国営放送局CBCテレビの著名司会者ブライアン・スチュワート氏は、同長官の発言事件と深く関わっている。同長官は彼の番組で初めて、外国政府がカナダ政府に浸透していると公に発言したのである。
スチュワート氏は7月7日、CBCテレビの公式サイトで長編の評論を発表し、「外国政府はなぜ、わが国の政治家を自国に無料招待するのか」と疑問を呈した。その中で、スチュワート氏は「私の知る限り、一部の国はカナダ政府の政府関係者を熱心に誘い、盛大に招待している。その目的は疑わしい。しかし、多くの政府関係者は当たり前のように受け入れており、その行為も非常に不適切で、とても危険だ」と記述している。
スチュワート氏はまた、「カナダの多くの状況は最近米国で摘発されたロシア・スパイのスキャンダルまでには及ばないが、これらの諜報国家がますます大胆になっており、経済と政治の目的のために、他国で影響力のある人を代弁者として丸め込もうとしている」と指摘した。
さらに、スチュワート氏はバンクーバーのサム・サリバン前市長が、中国政府の招待で、盛大なもてなしを無料で受けていたことを明らかにした。中国国内視察の全費用は中国政府が負担し、招待の規模は盛大かつ豪華で、市長はまるで皇帝のように扱われた。
オタワ大学の憲法学者メンデス教授は本件について、「これらのスポンサーが訳もなく金を費やすはずがない」と指摘。彼らの見返りは、カナダの政治、貿易、国際的な地位などに干渉することだ分析した。
反テロを専門とし、情報収集領域では30年の経験を持つハリス弁護士は、7月1日、「カルガリー・ヘラルド」紙で本件に関する評論を掲載。中国政府はカナダで諜報活動を行ったり、カナダの華人を買収したり、いじめたりしていると述べ、「彼らはポケットマネーを出して、わが国の政府幹部、政治家、学者、弁護士、その他の専門家を盛大に招待する。すべての費用は中国側が負担。招待された人たちはいい気になっており、そのうち買収されてしまう。中国側の目的はただ一つ、我々に浸透し、我々を左右することなのだ」と記した。
メディア:「ファデン氏が正しい」
カナダのシンクタンク「マッケンジー研究所」の代表トンプソン氏は最近、「ファデン氏が正しい」と題する文章を発表した。「ファデン氏は情報局のトップとして、カナダ国家と国民を守る然るべき職責を履行しただけである」「情報の発信者を非難するのではなく、情報の内容を議論すべき」と指摘した。同長官の発言が大きな波紋をよんだ背景には、一部の政治家、特に中国政府とつながりを持つ人たちが危機感を覚え、ヒステリックに反応しているためだと述べた。
「オタワ・シティズン」紙は7月7日、「情報発信者を殺す」と題する社説を掲載した。同社説は、「多くの人を不安に陥らせたのは、ファデン長官がある事実を認めたか否認しなかったからである。すなわち、中国はわが国の内政に干渉しうるとの事実である。もちろん、これはすでに隠された話ではない」と記し、ファデン長官の行動と謝罪を拒否する姿勢を評価し、彼への攻撃に対して沈黙を保つカナダの国家安全機関を非難した。「カナダの各レベルの政府関係者が本件への対応をためらっているのは、カナダの民主主義にとって不利である」と指摘した。また、ファデン氏を攻撃する政治家たちについて、同社説は「(中国政府の)影響を受けたか惑わされたカナダの国家政策の制定者たちは、自分が惑わされたことや影響されたことすら気づいていない」と警鐘を鳴らしている。