【大紀元日本8月4日】人口3500万人を抱えるカリフォルニア州。娯楽産業の中心地ロサンゼルスを有し、豊かな農業に加えて航空宇宙産業、石油産業、情報技術が栄える同州は、2008年のGDPは1.8兆ドルと米国最大で、世界では8番目の経済規模。しかしこのほど、財政非常事態が宣告され、破綻の窮地に立たされている。
繁栄してきたカリフォルニア州に財政破綻をもたらしたのは、不動産市場の崩壊から税額が激減したこととされているが、もっと根本に意外な原因が隠されていた。最近、公務員全員を解雇し、警察や市庁職員の仕事を全てアウトソーシングで対応する措置に出た同州メイウッド(Maywood)市のケースから、その真実を探る。
メイウッド市警の腐敗
メイウッド市は、ロサンゼルスの南東に位置する3キロ平方の小さな市だ。 人口は約3万人と公表されているが、実際は5万人といわれる。95%がヒスパ二ック系。
4年前、市書記の代理が、市議会議員の暗殺を企んだとして逮捕された。財政の雲行きが悪い中、減俸か失業を危惧しての行動だった。結局、刑期1年、半年のアンガーマネジメントコースを履修することを命じられた。
この一件は、行政の空気を反映するものだろう。2007年4月1日付けのロサンゼルス・タイムズによると、警官の3分の1は、怪しいことをして前の警察署を去ったか、法に触れた経験があるという。法の執行に関わる者の間では、 メイウッド市は、これらの不良警官にもう一度機会を与える場とみなされていたという。
2007年、警官による強姦、暴行などの申し立てに対処するため、同市は1100万ドルの支払を余儀なくされた。
そして2010年の春には、支払額は1900万ドルへとふくれあがった。予算の半額以上が警察に充てられているとはいえ、同市の1300万ドル予算を遥かに上回る数字だ。雇用者への保険もかけられず、破産宣告するしかない状態となった。そこで、雇用者全員を解雇し、破産宣告からまぬがれるため、全ての業務をアウトソースすることにした。
「カリフォルニア州の政治家や警察のモラル崩壊が、同州を財政破綻に至らしめた」と、カリフォルニア州の市民政治団体が運営するサイトCAIVNは結論を出している。メイウッド市の財政危機から得た教訓、解決策を、同様な状況に置かれた市と分かち合うべきだと同サイトは示唆する。
生まれ変わった環境
公務員全てが解雇ということは、ゴミの回収、公共事業、行政、財務、法の施行の業務すべてに関わる。70名以上が6月末までに職を失った。契約雇用された者は、これまでの手当をすべて失った。
当初、市民は、行政の業務がなくなり無政府状態になるのではないかと、危惧していた。通りを歩いていたら襲われるのではないか。公園は閉鎖され、子供たちは遊び場を失うのではないか。
しかし、実際は、天が落ちる、世界の終わりなどという人々の不安をよそに、業務は以前より効率的に運ばれている。
7月31日付けの英紙「テレグラフ」はメイウッド市の変化を取り上げた。
まず、7月1日、市警解隊の数時間後、市長の夫に駐車禁止違反の通知が発行されたという。この通知は隣接するベル(Bell)市の法執行職員が発行。現在、ベル市は、毎月5万ドルで、メイウッド市の様々な業務を請負っている。
町はきれいになり、安全になった。静かで落ち着いている。ギャングも落書きも消えた。ゴミ箱がゴミであふれることもなくなった。
「バス停でバスを待っているとき、銃を発砲する音を耳にするのは日常茶飯事だったの。警察が放棄した公園がギャングのすみかになってたのね。今は同じ公園が家族のいこいの場に変わったわ」と65歳のソトさんは語る。
テレグラフによると、予算が大幅に浮いたことで、メイウッド市は、これまで以上に多くの業務がまかなえるようになったことを指摘している。母子用の水泳教室、障害者用のベースボールなどもこの新しい業務の一部だ。
コミュニティー・リレーション・ディレクターのマグダレナ・プラドさん(彼女も契約雇用)は、同市の財政困難は、複雑で長期にわたることは認めているが、今回の劇的な措置は成功だったと胸をなでおろす。
同市は現在、他市からの問い合わせの対応に忙しい。フィリップ・アグア評議員は、収益の落ち込む中、破産を避けていかに生き抜くかの「モデルケース」となったと語る。