【大紀元日本8月11日】世界メディア王のルパート・マードックが会長を務める米国大手メディア社、ニューズコーポレーションは9日、所有する複数の中国語TVチャンネルの経営権を上海政府系投資ファンドの華人文化産業投資基金(China Media Capital、以下CMC)に売却すると発表した。
ニューズは「新たな成長機会を見直すため」と公式ホームページで説明しているが、中国の報道規制や、中国国内での知的財産権の保護が難しいことなどが、同社の中国での放送権拡大事業を後退させたと見られている。
売却条件は明らかにされていないが、ロイターによると、メディア・パートナーズ・アジアのアナリストは、今回の合意による年間売上高は5000万ドル以下になると予測しているという。
売却されるテレビチャンネルは、音楽専門チャンネルの「チャンネルV」や、エンターテイメント専門チャンネルの「星空衛星放送」、通称スターTVのマンダリンチャネルと、「星空国際チャネル」(Xing Kong International)」の3局。中国映画管理会社で、中国語映画757本を所有するフォーチュン・スターの株の過半数も売却される。
売却先のCMCは、2009年4月に設立されたメディア産業への投資に焦点をあてた中国PE(未公開株投資)ファンド。中国開発銀行や政府系・上海メディアグループ(SMG)などが支援し、運用資金50億元を元に発足した。
ルパート・マードックは、90年代から中国市場の巨大産出と利益を予期して進出し、中国政府との関係作りに数々の努力をしてきた。1993年、マードック氏は通称スターTVという香港の衛星テレビ局を買収した後、イギリスBBC放送の番組を、スターTVの北アジア地区放送から外した。さらに傘下の出版社も、反共産主義で名高い前香港総督クリス・パッテンの著書出版を取りやめた。
この一連の努力の結果、スターTVは中国人民解放軍のメディア関係者と鳳凰衛視(フェニックステレビ)を立ち上げ、中国国営の中央テレビ局(CCTV)にも一部の株を与えた。中国の政治問題に深入りしない鳳凰衛視の姿勢は中央政府の歓心を買い、マードック氏は「中国マスメディア界の信頼できる士」と絶賛され、中国政府指導者に頻繁に接見されるようになった。マードック氏の中国での投資は順風満帆のように見えた。
しかし、中国当局が近年海外マスメディアに対する規制を厳しくする中、マードック氏が率いるニューズ・コーポレーションは中国北西部のケーブルテレビ局、青海テレビの放送時間枠を買い取るとともに広告事業に参入する提携が行われたが、2005年8月に提携関係は取り消された。その背景には、2005年7月国家広播電影電視総局(広電総局)が発布した、外資によるテレビ・ラジオへの運営参画を明確に禁止するという通達があった。さらに違法に衛星放送を受信するアンテナを販売しているという疑いを掛けられ、当局から取調べまで受けた。
中国市場での一連の挫折から、マードック氏はその後、中国当局のメディア規制について頻繁に批判する姿勢を見せた。2005年、中国当局は海外メディアに対して「門を閉じている」と批判、「どのようなメディアが中国に進出できるのか疑問を持つ」とコメントした。2009年、新華社が主催する世界メディアサミット会議で、マードック氏はスピーチを行い、デジタル化時代の到来に伴い、中国当局は30年来の改革開放政策を持続させ、「デジタル化の門を開くよう」促した。