【大紀元日本8月28日】世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の行方がおかしい。巨額の助成金を中国が享受している。助成金の行方をさぐることで、弱者を踏みつぶしながら、金銭への果てしない欲望を満たそうとする中国の姿が浮かび上がる。
同基金は、三疾病対策を支える資金を提供する機関として、2002年1月にスイスに設立された。当時、中国には、エチオピア、インド、タンザニアに続く資金額にあたるほぼ10億ドルが提供された。中国は、この資金から5億ドル近くをすでに引き出しており、さらに新たに1.65億ドルを受給する予定。この三疾病で最も被害の多い南アフリカの受給額の3倍にあたる。
また、中国は、マラリアによる死者がわずか38人であるにもかかわらず、1.49億ドルのマラリア対策助成金を獲得している。さらに8900万ドルの受給が予定されているという。
なぜ、このような矛盾が生じているのだろうか。フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)電子版で、ジャック・チョウ(Jack Chow)氏は、三つの理由を挙げている。
一つ目の理由は、世界基金の構造上の問題。26名の理事の合意が必要であり、限られた時間で急速な決断を迫られる。中国を助成金受給国から外すという決定を下すためには、時間のかかる交渉が必要となる。交渉を通して、数カ国が手を組み、他国を陥れようとするかもしれない。さらに、助成金の決定は、実行可能性と公共の健康向上の効果に基づいて検討され、公平さ、均衡、国家の支払能力は考慮されない。
二つ目の理由は、中国からの借款や投資に頼るアフリカ諸国が、中国の機嫌をとらざるをえないという事実だ。保健の助成金まで中国はアフリカ諸国に提供している。世界基金から中国が多額の助成金を受け取ることに公に反対する国は、中国との経済関係が閉ざされ、不利な立場に置かれる。このため、最も貧しい国々は、沈黙を守り、中国に助成金が与えられることを耐え忍んでいる。
三つ目の理由は、基金に寄与する米国などの国が沈黙を守っていることだ。アフリカ諸国同様、政治・外交に影響してしまう刺激を中国に与えたくないというのが理由だろう。米議会もホワイトハウスも、2011年の「世界基金」に引き当てた10億ドルが、中国への支給額に相当するという事実を黙認している。
つまり、「世界基金」のイニシアチブ以外、現状打破はなさそうだ。中国の国民所得、他国の寄与度を考慮し、中国が今後3年にわたり9600万ドルを寄与することを「世界基金」は勧告したが、中国側からの返答は、協力をしたいという曖昧な約束だけだった。助成金の受け取りを辞退することも、主要な寄与国になりたいという意図も全く伝えられなかったという。