【大紀元日本9月2日】インドの「チベット人権と民主センター」によると、チベットの富豪トゥジザシ氏(Dorje Tash i)は中国政府から無期懲役を科せられ、約43億元(560億円)の資産が押収された。罪状は、チベット亡命政府への資金援助だという。
今年37歳のトゥジザシ氏はかつて、中国政府に表彰された「青年の模範」である。甘粛省出身の同氏は事業で成功を収め、チベットで飲食、娯楽、旅行および不動産、輸出入業など複数の企業を経営していた。チベットのラサ市にある有名な観光ホテル「亜賓館」や「神湖酒店」は、トゥジザシ氏が全額出資したものである。
2003年に中国共産党組織に参加した同氏は、かつて中国共産党の中央組織「全国青年聨合委員会」の委員に選ばれており、当局にその存在を大々的に宣伝されていた。チベット政府の公式サイトでは、「トゥジザシ:雪高原の勇猛な鷹」と同氏を讃える文章を載せていた。
インドのチベット人権および民主センターの幹部ウーゲン・テンジン氏によると、2008年3月のラサ市でのチベット人抗議事件「3.14」事件の数ヵ月後、トゥジザシ氏は中国政府に逮捕された。同年6月26日、3日間の非公開法廷審理の後、無期懲役の判決が下され、さらにトゥジザシ氏の兄は同法廷に6年間の禁固刑を科せられた。中国国内メディアはこれを報道しなかった。
党の宣伝塔だったトゥジザシ氏を逮捕した理由を、チベット亡命政府への資金援助と当局はしているが、不思議なことに同氏が逮捕された4ヵ月後も、政府系紙「中国民族報」は長い記事を出して同氏を称賛した。これによると、同氏はその年に起きた3・14チベット抗議事件後も、当局と「祖国の統一を守り、民族分裂に反対」との協定を結び、チベット人を弾圧する兵士や警察に物質提供をしたという。関連する同氏の写真も載せられた。
チベット人著名作家・唯色氏は「謎に包まれる逮捕」と題する記事で、トゥジザシ氏への逮捕について「ラサからの情報筋によると、チベット現地の共産党高層の内部闘争の犠牲者ではないか」とし、チベットでの司法の混乱を指摘した。
また最近では、チベット人環境保護活動家のレンチン・サンジュ氏が「国家政権への扇動分裂の罪」で成都市中級法院から5年間の禁固刑を、同氏の弟であり同じくチベットの環境保護に携わるガマ・サンジュ氏は「墓窃盗の罪」で15年間の禁固刑がそれぞれ科せられた。
米国コロンビア大学のチベット問題の専門家ロビー・バナット氏はメディアの取材に対し「彼らは皆、体制内部の活動家であり、政権への異議者ではなく、チベットのエリートである」と指摘し、中国政府による彼らへの懲罰は厳しすぎると述べた。
中国政府のこのような一連の動きから、チベット人の識者やエリートへの弾圧の強化でもって、チベットを制御する固い決心がうかがえる、と人権団体はみている。