【大紀元日本10月15日】来月広州で開かれる「アジア競技大会」前に開通予定となっている広州地下鉄3号線の北部延伸部(北延線)に使われたコンクリートの強度が、設計基準を大きく下回っていることを、検査会社の技術者がインターネットで暴露し、注目を集めている。
告発したのは同地下鉄の工事検査を担当する広州穂観工程質量安全計測中心公司の71歳のシニアエンジニア・鐘吉章さん。ブログで公開された告発文によると、同地下鉄工事に使われたコンクリートは、6カ所の強度検査において、かろうじて基準を満たした1カ所を除き、すべてが基準値を大きく下回っていたという。「重大な危険をはらんでいる。補強工事を施さないと、トンネルが崩壊する恐れすらある」と鐘さんはブログで警告している。
検査は昨年8月に行われ、検査後、鐘さんは「基準を満たしていない」との報告書を作成したが、施工業者とコネのある鐘さんの上司から、検査報告を「撤回するよう」求められた。断った鐘さんはその後、検査担当から外され、給料も大幅にカット。辞職に追い込まれるに至った。
鐘さんは同社唯一のトンネル検査技術者の資格を持つ職員であったにもかかわらず、異動後、資格者不在の状況でもう一度検査が行われ、2回の検査で合格した数字を1つの報告書にまとめて合格報告書を捏造した、と事情を知るもう1人のエンジニアで、鐘さんの元部下の毛珊さんは、広州地元紙・新快報の取材で明らかにした。
毛さんは「コンクリートが崩れ、トンネル全体が埋まる可能性があるだけでなく、地下水路が塞がれ、トンネルに水が充満する可能性もある」と指摘した。
本紙の取材に対し、鐘さんは「地下鉄側は最初は施工業者に『騙されて』検収したと言っていたが、最近になって、まだ最終的に検収した訳ではないと言っている」と明かした。また、地下鉄側や施工業者、検査会社のいずれも検査データの不備を認めたものの、安全上「支障がない」と主張している。問題の3号線北延線は予定通り今月30日に開通するという。
現在日本在住で、かつて広東省で市の保税局に勤めていた元総工程師(建築関係の技術者を統括する職務)の夏一凡さんも、手抜き工事の実態をメディアに告発したところ当局に迫害された経験を持つ。夏さんが本紙に、「このようなことは中国では極当たり前になってきている。気をつけなければならないのは、今の施工業者はマフィアとのつながりを持つ所が多く、このような偽造はすでに組織的かつ積極的な商業活動の一環となっていることだ」とのコメントを寄せた。
実際、鐘さんがインターネットで告発文を公開して以来、恐喝や威嚇が絶えないという。「私はもう年寄りだ。良心の呵責の中で余生を送りたくない」とブログの最後につづられており、鐘さんは今はネット上で「冒死爺」(決死の爺さん)と呼ばれている。