何清漣:魔法のランプの中の「愛国主義」

2010/11/01 更新: 2010/11/01

【大紀元日本11月1日】魔法のランプの中の「愛国主義」は主人の言いつけを引き続き聞いてくれるだろうか。

一連の中国各地の反日デモは10月16日に始まり三日続いた。中国のいわゆる「遊行示威法(デモ実施法)」は事実上すでに「禁止遊行示威法(デモ禁止法)」に変わった。このことから人々はこれらのデモが政府に操られたものだと容易に推測できる。ところが、20点xun_ネ降、中国の一部都市の大学では教育部の最新の通知によって相次いで学校を封鎖し、学生が街に出て反日デモに参加できないようにした。政府のやらせたり抑えたりする挙動を、多くの人は理解できず、お上の考えは分からないと感じている。

中国政府は当然ながら、このデモを民衆の「自発」だという。しかし、事実は、20世紀90年代から、中国政府は狭隘な民族主義を下敷きとした愛国主義という「魔神」を創りあげ、厳格なコントロール下にある政治的「魔法のランプ」に収めてきたのである。 1999年のベオグラード中国大使館爆撃事件、及び2001年の中米軍用機衝突事件発生の後、中国当局は愛国主義を利用したこの種の国家ゲームで、狙いをつけた外交利益を勝ち取るかということを計ってきた。

1999年5月8日にベオグラード中国大使館が爆撃されると、中国の各大学は中共各級宣伝部からの指示を受けて、学生会と各学校の共産党青年団が学生デモを組織した。少なからぬ学校は学生にデモ期間の食べ物と飲料を提供した。標語やスローガンも統一し、各部門に指導者を派遣してさまざまな局面に備え、政府の意向に背く事態の発生の防止を計った。同時に各地のメディアも指示を受けて現場に赴き「インタビュー」し、その夜の新聞紙上には一面トップに重要ニュースとして掲載された。宣伝部はさらにタイトルのひな型と指示を出したので、各メディアのタイトルは大同小異となり、政府が背後で操っている印象を外界に与えることになった。デモの過程で、多くの武装警官と公安が私服でデモ隊に紛れ込み、学生が政府に不都合なスローガンを叫んだらただちに制止した。これでデモ全体が「穏やかに秩序正しく行われ」、「米国政府に中国人民の憤怒と力量を見せつけた」(当時のメディアの用語)

これは江澤民が統治時期に利用した、民衆情緒で外交利益を勝ち取る最初の試みであった。米国政府は中国の民意が、中米関係を悪化させることを心配し、ある程度譲歩した。中国政府はこれに味をしめ、2001年の中米軍用機衝突事件でも再度この方法を担ぎ出したが、効果は前回ほどではなかった。多くのインターネットユーザーがネット上に衝突事件の真相について疑問を提出し、なおかつ中国人パイロット王偉の死亡の真偽についても疑問視された。

2005年、日本は国連常任理事国入りを求めた。日本の願望を挫くため、中国政府は声高らかに民族主義を使った「国家ゲーム」を発動し、各種の圧力を作り出した。その結果、日本の小泉纯一郎首相は、4月22日ジャカルタで開催されたアジア・アフリカ首脳会議で、中国と韓国の反日感情をおさえるためとして、日本が第2次大戦中にアジアに与えた苦難に対してお詫びを述べることになった。一旦目的を達成すると、中国政府は直ちにその「国家ゲーム」終息を宣言した。ただその時、中国当局は一つの芽生えを見てとった。抑圧されて久しい中国民衆はデモで日ごろの憂さを発散し、いつ何時国家ゲームの主題がその他の方向に変わるか分からないということだ。そこで民衆に強硬な警告を発し、いかなる反日デモも許さないということにした。中国の当時の外交官たちも中国の各大学に派遣されて、学生に「合法かつ秩序のある方法で感情を伝えよ」と伝えた。

中国政府のこのやり方は清朝末期の計略に倣ったものだ。清末の官僚は、「中国と西洋の関係」を処理する中で、「官は西洋人を恐れ、西洋人は民衆を恐れ、民衆は官を恐れる」ということを悟った。そこで、外交に失敗すると、「民衆感情を用いる」ことに動き、民衆の外国を敵視する力を煽って、己れの外交目的を達成しようとした。1900年の義和団事件がすなわち、清朝政府の「民衆を煽って西洋を制する」という「教科書通り」の策略だったのである。

中国政府は、今年ひそかに反日デモを操る際、大都市での反日デモは誰かがその機に乗じて騒ぎを起こすかもしれないと心配されたので、わざわざ政治意識が高くないと予想される地方都市でやらせることにした。ところが、意に反して、陝西省宝鶏市での反日デモでは、尖閣列島事件への抗議と日本製品ボイコット以外に、「不動産高騰に抗議」「多党制を推進」「貧富の格差を解消」「報道の自由を実行」「馬英九、大陸人民はあなたを歓迎する」等のスローガンが出現した。

このような「反政府スローガン」が現れたのを見て、中国政府は全国規模で反日デモの緊急停止を進めた。

コントロールしながら放ったアラジンの魔法のランプの「魔神」は、過去には外交上、中国当局にプラスになった。ところが、今年の状況から見るに、「魔神」はもはや以前のように主人の言いつけを聞かなくなったようだ。あるネットユーザーが次のように言っていた。「自分の家や畑すら守ることのできない国で、とっくに自分のものでなくなった土地を守ろうなどという情熱を持った国民がどこにいるだろうか」

(翻訳編集・日本語編集部)
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