【大紀元日本11月6日】中国では緑豆、ニンニク、トウガラシ、肉、卵などの価格急上昇に続き、このほど砂糖、食用油、綿花、コメ、大豆の価格も急上昇している。砂糖と食用油の価格急上昇に関して、中国政府はインフレ警報を発した。国家糧油取引センターは10月下旬、価格を安定させるため、市場に国家備蓄の食用油(菜種油)を30万トン供給すると発表した。また、国家発展改革委員会や商務部など政府関連部門も同時期、国家備蓄の砂糖21万トンを放出すると緊急発表した。
国家統計局のデータによると、10月21日に公布された9月の消費者価格指数(CPI)は、前年同月比3.6%の上昇をみせた。上昇率としては23か月ぶりに最高水準を更新した。国家統計局スポークスマンを務める国民経済総合統計局の盛来雲副局長は、記者会見の中で、価格上昇の要因は90%が食品価格と居住類支出の上昇によるものだと述べた。中国の消費支出のうち、食品支出(エンゲル係数)が比較的高く、40%前後となっている。一方、米国のエンゲル係数は20%以下で、日本は約25%ぐらいだという。
一方、物価急騰のため、大部分の国民や国内メディアは、政府が発表したCPI指数が実際のレベルより低く抑えられているのではないかとの疑問を抱いている。
続く価格上昇にインフレ警報
10月20日付「中国経済時報」によると、輸入大豆価格が3か月連続で上昇したため、国内食用油価格が全面的に上がり、一部では値上がり幅が約10%に達したという。大豆に関して、中国は現在70%以上を輸入に頼っている。また、今年初め、西南地区が干ばつに見舞われたことにより、砂糖の年間生産量が約3分の1に減少。前年同期と比べて砂糖の卸売価格の年間上昇率はすでに史上最高の70%に達したという。
一方、政府が22日に国家備蓄の砂糖21万トンを放出したにもかかわらず、砂糖価格は最高値が更新された。卸売市場に供給された国家備蓄の砂糖の当初の業者向け市場競売入札価格は、1トン当たり4000元(約4万8400円)と設定されたが、実際の落札価格は当初の設定価格よりも約65%高い6600元(約7万9860円)となった。また、20日に放出された菜種油30万トンは価格抑制が間に合わず、各地のスーパーマーケットで買いだめによる品切れが目立った。
また、10月23日付「京華時報」によると、一部のスーパーマーケットはすでに食用油生産大手の金龍魚グループから、大豆油と調合油の販売価格をそれぞれ20%引き上げるとの通知を受け取ったという。同じ食用油生産大手の福臨門も販売価格を10%以上引き上げる計画。
一方、今年の中国綿花価格は、年初の1トン当たり1万4000元(約16万9400円)から、現在の2万6000元(約31万4600円)にまで急騰した。このため綿製布類の価格は3割以上上昇し、冬物衣類の価格は少なくとも1割上昇すると予想される。今年の天候不順や綿花栽培面積の減少で、中国では全国的に綿花生産量が減少している。全国の綿花需要量1050万トンと比べ、実際の生産量は700万トンに満たず、350万トン以上が不足している。
華夏時報によると、浙江省杭州市に本社を置く先物取引会社の「南華期貨」市場調査部の李洪雷・副社長は、食糧価格の上昇は来年4月まで続くと予測している。
一部の専門家は、中国国内の食糧価格急騰の原因として、海外から(国内先物取引市場や現物取引市場に)流入した巨額な投機資金を挙げている。また海外投機家だけではなく、国内投機家も価格の上昇基調を狙い、現在、主に大豆や綿などの農産品を中心とする商品の短期売買を頻繁に行っているという。
専門家、政府データに疑問
独立経済評論家の謝国忠氏は、政府公表の統計データは実際のインフレ水準を極めて過小評価しており、物価の上昇ペースは恐らく2ケタに達している、と警告する。謝氏は、現在多くの商品の値段がほぼ倍に値上がりしており、実際の物価上昇ペースは政府公表のデータよりもはるかに高いと指摘している。
10月22日付「新華網」の報道によると、国内一般家庭の今年1~9月までの消費支出は、すでに昨年1年間の支出を超えたという。また同日付の「南方都市報」によると、清華大学の肖耿教授は、中国のCPI統計手法がすでに時代遅れになっており、実際の状況と比較して、かなりの誤差が出ていると指摘した。現在のCPI指数は、政府と国民が直面しているインフレ圧力を反映しておらず、実際のインフレ率は現在発表された数字よりも50%、あるいはさらに倍に引き上げなければならないとの考えを同氏は示した。
中国のCPI指数の統計基準には、住宅価格が入っておらず、また家賃などを示す居住類支出の加重平均も非常に低い、と以前から問題視されている。
専門家:原因は急増したマネーサプライ
謝国忠氏は、今現在国内のインフレ局面や不動産バブルをもたらした原因は近年急増したマネーサプライ(M2)だと考えており、「したがって、たとえ市場に新たな農産物などを供給しても、インフレ圧力は緩和できない。莫大なマネーサプライがもたらすバブルによって、現在中国経済は極めて危険な状況にある。この状況を解決する唯一の方法は、(中央銀行が)追加利上げをすることだ。少なくとも現行の金利をさらに3%引き上げる必要がある」と述べた。
「南華期貨」市場調査部の李洪雷氏は、現在金融市場における資金の流動性膨張で、(投資家が)新たな投資ターゲットを探している中、提供できる選択肢が多いと言えない国内市場では、値段が比較的安い農産品が現在投資の対象になっていると解説している。
また10月24日付の「華夏時報」によると、中国農業銀行チーフエコノミストの何志成氏は「国内食糧価格はここ数年、国際価格を下回っている。今現在の国内外からの過剰流動性で、近い将来、国内食糧価格の持続的な上昇が予想されており、これによりさらに多くの商品の価格上昇が誘発されるだろう」との懸念を示した。