【大紀元日本12月1日】中国健康教育研究所の陳秉中・元所長は、11月28日にインターネットで胡錦濤主席あての公開書簡を発表し、中国でエイズ感染が拡大している主な理由は、政府が宣伝している性行為によるものではなく、政府自らが推奨していた「血漿経済」によるものだと指摘。政府中枢メンバーとなった元河南省省長の李長春氏と李克強氏の責任追及を求めた。また、エイズウィルス感染者数について、当局が37万人と発表しているのに対し、エイズ感染支援の第一人者の高耀潔医師は1千万にのぼるとの見解を示した。
公開書簡:エイズ流行の起爆剤は血漿経済
公開書簡は、90年代半ばに政府が推進した血漿買収がその後のエイズ流行をもたらしたと批判した。血漿経済がもたらした災難の規模の大きさや被害
エイズ感染拡大の責任追究を求める公開書簡(RFA)
は「毒ミルク事件」「SARS」そして諸々の炭鉱事故や火災よりも遥かに深刻だ、と陳氏は指摘しており、この施策で少なくとも数万人ないし10万人以上の農民がHIV(エイズウイルス)に感染し、1万人以上が死亡していることを明かした。陳氏は「血漿経済事件」を世界の公衆衛生史上でも重大な事件として位置づけている。
「検査を受けることもなく、腕を伸ばすだけで金が入って来る」血液を売ることは貧困な農民にとって1つの生存手段になっていたと陳氏は述べた。河南省では、血漿買収のピーク時には、買収業者が畑仕事をしている農民を強制的に売血させたという。
陳氏はさらに、当時の河南省省長の李長春氏と李克強氏が、血漿経済の危害が明らかになってからも、感染状況を隠ぺいし続けていたことを指摘。深刻な事態を世に暴露しようとする人たちに迫害を加えて、口を塞ごうとしていた。このため、感染は河南省から全国に広まることとなり、被害はいっそう深刻化した。ところが、当局は2人の責任追求を行わなかっただけでなく、政府中枢メンバーに昇進させたことは不可思議だと陳氏は批判した。特に李克強氏は現在、エイズ対策の担当にあたっている。
現在肝臓がんを患っている78歳の陳氏は、暴露にはリスクが伴うが、黙って真実を棺にもっていくには良心が許さないと話した。公開書簡と同じ内容の告発状を9月と10月にも当局に送ったが、回答がなかったため、今回の公開書簡の発表に踏み切ったという。
中国当局:性感染が主要ルート 感染者37万人 死者6.8万人
一方、中国衛生部は11月29日、今年10月末までに報告されたHIV感染者は、累計で37万人以上に上り、うち13万人以上が発症、6.8万人以上が死亡したと発表した。
同発表を受け、当日開かれた国務院常務会議は、エイズの予防と抑制が「民族の興亡と国の存亡にかかわる」と指摘し、現在の中国のエイズ感染事態が深刻で、予防と感染拡大の防止に大きな困難を伴うことを認めた。
ところが、同時に発表された、2009年、中国衛生部、国連合同エイズ計画、世界保健機関(WHO)が行った合同調査によると、2009年末までに、中国で存命しているHIV感染者は74万人で、うち発症者は10.5万人。2009年の1年間の新規発症者は4.8万人、死亡者2.6万人と推計されている。
衛生部が29日に発表した数字は、医療機関などを通じて「報告された」件数であり、合同調査の数字は推計値。両者の格差から、中国政府はまだエイズの実態を把握しきれていないことが窺える。
今回の衛生部の報告では、近年HIV感染とエイズ発症に関して、次の3つの新たな傾向に分析した。▼感染は拡大中だが、拡大速度は若干低下した▼性行為による感染が主な感染ルートとなり、特に男性同性愛者の感染が急増▼感染は特定の地域と特定のグループに集中し、雲南・広西・河南・四川・新疆・広東の6省(自治区)での感染者と発症者は、全国の77.1%を占めるという。
高耀潔氏:感染者数は1千万人
「中国民間エイズ感染支援の第一人者」と称される医師・高耀潔氏(83)は、かつて李長春氏と李克強氏の迫害を受け、アメリカに亡命している。国外で発行されている中国語誌・新紀元の取材に対して、高医師は、中国ではHIV感染者に関する正確な統計データはなく、何年も前から、民間では500万人との見方があると紹介したうえで、現在は1千万人の感染者がいるだろうと推定している。
エイズ予防と抑制の課題について、高氏は政府の隠ぺいが最大の課題であると断言した。10月、新しい著書『中国のエイズ感染の真相を明かす』のアメリカでの発表会で高氏は、中国政府がエイズ感染の原因を乱れた性行為だと宣伝しているのは、貧困地域で依然と横行する闇の売血の実態を隠すためだと指摘していた。