【大紀元日本1月7日】「地下鉄なしでは都市とは呼べない」。中国各地で今、地下鉄の建設ラッシュが進み、いわば「地下鉄大躍進」という現象が起きている。しかし、調査によると、全国ほとんどの地下鉄は赤字経営だという。地下鉄建設はGDPの数値を上げる格好の道具としてもてはやされ、多くは綿密な調査を経ずに建設された。専門家は「経済利益を度外視する経営は、地方政府の財政難を深刻化させるほか、安全性にも問題ある」と指摘した。中国産経新聞が報じた
記事によると、中国各地で地下鉄建設が「流行っている」という。北京はつい先日、一気に5本の地下鉄を同日に開通し、地下鉄の総距離数は300キロに達した。ほかにも20を超える都市が地下鉄の建設を進めている。申請中のものも入れると、その数はさらに膨れ上がる。2006年に10本しかなかった地下鉄は、現在は37本で、2015年には85本になる予定だという。
しかし、多くの都市は、交通渋滞を緩和させるために地下鉄を建設したのではない。地下鉄があると一流都市に仲間入りしたことになる、と政府幹部は思っている。さらに、中央財経大学研究センターの郭田勇主任は、地下鉄を必要としない都市まで巨資を投じて建設を急ぐ原因は、巨大な公共事業プロジェクトとして、GDPを増長させる効果があるからだと指摘した
しかし、その弊害は大きいと専門家は言う。
調査によると、ほとんどの地下鉄は赤字経営。北京の地下鉄は年間10億元の赤字を出しており、上海の場合は1路線を除けばすべて赤字。南京地下鉄の一日の売り上げは、予想の3分の1にも達していないという。なかには、4~5年分の財政収入を地下鉄建設に投じた都市もある。「地下鉄大躍進で地方政府の財政難をさらに深刻化させた」と、民間経済分析機構である安邦コンサルタントは報告した。
さらに、無計画な地下鉄建設は沿線の地価をつり上げ、不動産価格の高騰に拍車をかけた。深圳(シンセン)市の場合、地下鉄1号が建設されてから3年以内に、沿線物件の家賃が2~5倍に跳ね上がったという。
専門家が最も懸念しているのは、安全性の問題だ。深圳市だけで去年一年間で10数件の事故が発生したという。地下鉄建設に詳しい中国工程院の専門家・王夢恕氏は、「地下鉄は面子(メンツ)工事となり、距離数や工期の短さを争い、綿密な調査を経ずに建設を開始し、安全性の面で大きな危険が潜んでいる」と指摘した。