【大紀元日本1月25日】北京には1万7000カ所の地下室があり、95万人以上の地方出身の出稼ぎ労働者や蟻族のすみかになっている。しかし今年に入ってから、彼らは居場所がなくなる危機に直面している。
北京政府は新年早々、大規模な地下室賃貸物件の整理を開始した。各区では地下室を貸し出したり、旅館経営に使ったりすることを禁じ、駐車場などに用途を変更するよう指示が出されている。当局は「一人あたりの居住面積が基準に満たない」ことを理由としているが、多くの地下室住民は、「金があったら誰があんな所に住みたがるのか」と非難し、北京にはすでに貧乏人が身を置くところもないと批判している。
「また郊外へ戻るしかない。ここ(北京)の家賃は高すぎる」と立退き整理に直面する河北省出身の王さんは話す。上京当初、郊外にある農家に住んでいたが、交通費が高いため、叔父と共に市街地の地下室に移り住んだという。
河南省から来ている若い姉妹は、朝陽区にある面積わずか3平方メートルの地下室に住んでいる。シングルベッド1つしか置けないスペースだが、2人はそこで食事と睡眠をとっている。ひと月の家賃は約400元(約5000円)。姉の文さんは「暖房もあるよ」と満足している。
北京地方紙の京華時報は、地下室の整理は北京当局の「住みやすい都市」建設計画の一貫だと指摘する。同計画では、各区に対し人口抑制の目標を制定し、それにより市街地全体の人口を抑えようとしている。目標人口を達成すべく、地下室の多い区は、地下室退去命令という手っ取り早い策に出たという。
北京では80年代、防空上の理由でほとんどの建築物に地下室が造られていた。しかし、90年代になると、多くの地下室が放置されたままだったため当局は賃貸を奨励した。90年代終わりには市外からの人口が大量に流れ込み、地下室居住者が激増した。
このような状況の中、北京当局は昨年末、年明け1日から賃貸物件に対し、部屋の共同借りを禁止し、また一人あたりの貸借居住面積を4平方メートル以上と規定を定めた。それにより、現在ルームシェア、あるいは地下室住まいの100万近い蟻族と出稼ぎ労働者が立ち退きに直面することになった。この100万人の「北漂(地方出身で北京で『漂流』する人たち)」は今後どこへ漂流するのか。社会の不安定要素がまた1つ増えたのではないかと人々は憂慮する。